人生のすべてをコンテンツとしてとらえるーーSHE株式会社CEO福田恵里さん式SNSの届け方
「大学時代、Twitterで尊敬する起業家やクリエイターの方々に、片っ端から『会って話がしたい!』とDMを送りました。10人に1人は会っていただけて、将来自分がやりたいことについて話を聞いてもらいました」
こう語るのは、「新しい働き方を実現する女性のためのライフ&キャリアスクール」SHElikes(シーライクス)を運営するSHE株式会社CEO / CCOの福田恵里さん。
福田さんは子どものころから「インターネットの世界が大好き」だったそう。SHEを起業するきっかけや、会社を大きくしていく原動力になったのもSNSでした。
イベント「ビジネスに役立つnoteやSNSのつづけ方」で、福田さんにビジネスでSNSを活用する際の考え方やTipsについておうかがいしました。
Twitterはひととリアルに会うためのツールだった
ーーいつごろから、インターネットの世界に触れはじめたのでしょう?
福田 小学校3年生のときです。家族が購入したパソコンで、FC2ブログを書くことからはじめました。HTMLという言葉も知りませんでしたが、タグをコピペしてホームページをつくったこともあります。
Twitterは2010年、大学生のときにはじめました。最初のころは、発信よりも情報収集を目的にしていたんです。有名な起業家や経営者、クリエイターなど活躍している方々をフォローすると、似たようなひとが自動的にレコメンドされます。この機能によって、自分が興味深いと思えるひとを新たに発見することもできました。
それから、尊敬するひとや世界観に共感できるひとに「直接会ってお話がしたい」とDMを送るようになって。10人に1人ぐらいは実際にお会いすることができました。
ーーすごく高い確率です。熱意あふれるDMだったんでしょうね。
福田 そうですね。DMで「女性のために、テクノロジーの民主化をしたい」という想いを伝えて、共感してくださった方は会ってくれました。
その後、大学時代にSHElikesの前身である「Design Girls」というデザインに関心のある女性を集めたイベントを行ったのが、Twitterで発信をするようになったきっかけです。
ーー大学時代から、起業を志していたんですか?
福田 いえ、全然そんなことはありません。実は、大学時代に転機があったんです。サンフランシスコに留学したんですが、当時アメリカではInstagramとFacebookが大ブームになっていて。現地で知り合った私と同じ20歳の起業家が、「Instagramのビデオ版をつくって世界を変える」と熱く語っていたんですよね。
その姿を見て、「プログラミングができればInstagramがつくれるんだ!」と衝撃を受けたんです。それで、デザインとプログラミングを学びはじめました。
しかし、その学びの場に女性がほとんどいないことに気がついて、課題意識をもつようになりました。「若い女性にも、テクノロジーやアイデアをかたちにする技術にもっと親しみを感じてもらいたい」と思ったのが、「Design Girls」を企画したきっかけです。
だんだんイベントの規模が大きくなっていくなかで、「法人化してみたい」という気持ちが芽生えていきました。
ギャップをキーワードにする
ーー「Design Girls」の告知をTwitterでするようになって、フォロワーがふえていったんですね。
福田 そうですね。発信していくうちに、より多くのひとに興味をもってもらうには ”ユニークなキーワードの掛け算” が大事だなと気づいたんです。「◯◯なのに△△」というような、意外性のある組み合わせですね。
自分の場合は「女子大生なのにプログラミング」、「女子大生なのに起業家」というのが、PRしやすい要素だと考えました。それで、Twitterのプロフィールにそのように書き込んだり、ツイートの内容をキーワードに寄せていったりしたんです。フォロワーは徐々にふえていきました。
ーー自分のTwitterアカウントに、興味をもってもらうためのテクニックですね。ほかにもTwitterでの成功体験があれば教えてください。
福田 プロフィールの固定ツイートに貼ってある動画ですね。この動画が自分の仕事の幅を広げるのにも、会社の実績をあげるのにも大きく役立ちました。現在、約60万回再生されています(2022年3月現在)。
起業1年後の2018年に投稿したものですが、実はこれ、私の結婚式用につくったものなんです。AdobeのPremiere proをつかって、自分で制作しました。
当初から話題になり、この動画経由でSHElikesに入会される方がとても多くなりましたね。
ーープライベート用の動画が、どうしてビジネスにつながったんでしょうか?
