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経済 記事まとめ

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#円安

日銀短観と「次の一手」~首相発言の位置づけ~

日銀短観は景気堅調を確認 ドル/円相場は植田日銀総裁との会談を終えた石破首相による「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」といった発言を受けて147円付近まで急騰しています: あくまで「個人的」と付言し、「金利についてとやかく申し上げることではない」とも述べているため、どこまで思想性が強い発言なのか図りかねますが、蓄積した円ロングポジションを巻き戻すには格好の口実になったと言って良いでしょう: 一見してかなり踏み込んだ発言にも見えるため、「円

少し不安な「3年でデフレ脱却」発言

石破カラーは年末まで封印か 既報の通り、石破総裁は10月9日に衆議院を解散し、10月27日に投開票を行う方針を表明しました: 発足直後で新政権に新鮮味があること、野党の一致協力が進まないうちに勝負をつけたいことなどが決断の主たる動機になるでしょう。現状、石破総裁の経済政策観を尋ねられることが多くなっているものの、総選挙前に本音の話ができるはずもありません。補正予算編成などを通じて「石破カラー」が出されていくとすれば、それは総選挙後の話になりましょう。補正予算の焦点はほぼ間違

需給が示唆する円高圧力~24年初来の需給まとめ~

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9月ECB政策理事会の読み方~2度目の利下げと3度目以降~

利下げ路線主張も10月は現状維持に 9月のECB政策理事会は市場予想通り、主要政策金利を▲25bpずつ引き下げることを決定しました。この辺り、報道されない部分も大きいように思えるので、掘り下げて解説させて頂こうと思います。ECBは総裁会見のスクリプトが日本時間翌朝にはアップされていますので、こちらをしっかり読み込むことがECBウォッチの基本となります: 確実に減速が予見される域内労働市場に加え、足許の一般物価情勢も減速が確認されていることから、今回の決定自体は元々既定路線と

安い日本で「外国人が働きに来ない」の誤解

日本は「選ばれる国」でいられるか アジアで見た現実 連載「外国人材の故郷から」まとめ読み - 日本経済新聞 (nikkei.com) 昨年6月末時点の日本に在留する外国人の数は322万人と過去最高を更新しました。総人口に占める割合は2.6%程度と着実に増加しています。少子高齢化が一層深刻になる中、外国人労働者は欠かせない存在になっています。そして、政府は技能実習の抜本改善や特定技能の拡大等、外国人材のさらなる積極的な受け入れへと舵を切りつつあります。  在留資格別では、永

「弱い円の正体」と購買力平価(後編)

財PPP vs. サービスPPP 前編で見たように日本企業は「企業としての国際競争力を維持するために日本を脱出した」という道を歩んできたのが2010年前後からの史実でした。※沢山の方に読んで頂きました。有難うございます: 日本を脱出した結果、日本経済は「製造業の輸出拠点としての弱さ」を構造的に抱えることになったわけですが、これがPPPに根本的な影響を与えている、という議論の本丸に入りたいと思います。 まず、前編の最後でお見せしたように、PPPを財とサービスに分けた場合、「

「弱い円の正体」と購買力平価(前編)

意外に巧く行っている日銀正常化 早いものでもう9月になりました。激動の8月を駆け抜けて見て感じることは、まず日銀の正常化は意外と巧くいっているという印象です。というのも、当初大変な混乱を経たものの、結果だけを見れば日経平均株価は暴落水前の水準に戻り、円安の修正はかなり進みました。あくまで株・為替の水準について「結果だけを見れば」、政府・日銀が望んだ通りの結果になっているようにも読めます。 もっとも、高いボラティリティは様々な市場参加者のポートフォリオに傷痕を残しますので、そ

パウエル講演を終えて~もっと話して欲しかった労働市場の今後~

注目されたジャクソンホール経済シンポジウムにおけるパウエルFRB議長の講演は「Review and Outlook」とシンプルなテーマで行われ、「The time has come for policy to adjust」との一節が材料視されました: もっとも、政策運営に新しい材料を示したとはいえず、従前織り込まれていた利下げ路線を追認したに過ぎないという見方になります。しかし、これを受けた円相場は騰勢を強めており、まさに利下げトレードが流行しているという印象が強いです:

