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新型コロナウイルス感染症に関する消費者意識調査から見えてきた旅行の未来

平成28年4月。熊本地震を経験しそこからの復興の道を歩んでいた熊本県。主要道路、公共交通が不通となり、特に観光事業者は非常に厳しい状況に立たされました。それから4年。国道57号線の復旧やJR豊肥本線の全線開通、阿蘇大橋の開通など創造的復興の「元年」になるとされていた2020年。新型コロナウイルス感染症(COVID19)という未曾有の事態を受け、宿泊施設や飲食店、交通事業者などを中心に幅広い事業者が深刻な影響を受けています。

そうした状況だからこそ、過剰に希望的でも悲観的でもない、現実的な見通しを知り、事業展開をしていくことが必要です。そんな思いから地域の観光関連の有志が資金を出し合い、全国一斉の消費者向け意識調査を実施しました。見通しが立たず暗中模索の状態が続いている全国の観光事業者の方々にとって、何かしらのヒントになればと思います。

調査にご回答・ご協力くださった全ての皆様にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

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アマビエは、170年ごろ前、肥後の海から現れ「疫病が流行したら自分の姿を絵に描いて人々に見せなさい」と言って海に姿を消すという伝説の妖怪です(画像は厚生労働省HPより)

1-1.はじめに:調査概要

調査概要
■調査期間:2020 年 4 月 27 日(月)~ 29 日(水)
■調査対象:日本全国の一般消費者の方
■調査方法:無記名でのWEB アンケート方式
■調査実施主体:熊本県観光協会連絡会議
(阿蘇広域観光連盟、一般社団法人天草宝島観光協会/一般社団法人 人吉温泉観光協会/平山温泉観光協会/宇城市観光物産協会)
■協力:
小林寛子氏(東海大学 経営学部 観光 ビジネス 学科 教授)
坂元英俊氏(アジアエコツーリズムネットワーク /一般社団法人地域観光研究所 代表 理事)
■有効回答数:N=3,247 件
■備考:
本調査は、あくまで4 月27、29日時点での消費者の状況・心情を踏まえた回答結果です。状況は刻一刻と変わっていくため、結果を参照する場合はご注意ください。(今後、状況の変化があり次第、定点観測としての調査を逐次行うことを想定しています)

1-2.はじめに:総括

無題

今回の調査結果としては
・外出自粛生活が続くことで、旅行やお出かけに対する消費者の意欲は高まっている
・これまでは移動手段の発達で国際観光を含む遠方への旅行が活発化していたが、当面は近郊への旅行・お出かけ市場が主戦場となる
・旅行先選びも「 3 密(密集・密閉・密接)を避ける 」ことを意識したものとなり、テーマパークや都市部など密集が想定される場所は避けられ、自然や開放感のある場所が好まれる方向へ
・消費者は景気悪化への不安を感じており、旅行などの余暇・レジャーへの出費には厳しい時代に

となっており、それを受けて観光事業者は
短期的には各種支援制度(緊急融資や給付金など)を受けて経営の維持に励む一方で 、現在のコロナ禍を経た後にはコロナ以前とは消費者動向が大きく変わることを認識し、中長期的な With コロナ/After コロナ時代 のトレンド を先読みし、 今の段階から仕込みや投資を進めておく必要がある
のではないかと考えます。

2.回答者属性

無題

今回の調査は、無記名のWEBアンケート形式で実施を致しました。回答フォームはGoogleフォームで作成し、Facebookターゲティング広告を用いて全国の無差別の方からご回答をいただいております。そうした中で3,247件の回答を頂き、熊本発だったこともあり九州地方の割合が多いものの、概ね人口比と相似した回答数を得ることが出来ています。

区分では、大都市圏・地方都市・それ以外で分けて回答を頂いています。
・大都市圏:首都圏、関西、名古屋、福岡など
・地方都市:各県庁所在地など
・それ以外:工業都市、農村漁村、離島など

無題

年齢に関しては、オンライン調査かつFacebookでのアプローチが主だったこともあり年齢としては30代〜50代がやや多い傾向、性別としては男性の回答がやや多い傾向となっています。

無題

働き方(テレワークなど)が話題になっていた時期でもあるので、勤務状況についても確認しておりますが、通常通りが4割強。居住地区分ごとに見ると、大都市圏はテレワーク勤務中の方からの回答者が多い結果に。これは、回答者群が偏っているわけではなく、大都市圏に比べて地方都市、それ以外(農村部など)ではテレワーク化が進んでいない実情を反映しているものと考えられます。

