唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)

慶大経卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会などを経て現職。著書に『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』、『「強い円」はどこへ行ったのか』。所属学会:日本EU学会。※コメントは個人的見解であり所属組織とは無関係です

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    ユーロ圏インフレ率は本当にピークアウトしたのか?

    本当にピークアウトしたのか? 11月30日に発表されたユーロ圏11月消費者物価指数(HICP)は前年比+10.0%と前月から▲0.6%ポイントも減速しました(以下特に断らない限り前年比とします): 減速は1年5か月ぶりの動きですが、これはエネルギーが+41.5%から+34.9%へ減速したことを受けた動きであり、後述するようにそれ以外の項目が顕著に減速したわけではありません: 資源価格のピークアウトがヘッドラインのインフレ率を押し下げるという展開は事前に想定された方向感で

      • 40年ぶりのCPI上昇をどう読むべきか?~輸入物価に滲む円安効果~

        40年ぶりのCPI上昇、影響は消費増税以上 ドル/円相場はピーク時の152円付近から値を戻しているものの、依然として140円台を挟んで高止まりが続いています。今後、米金利低下に伴うドル売りはもちろん予見されるものでしょうが、日本に目をやれば史上最大の貿易赤字が底流にあることは変わりません: それは東京外国為替市場の実需環境において「円を売りたい人が多い」という基本的事実が不変であることを意味します。また、巷の為替見通しとは別に、年初来で進んできた円安が日本経済にもたらす影響

        • 最高難度のミッションに挑むECB~多様なスタグフレーション~

          劣化するユーロ圏の実質賃金情勢 11月9日、英FT紙は『Eurozone wage growth accelerating, job ads show』と題し、ユーロ圏の各国の賃金動向を報じています: https://www.ft.com/content/e65d339b-c44f-438e-a747-e2d20b7497ae ユーロ圏の賃金指数と言えばECBが四半期に一度公表する妥結賃金(negotiated wage)が定番ですが、いかんせん公表が遅いという難点を抱え

          • 表舞台に戻ってきそうなFRBの平均インフレ目標(FAIT)

            FRBにとって株価上昇は潰す対象? 11月に入り、米10月消費者物価指数(CPI)や米10月生産者物価指数(PPI)など、主要なインフレ指標が軒並み予想比減速しており、利上げペース減速(ひいてはその先にある利上げ停止)を期待するムードが強まっている: もっとも、11月14日にウォラーFRB理事が発言したように、利上げペースの減速は利上げの停止と同義ではありません: https://www.nikkei.com/article/DGXZASS0IMF03_U2A111C20

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            スタグフレーションの淵に立つユーロ圏

            ユーロ圏経済は辛うじて増勢を維持 金融市場では米国の政治・経済・金融情勢に注目が集中していますが、その傍らでこれから懸案の冬が到来するユーロ圏の実体経済動向からも目が離せません。10月31日に公表されたユーロ圏7~9月期実質GDPは前期比+0.2%(前期比年率+0.7%、以下特に明記ない限り変化率は前期比)と減速しているものの、増勢は辛うじて維持しました: 速報段階ゆえ、需要項目別の詳細は明らかではないものの、インフレ高進を受けた実質所得環境の悪化が消費・投資意欲を抑制し

            製造業は「安い日本」に戻るのか~国内回帰論への淡い期待~

            日本企業の国内回帰について ドル/円相場は政府・日銀の円売り・ドル買い為替介入などを挟んで乱高下しています。もっとも通貨当局の思惑を想像しても真実は分かりようもなく詮無きことではあります。。重要なことは、史上最大規模の介入規模にもかかわらず、その効果が短期のうちに搔き消されてしまうという現実をどう理解するか、でしょう。もちろん、介入実施前と比較して安価でドルを調達できた輸入企業にとってはメリットですが、やはりファンダメンタルズに逆らう為替介入の寿命は長くないということが改めて

            10年で半分になった円の価値

            突き進む、史上最大の円安相場 10月20日、ドル/円相場は遂に150円台に到達した(本稿執筆時点の高値は151.94円)。年初来の値幅は38.47円に達しており、プラザ合意翌年である1986年(50.70円)以来の大相場となる。その後、政府・日銀による為替介入と思しき動きで乱高下しておりますが、当面の大勢には影響があるように思えません: なお、過去にドル/円相場が高いボラティリティに見舞われたのは基本的に円高・ドル安の年であって円安・ドル高の年で大きな値幅が出ることは極め

            岐路に立つ「成熟した債権国」

            本当の見どころは季節調整値 10月10日、財務省より発表された本邦8月国際収支統計は経常収支が+589億円と8月としては現行統計開始以来で最小の黒字を記録しました: 既に発表済みの8月貿易統計が▲2.8兆円と史上最大の赤字だったため、低水準の経常黒字は予想されたものではあります。商品市況は夏前にピークアウトしているものの、輸入統計における鉱物性燃料価格へ反映されるには暫く時間がかかります。また、時節柄、円安で輸入金額が押し上げられているというデメリットがクローズアップされや