福田 岡崎体育さんの歌をパロディーにした動画の内容が、多くの方に「見ていておもしろい」と思っていただけたようです。そこをフックに、私のプロフィールをタップしていただいた率が非常に高かったです。
そして、「この動画をつくったひとが経営している会社やサービスって、どんな感じなんだろう?」と興味をもったひとたちが、SHElikesのサイトへ流入してきました。
SHElikesでは「女性のライフ&キャリアスクール」を事業の柱としていますが、女性のキャリアにとって結婚や出産は切っても切り離せない関係です。ですから、私自身のライフイベントに関する投稿にも、注目が集まったのだと思います。
この動画をきっかけに、「ライフイベントと経営の両立」といった文脈で取材を受けたり、イベントに登壇したりする機会がふえました。実は、出産のときもnoteを書いたんですよ。
私は基本的に、プライベートとビジネスを切りわけて考えていません。 キャリアが断絶されるきっかけともとらえられがちな出産などのライフイベントも、仕事と相互作用でよりよい体験にしていけると思っているからです。よい相互作用を生みだす方法を考えながら、いつも発信するようにしていますね。
「自分の人生のすべてを、コンテンツとしてとらえる」というのが、私のモットーです。
TwitterでUGCを生む
ーー現在はどのようにTwitterをビジネス活用されていますか?
福田 SHElikesの受講生の方を「シーメイト」と呼んでいるんですが、TwitterはSHElikesのアカウントから発信するというよりは、シーメイトさん同士のTwitter上でのつながりを大切にする場だと考えています。
「#シーライクス」とともにTwitterに投稿される学習進捗やキャリアチェンジ報告などの口コミは、月に7000件以上もあるんです。オンライン学習を主軸としながらも、SHEのコミュニティで皆さんがつながってくださっているのが嬉しいですね。
ーーシーメイトさんたちは、はじめから活発にtweetされていたんですか?
福田 イベントなどをきっかけに、熱狂的なUGC(User Generated Contents=ユーザーの手によって制作されたコンテンツ)が生まれることは以前からありました。でも、自発的・定常的にシーメイトさんが発信するようになったのは、SHE社内で「Twitterキャンペーン祭り」を実施したことがきっかけです。
2ヶ月限定で社員全員にTwitterをやってもらって、1番フォロワーをふやせたひとにインセンティブを出したんです。これがきっかけになって、その後はインセンティブがなくてもTwitterでシーメイトさんとやりとりする社員がふえました。Twitterにインタラクティブ性が生まれた、転換点です。
現在、SHElikesのTwitterアカウントでは、年に4回ほどハッシュタグつきのお題企画を実施しています。シーメイトさんたちがさらに発信しやすいよう、きっかけをつくることが目的です。
ーー企業はTwitterを宣伝につかいたがります。でもSHElikesのアカウントは、シーメイトさんたちの会話を盛り上げるための触媒のような役割なんですね。
福田 そうですね。お題投稿でUGCが生まれるだけでなく、SHElikesの会員でない方にも、コミュニティの熱狂を感じてもらうことができます。
副次的な効果として、SHElikesの入会を検討している方たちに、「こんなにたのしそうなコミュニティなら私も入りたい」と思ってもらえることもありますね。
シーメイトさんたちの盛り上がりが、SHElikesのブランドイメージを支えていると考えています。
ファーストタッチポイントをInstagramで
ーーInstagramはどのように活用されていますか?
福田 Instagramは現在、SHEのことをまったく知らないひとがはじめてSHElikesに触れる、主な「ファーストタッチポイント」になっています。
そのため、まずは働く女性にとって役立つ情報をメインにお伝えし、SHElikesを知らない方でもたのしんでいただけるメディアとして、Instagramを運営するようにしています。SHElikesの説明や卒業生の事例などは、6記事にひとつ入れる程度です。
SHEでは、ブランディングやクリエイティブにすごく力を入れているので、制作物につかう色やデザインなどは、ガイドラインをつくって徹底的に統一しています。SHElikesのキャラクター「SHEちゃん」を活用して、トンマナを揃えることもしていますね。
実はSHElikesのInstagramの投稿は、コンペで選ばれたシーメイトさんが制作しているんですよ。Instagramをつくりながら、SHElikesで学んだ技術の向上と実績づくりができるようにしています。
ーー「人生のすべてをコンテンツとしてとらえる」と言いきる福田さん。「ライフワークバランスをとる」のではなく、プライベートはもちろん、「ワークもライフである」ととらえてどちらも大事にするスタイルは、多くのひとたちの共感を呼んでいます。
自分がめざす世界を現実のものにするために、SNSで情報や人脈、仲間をたぐりよせる福田さんのSNS活用術と行動力に、「自分もやってみたい! 」、「やってみよう! 」と勇気をもらった方も多いのではないでしょうか。福田さん、本日はどうもありがとうございました。
※敬称略
登壇者紹介
福田恵里さん
SHE株式会社 代表取締役CEO / CCO
1990年、滋賀県生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートに入社。退社後、26歳でSHE株式会社を設立した。「一人ひとりが自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」をビジョンに掲げ、おもにミレニアル世代の女性向けに、キャリア支援を行う。2020年4月より現職。同じく起業家である夫とともに、2020年6月に生まれたばかりの子育てにも奮闘中。
Twitter、Instagram、note
interviewed by 徳力基彦 text by いとうめぐみ