無題

収束時期に関しては、2020年夏頃(約3ヶ月後)が最も多く、秋頃、2021年春頃という回答が続き、「長期化することを想定・懸念している方が多い」という結果でした。「3.旅行意向」の中で収束後に関する質問が多数ありますが、こちらの収束時期の見通し後の想定だと認識の上でご覧いただければと思います。

3-1.旅行意向:旅行の再開時期

無題

自粛ムードが続く中、行動を再開する時期についての質問では、飲み会や近隣エリアへの旅行は「外出自粛要請の解除後」という回答が多かった反面、飛行機や新幹線を使った国内旅行や海外旅行は「当面は控える」という回答が目立っていました。外出自粛要請の解除、ワクチンや特効薬の確立が行われるごとに、段階的に旅行意欲が高まっていくのではないかと考えています。

無題

割合で比較すると結果が顕著に出ていますが、「近隣ほど早く、遠方ほど遅い」という結果になっており、観光事業者にとってまずやるべきは近隣エリアからの集客をどの様にして戻していくのか?ということになっていくのではないかと考えられます。

無題

3-2.旅行意向:今現在の旅行への印象について

無題

外出自粛要請が続く今現在の旅行への意欲、旅行情報の閲覧への印象についての回答結果です。今時点で、旅行に意欲を示す人は7割以上存在し、旅行情報の閲覧に関しても否定的な意見よりも「自粛後の楽しみが増えるので歓迎したい」という肯定的な回答が多い結果でした。

3-3.旅行意向:旅先でやりたいこと、避けたいこと

無題

無題

今現在考える、収束後の旅行でやりたいこととしては、「温泉やリゾートホテルでのステイ」「ご当地の食めぐり」が上位。逆に、避けたいことは「テーマパーク・遊園地」「都市観光」という結果となっており、「開放感のあるコンテンツが好まれ、密集傾向のある場所が避けられる傾向」が見て取れる結果でした。

3-4.旅行意向:今後の団体旅行の参加意向

無題

これまでの団体旅行への参加状況と今後の参加意向に関しては、これまで参加していた方の中で「考え直す・参加しない」と答えた方が4割程度となり、旅行形態がより個人にシフトしていく傾向が感じられる結果となっています。

無題

収束後に旅行に行くきっかけとしては、「まとまった休みが取れたら」「家族・友人の誘いがあったら」が多い傾向にあり、休校や休業が原因で休日不足が発生した場合、旅行の足かせになる可能性が高いと考えられます。

旅行先の選び方に関しては、今までと変わらない方が半数以上いる反面「感染者数が多かった地域は避ける」「都市部は避ける」と回答した方も半数近くおり、地域での感染抑制が図れた場合には収束後の誘客にプラスに作用する可能性が見られた結果でした。

無題

3-5.旅行意向:イベントの参加意欲

無題

夏祭りや花火大会、音楽フェスなどが今後実施されることを見越しての、イベントの形式ごとでの参加意欲についての設問です。結果としては、「花火大会や地域のお祭」への参加意欲は高いものの、音楽フェスや大規模屋外イベント、ライブハウスでのライブなどは参加意欲が低くなる傾向にあり、イベントの規模や来場者同士での密接度により参加意欲に差が出ると考えられれます。

3-6.旅行意向:自粛要請後、特に変わったこと

無題

外出自粛要請後、特に変わったこととしては「インターネットで動画サイトを見るようになった」「テレビを見るようになった」「テイクアウトを利用するようになった」が多い結果となっており、屋内・自宅での新しいライフスタイルに適合しつつある人が多い結果でした。

無題

その一方で、その他(フリーコメント)の回答では、自宅で過ごす時間が増えたことによる新たな悩みを抱えている方も見られました。

3-7.旅行意向:自分の地域への旅行者の受け入れ

無題

ゴールデンウィーク期間中、旅行者が各地を訪れることで、住民と観光事業者の軋轢が生まれているといった報道もありました。その状況も踏まえて、「自分の地域で観光客を受け入れること」についての意識を質問したところ、日本人旅行者を受け入れに肯定的な回答は約6割を超えている結果でした。一方、外国人旅行者の受け入れについては約6割が否定的な回答となっており、インバウンド受入再開の際に地域の理解をどのように得るかが課題になってくると考えられます。