            「鎖国政策の終わり」が意味するもの

            インバウンド需要は戻るのか 10月11日から始まる水際対策の緩和を受けて、いよいよ外国人の個人旅行やビザなしの来日が再開します: ここまで規制を引っ張ったこと自体、常軌を逸しているわけですが、撤廃の動き自体は評価されるものです。鎖国政策と揶揄されていた岸田政権の水際対策は①(現地を出国する前)72 時間以内の陰性証明書、②観光ビザの要求、③添乗員付きツアー客限定の3つが大きな障害とされていました。このうち①に関しては9月7日からワクチン3回接種済みを条件に不要とされています

            ドル暴落説の妥当性

            散見され始めたドル暴落説 全面高が長く続いているせいか、ドル暴落の可能性を懸念する言説が散見され始めているように感じます。英語報道では暫く前からそういったものが散見されていましたが、それに着目する日本語記事も見られ始めました: 確かに、ここにきて為替市場はドル全面高の色合いがかなり色濃くなっているように見えます。これは名目実効為替相場(NEER)ベースで見た英ポンドやユーロ、そして底堅さを維持していたカナダドルまでも崩れ始めていることからも読み取れます: ちなみにNEE

            対外純債務国は市場と喧嘩してはならない

            警告に耳を貸さないトラス政権 金融市場の関心はもっぱら英国に移った感があります。トラス新政権の「拡張財政+金融引き締め」というポリシーミックスは英国に限らず、同じくエネルギー高に苦しむ大陸欧州諸国、そして家計支援を盛り込んだインフレ抑制法案などを志向する米国においても程度の差こそあれ、採用されるものではあります: 具体的には金融引き締め(利上げ)で内需にブレーキをかけた上で、通貨高も促すことでインフレ圧力の減退を狙う一方、内需の大崩れを防ぐために拡張財政でアクセルを踏むと

            「春になれば円安は止まる」をどう考えるか

            ドットチャートほどインフレ見通しは上方修正されていない 9月21日、注目されたFOMCは政策金利の誘導目標を+75bp引き上げ、3.00~3.25%とすることを決定しました: FF金利の3%超えは2008年1月以来、約14年半ぶりです。一部で予想されていた+100bpとまではいかなかったものの、メンバーによる政策金利見通し(中央値、ドットチャート)は2022年に関し+100bp、2023年に関し+87.5bp、2024年に関し+50bp引き上げられています。利上げの最高到達

            標語乱立の欧州エネルギー政策~しかし、今冬は結局「節電」頼み~

            標語乱立のEUのエネルギー政策 9月14日、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、欧州議会において今後1年間の活動方針を表明する一般教書演説の中で緊迫感を強めるエネルギー事情への対応策を公表しました: 演説の論点は多岐にわたりますが、エネルギー事業の収益を一部徴収し、そのほかの企業や家計に分配する案が大々的に取りざたされています。また、節電目標の定量化および義務化も公表されており、一連の策は9月30日の臨時エネルギー閣僚理事会で議論されることになります。全体として民間の経

            レパトリ減税という名の円安抑止策

            必要なのは需給にアプローチする手段 為替市場では政府・日銀による政策対応への思惑が高まりつつもドル/円相場は基本的に年初来高値圏で推移しています。こうした状況下、改めて「どうすれば円安は止まるか」という点に関して世の問題意識が高まっているように感じられます: 現下の円安を「円売りではなくドル買い」ともっともらしく説明したい向きが目立ちますが、名目・実質実効双方のベースで円相場の下落は他通貨対比で突出しており、全てをドル側の要因で説明しようとする態度に筆者は賛同できません。

            【日経BP社、近刊】「強い円」はどこへ行ったのか

            リスクオフの円買い、安全資産としての円買い、これに伴う円高不況など「円高」というものが日本経済の宿痾であり、最も恐れるべき現象だと言われていたのがまだわずか10年前です。 ですが、2020年以降のパンデミック、とりわけ2022年春以降の円相場は対ドルで見ても、実効ベースで見ても「底抜け」と言っても良いほどの下落に直面しています。対ドルでの年間値幅は本稿執筆時点で35円を突破していますが、これは「円安の年」としてはプラザ合意以降で最大となります。 筆者のnoteをお読み頂い

            スタグフレーションに挑むECB

            2022年のインフレは既に悪化シナリオが実現 ECBは昨日の政策理事会で預金ファシリティ金利を現行のゼロ%から+0.75%へ、+75bp引き上げることを決定しました。+75bpの利上げ幅はECBとしては史上初です。改定されたスタッフ見通しはユーロ圏消費者物価指数(HICP)の2022/2023/2024年見通しに関し、6月の+6.8%/+3.5%/+2.1%が+8.1%/+5.5%/+2.3%へ全般的に引き上げられています。2024年に2%台前半に収束するとの見通しは変わって