企業買収と「円安を活かすカード」~対内直接投資の観点から~

本邦小売最大手企業に対し、カナダのコンビニエンスストア大手企業が買収提案を持ちかけたということが大きく報じられています。同報道は日本経済新聞による独自であり、「提案を知る複数の関係者」からの話とされていますが、買収提案に関しては当該企業が「法的拘束力のない初期的な買収提案を受けていることは事実」とのコメントを発表している。実現可否はさておき、提案自体は事実のようです。本件に係る買収金額は実現すれば5兆円以上とされ、海外企業による日本企業買収としては最大級になるそうです。 「

ポスト岸田と金融市場

本日、岸田文雄首相(自民党総裁)が首相官邸で会見し、9月に予定する総裁選に立候補しない意向を表明しました。情報が出揃ってはいないところですが、現状の所感を当方のメモも兼ねて整理しておきたいと思います。今回も目先のお話なので日経COMEMOとして投稿いたします。 派閥の政治資金問題などを受けて低迷していた支持率の影響を受け、再選が難しいという決断です。各種の世論調査では7~8割が岸田総裁の続投を望まないというメッセージが確認されていました。筆者は政治の専門家ではありませんが、

インバウンドは「量から質」へ?

24年の訪日外客数は過去最高へ 7月19日、 日本政府観光局(JNTO)が発表した6月の訪日外客数は313万5600人と4か月連続で300万人の大台を超えたことが話題になりました: 1〜6月合計では1777万7200人に達しており、前年比では+66%と大幅増加です。パンデミック直前で、これまでの最高記録であった2019年同期(1663万3614人)を更新する仕上がりです。年初来の仕上がりを国・地域別にみると、韓国、中国、台湾、米国の順に多く、依然としてアジア勢が強いものの、

賃金低下を確信するECB

利下げを急ぐ雰囲気は無し 7月19日のECB政策理事会は市場予想通り、政策金利の現状維持を決定しました。4年9か月ぶりとなった前回6月の利下げ着手前後から「スタッフ見通し改定に合わせて3か月に1回」が予想の中心となっており、元より利下げの有無は9月会合で注目される論点です: 周知の通り、現状ではコア国であるフランスの政局が流動化しており、これが経済・金融情勢に悪影響をもたらすという観点からは利下げが正当化されそうな状況と言えそうですが、果たしてインフレ圧力が確実に後退したと

進むインフレ税~その読み方~

顕著に進む財政再建 6月末に発表された1~3月期資金循環統計に関し、先のnoteでは家計金融資産の外貨性資産比率が過去最高を更新したことなどを取り上げました: しかし、同統計では家計部門以外に政府部門でも注目される動きが見られています。過去、noteでは「遂にインフレ税が始まったのか」と題し議論を展開しております: ここでは政府が望む、望まないにかかわらずインフレ税によって財政再建を進める状況に突入している可能性を議論し、非常に大きな反響を頂きまひた。今年1~3月期の資金

6月『景気ウォッチャー調査』で現状判断DIは4カ月ぶり改善だが、4カ月連続で景気判断の分岐点の50割れ。円安や物価高が一段と下押し要因に。パリ・オリンピックでの日本代表の活躍への期待は、景気の下支え要因。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年7月9日)―

6月『景気ウォッチャー調査』で、「旅行交通関連」の現状判断DIは3月60.9から6月49.5へ3カ月連続低下。  6月『景気ウォッチャー調査』では、現状判断DI(季節調整値)が47.0となり、前月より1.3ポイント上昇しました。4カ月ぶりの改善ですが、2カ月前の4月47.4より低く、4カ月連続で景気判断の分岐点の50.0を下回っています。内閣府の基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で判断継続となりました。    6月に始まった定額減税の