3-8.旅行意向:一年後の世の中の変化

無題

「一年後、どのような世の中になっていると思うか」という回答結果です。最も多かったのは「景気の悪化、企業の倒産」で、不景気を予測している方が多い結果でした。併せて、今回の外出自粛に伴いテレワークの導入が進んだこともあり「恒常的なテレワークの浸透」も多くの方が感じている結果でした。また、「新たなビジネスの創出」という回答も多く見受けられました。上位ではありませんが、3,247件の回答者の中で約1,100件は「出張の減少」や「旅行の減少」と答えていることも、観光事業者にとっては注目すべき点であると考えます。

4-1.考察:東海大学観光ビジネス学科 教授 小林寛子氏

現状のコロナウィルスの感染状況から考えると収束まではまだ時間がかかり、現状で観光の回復を語るのは時期尚早と思われるかもしれないが、一方で全てが中断している今だからこそ、時間に余裕があり何も出来ないからこれまで出来なかったことやこれまでに業界が抱えていた課題解決のためにどうするかを検討する好機であると考える。今すぐでなくても必ずやってくる収束期に向かって、段階的に何をすべきかを考える時期である。やれることはたくさんあるし、今だから思い切った見直しも可能である。量を求めていた時代からの本当の意味での脱却を図れないだろうか?

地域の宝(地域資源)を大いに活用し、徹底的に地域にこだわった良質の素材、プログラム、商品を作ることで、価値のある商品が出来ればそれを認めてくれるマーケットに対して妥当な価格で販売することが可能になる。となれば、人数にこだわることなく観光消費額をあげることが可能になり、結果として地域にこれまで以上の利益を落とすことが可能ではないか?そのための準備をする期間と考えたい。

訪日観光の大きなうねりの中で自分たちの足元を見過ごしていなかったか?地域で愛され、地域の人にとって魅力的なデスティネーションこそが外からの観光客にも魅力的な場所であることはみんな理屈ではわかっているはず。それを実践する良い機会がやってきた。自粛中のホテルでは地域に貢献できるサービスはないか考えて動き出しているところもある。保育所になったり、学習の機会を提供する場になったり、個人事務所になったり、、、。また営業出来ないレストランではテイクアウトや移動販売が始まったり。オンラインでの会議や飲み会も当たり前にやるようになってきた。今までとは違う日常が既に始まっている。その中で観光業界もこの流れに流されるのではなく、うまく乗る方法をみんなで一緒に考える時ではないか。

オンライン化が進んでコンピューターやスマホ越しのコミュニケーションがこれだけ活発に行われるようになっても、最後に観光客が求めるのは地域らしいおもてなし、人と人との関わりであることは間違いない。だから、その時が来るまで我々はどうやって未来の観光客とつながり続けてその日を迎えるか、が重要なのではないだろうか。

==== 以下、調査結果の詳細な分析 ====

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■居住地区分ごとの「収束時期の見込み」
希望的観測も含めて大都市圏に居住している人達に夏頃を予想している人が一番多かったものの、地方に行くに連れて秋頃、さらには来年の春と答えている人もかなりいる。

コロナウィルスの感染が地方にも広がりを見せている現在、GW期間(~5/6)までの緊急事態宣言も5月末まで延長され、まだ先行きがわからないというのが実態だと思われる。また、夏に一度収束傾向を見せてもまた寒さと共にぶり返しもあることも予想されることから、今後の動きを注視せざるを得ない。

ただ、観光業界としては、今年の夏休みに事業が復活することはほぼ無理と覚悟すべきで、この間はあくまで収束後の対策をしっかり練る時期と捉えることが必要だろう。

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■居住地区分ごとの「飲食店利用や飲み会の再開時期」
外出自粛疲れのせいか、外出自粛要請の解除後にすぐにでも飲食店利用や飲み会を再開したい人が多いものの、当面は控えるといった再開に慎重な意見も多い。飲食店にとっては死活問題ではあるが、明らかに再開の欲求は上がってくるだろう。よって再開が可能になる時期までどういったPR活動を行うかも重要であると考える。つまり動きたくてうずうずしている都市部や感染地の人に対しては、今すぐ使える未来クーポンの発行や、テイクアウト、産地からの直送ギフトなどのPRや販売などリアルな店舗を介さずに顧客とつながる方法を考える必要があるだろう。

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■居住地区分ごとの「旅行の再開時期」
いつから再開するかについては、やはり外出自粛要請の解除後が多いものの、当面は控えるという人もかなりいて、特に海外旅行においてはその数は顕著である。

旅行再開への意向は、近隣エリアへの旅行から徐々にスタートし、運輸機関を使っての国内旅行へ、そして海外旅行へ進むまでにはかなりの時間を要するだろう。

また、早く旅行に行きたいと考えている人は、九州地域の居住者に多いことから、近隣エリアである熊本は、まずは近隣の観光客が戻ってくるために何をすべきかが課題となるだろう。その後、大都市地域からの国内旅行が戻ると予想され、今後のプロモーションの時期、対象地などは段階的に考え戦略的に行う必要がある。

一方で、当面は旅行を控える人達もかなりいることから、観光が以前のように戻るにはかなり時間がかかると共に、海外からの訪日観光客の誘致に関してもこれまでのような限定地域に依存した形ではなく方向変換が必要だろう。受け入れ地域の感情にも考慮が必要である(参照:自分の地域への旅行者への受け入れについて)。

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■居住地区分ごとの「旅行への意向」
旅行への意欲は、この時期に動けないストレスからか早く行きたい、行きたいとは思う人がかなり多い。特に感染者多発地域である大都市圏の人は旅行への意欲が高い。前述のように動けない今、これらのマーケットに対してどういった情報発信をし、アフターコロナまで着地と発地のいい関係を繋いでおけるかが重要だと考える。

特に旅行情報の閲覧に関しても、自粛後の楽しみが増えるので歓迎したい人が多く、閉塞的な現在の環境だからこそ、アフターコロナを夢見ることで現状を乗り越えるために頑張れる人も多いはず。来てくださいというダイレクトなメッセージではなく、地域の魅力として景観、食、特産品、人などといった地域の宝(地域らしさ)を発信することで将来の顧客確保に向けて動き出す好機であると考える。自粛中の各事業者が前向きに頑張っている姿そのものを動画でつないだリレーや、地域の美しい景色を写真や動画で紹介したり、またオンライン会議システムZoomなどを使って実際に生産者と消費者が繋がる仕掛けを作ったり、顧客の望んでいる地域のあり方を実際にヒアリングしてみたりなど、この時期だから出来ることも大いに活用しながら、地域の魅力を発信し続けることが望まれる。

■旅行先でやりたいこと&避けたいこと
調査結果からも、旅に癒やしを求めたり、地域らしさを楽しみたいと考えている人が多い。屋内や3密状態になりやすい場所は避けたい傾向も高い。収束後も受け入れ地域の公衆衛生に関する配慮は観光客のニーズとしても続くであろう。都市部に集中するこれまでの旅の傾向から、より地域でゆったりとした時間を過ごすような旅のスタイルに変容していくと予想される。

■収束後の旅行のあり方
今までとは違う形になることは十分予想できる。希望的な観測も含めて考えると、自粛中のリモートワークなどオンラインを使ってのビジネスが当たり前のようになったことから、今後の休暇の取り方にも変化があると考える。よりフレキシブルな休暇の取り方が導入されることで、旅の時期も観光客の集中を避けて選択することが可能になること、家族や友人といった小グループでの旅がより活発になること、また今後政府の復興対策としてのクーポンなど割引が導入されることなどによっても旅のあり方に変化が出るだろう。
これまでのマーケティング戦略では通用しない行動パターンが予想され、よりクオリティの高いプログラムを多様なニーズに合わせて選択できることや、口コミ力なども重要なきっかけとなりそうである。

■自分の地域への旅行者の受け入れについて
日本人観光客については積極的に受け入れるべき、受け入れるべきが半数以上であるものの、来ないでほしい、あまり来ないで欲しいも4割程度ある。コロナウィルスの感染状況の変化によっても数値は変わってくると思われるが、外国人観光客に関しては半数以上が来ないで欲しい、あまり来ないで欲しいという回答が見られる。やはりアフターコロナにおいて、外国便の再開と共に新たな訪日観光客が入ってくる前に、訪日観光客の受け入れに対して地域の受け入れの時期や受け入れ方などしっかりとした体制作りが必要と思われる。以前のパターンに戻るのではなく、地域にとって来て欲しいマーケットにどうアプローチをしてどういう体制を整えるのか、新しい観光のあり方を地域と一緒に考えるべき好機ではないか?

小林寛子氏
東海大学 経営学部 観光ビジネス学科 教授(エコツーリズム研究室)

オーストラリアで世界遺産の砂の島フレーザー島にエコリゾートを開発するプロジェクトに参加し、1992年オープン後はその運営とマーケティングを手がける。その後日豪でのエコツーリズムコンサルタントとして、商品開発、マーケティング、人材教育などに携わり、2013年より現職。観光ビジネス学科においてもゼミ学生との実践的なフィールドワークを通じて、地域の課題解決のために、地域の宝を保全しながら地域振興につなげるイベント企画・運営、訪日観光の新商品開発、人材養成、日豪環境ボランティアプログラムの開発などに取り組んでいる。
著書に「エコツーリズムってなに?~フレーザー島からはじまった挑戦~」(河出書房新社)他。NPO法人日本エコツーリズム協会理事、阿蘇エコツーリズム協会理事、公益財団法人地方経済総合研究所理事、熊本県観光審議会委員、熊本復旧・復興4か年戦略委員会委員、熊本市インバウンドマーケティングアドバイザーほか。

4-2.考察:一般社団法人 地域観光研究所 坂元英俊 氏

1.どのような状況になった時を収束したと考えるかで、飲食店や飲み会への参加意向や、旅行への意向は変わると思われる。

2.旅行意向で「外出要請の解除後に旅行を始める」と「当面は控える」の結果が多くの人数を得る結果になっているが、注目するのは、外出自粛要請の解除後は近郊エリアや国内旅行はあるが、海外は少ない。海外について調査結果で多いのは「当面は控える」であり、「ワクチンや特効薬が確立された時点」や「緊急事態宣言の解除後、緊急事態宣言終了後3カ月程度」も合わせるとしばらく控える人が圧倒的に多くなる。

3.このことは、近郊や国内の一部の地域での旅行しか回復しないであろう、と見るべきである。従って、今まであまり考えていなかった近郊の価値のある地域や観光地へのアプローチが増えてくると思われる。また、ワクチン(提供時期は通常1年以上)や特効薬の確立を考えれば、1年~2年は旅行再開の見通しが立たないのではないか。

4.アンケートの結果から見れば、観光地の営業戦略は、近郊に対してアピールしていくことが効果的だと思われる。また、ワクチンの提供時期にもよるが本格的な旅行移動の可能性は1年~2年後になる。

5.今後は、人が集まるイベントではなく、個人がのんびりしたりできる場所やゆっくり滞在する傾向がある。観光庁が今後進めていく「持続可能な観光」の暮らしや自然に負荷を与えない観光の取組みをこういった時期から準備していくのも一考である。

6.コロナ対策が観光だけでなく、経済面で圧迫していくことも読み取れる。

7.インターネットの動画サイトやテイクアウトが多くなっている。また、通販やお取り寄せが多くなっているので、地産地消や地元物産の素晴らしさをアピールしなければならない時期でもあり、何処で買えるかなどの広報、宅配もOKなどの工夫が求められると考える。

8.2020年4月27日、17のアジア諸国代表者が集まるアジアエコツーリズムネットワークのテレビ会議でコロナ対策について話し合われた「18の旅行と観光の将来動向」を紹介する。大まかな項目だけを紹介したが、アジア諸国の傾向がうかがえる。この中から、自分の施設に考えられる項目を選んで考慮することも可能だ。

無題

坂元英俊氏
一般社団法人 地域観光研究所 代表理事

NPO法人日本エコツーリズム協会理事、NPO法人日本エコツーリズムセンター協会理事、むらタビ九州理事、公益財団法人 阿蘇火山博物館評議員他。
地域づくり、観光、公共交通を統合化した滞在交流型の観光の実践と九州の観光振興に寄与した功績で、2011年に観光庁長官表彰を受賞している。2012年に阿蘇DCを退職後、東北や京都、島原半島観光に従事、2020年3月に退職。2020年4月からは現職。2015年から2019年はサスティナブルツーリズム国際認証フォーラムに参画、観光とツーリズムの融合を図る観光地域づくりや持続可能な地域と観光を行っている。

5.おわりに

本調査報告書の記載内容について、個別の明示的な承諾を得ることなく、複製、転用、販売などの二次利用することを固く禁じます。ご使用の際は、下記連絡先メールアドレスまでご相談くださいませ。

※本調査は、熊本県の観光の中間支援に関わる若手有志により実施しています。調査から報告書の公開まで全て手弁当で実施していますので、温かいご支援もいただけますと幸いです。

連絡先
熊本県観光協会連絡会議
Mail:allasoassociation@gmail.com(担当:阿蘇広域観光連盟)

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