見出し画像

ポプラ文庫ピュアフルが「いま読みたい作品」──編集部を驚かせる、“泣ける恋愛小説”に出会いたい #創作大賞2023

4月25日にスタートした、日本最大級の投稿コンテスト「創作大賞」。第2回となる今回は13の編集部に協賛いただき、優秀作品は書籍化や連載など、クリエイターの活躍を後押ししていきます。

「どんな作品を応募すればいいの?」というみなさんの疑問や悩みにお答えするため、協賛編集部のポプラ文庫ピュアフル編集長の末吉亜里沙さんにインタビューを行いました。

余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』『この冬、いなくなる君へ』など、“泣ける恋愛小説”が人気のポプラ文庫ピュアフル。創作大賞でも恋愛小説部門で、「クリエイターのオリジナリティを発揮して、編集部を泣かせる作品を読んでみたい」ということで、泣ける作品をつくるためのポイントをお聞きしました。

ポプラ文庫ピュアフルって、どんなレーベル?

恋愛、青春、ファンタジー、YA要素もある作品……幅広いジャンルを扱うレーベル

── 末吉さんのご経歴を教えてください。

末吉 私は転職組で、ポプラ社に入って5年目になります。ポプラ社ではずっと文芸編集部にいて、2022年4月からポプラ文庫ピュアフル(以下、ピュアフル)の編集長を務めています。

新卒から出版業界にいて、新書や実用書をつくったり、Webの仕事をしていたこともありますが、いまはエンタメ小説を中心に担当しています。Web発の作品を出すことも多いですね。

── 担当作にはどんなものがありますか?

末吉 単行本では、TikTokクリエイター・けんごさんの「第1回けんご大賞」でベストオブけんご大賞にも選んでいただいた、綾崎隼さんの『死にたがりの君に贈る物語』を担当しました。ピュアフルだと、『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(著・森田碧)から始まる「よめぼく」シリーズや、『この冬、いなくなる君へ』(著・いぬじゅん)から始まる「冬」シリーズなど、“泣ける”作品を最近は多く手がけています。

── ポプラ文庫ピュアフルの読者層は?

末吉 基本的には20代〜50代の女性が中心ですが、本によっては60代・70代まで広がっているものもあります。

作品によってはもちろん男性も手に取ってくださいます。「よめぼく」シリーズのような、いわゆる泣ける“学園青春”モノは、男女問わず幅広い方に読まれています。

── ほかにも人気の作品はありますか?

末吉 『宮廷のまじない師』シリーズ(著・顎木あくみ)など、最近はファンタジーが人気ですね。

先ほども挙げた「よめぼく」や「冬」シリーズは、1冊ごとに完結している作品ですが、シリーズとして支持されています。ほかにもバドミントンを題材にした青春小説、『ラブオールプレー』(著・小瀬木麻美)シリーズは、昨年アニメ化され、新装版も出るなど、大きく話題となりました。

── あえてカテゴライズするとしたら、「キャラクター文芸」「ライト文芸」を中心にしたレーベルということになりますでしょうか。

末吉 そうですね。最近そういう傾向にはあるのですが、ポプラ社が児童書の出版社ということもあり、児童文学の色の強いものもピュアフルでは刊行してきています。あさのあつこさんの「The MANZAI」シリーズや、天野頌子さんの「陰陽屋」シリーズなど、読み心地がいわゆる児童文学やYA(ヤングアダルト)に近いものも出していたりします。

── 一つのジャンルに特化しているのではなく、幅広い作品を扱っていらっしゃるところが、レーベルの特徴でもあり、強みでもあるんですね。

末吉 ピュアフルは「心がふるえる」をキーワードに作品を刊行しているのですが、「ふるえかた」はどんな方向でもいいというか。泣けるものでもいいし、今風にいうと「エモい」ものでもいいし。キャラクター文芸だけというわけではなく、懐の深いところが特徴かなと思います。

“ポプラ社っぽくない”作品に創作大賞で出会いたい

── 続いて、今回「創作大賞」に参加を決めていただいた理由をおうかがいします。ポプラ社では「ポプラ社小説新人賞」というコンテストがありますが、この受賞作がピュアフルから刊行されることもありますよね?

末吉 はい。特にここ2年は、「ピュアフル部門賞」も新設しています。

── 新人発掘をする場はすでに自社でお持ちのなか、なぜ今回「創作大賞」に?

末吉 ありがたくも、みなさんに“ポプラ社っぽい小説”のイメージをお持ちいただいているので、新人賞には青春モノや心温まるストーリーなど、大きな意味では似たジャンルの小説が多く集まります。当社としては、そういう作品はもちろん主力として刊行していきますが、そういう作品だけを求めているわけではないので、違うジャンルの作品や尖った作品が集まる大海原に行ってみたいなと思い、参画させていただきました。

「泣ける恋愛小説」を募集します!
ポプラ文庫ピュアフルでは、毎月「心がふるえる」小説を刊行しております。中でも『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(著・森田碧)や『この冬、いなくなる君へ』(著・いぬじゅん)などがシリーズ化し、読者の方から「読後、涙が止まらなかった!」とご感想をいただくなど「余命モノ」や「泣ける恋愛小説」が大きな話題となりました。
弊社では「ポプラ社小説新人賞」を年に1回開催しておりますが、今回noteというオープンな場でのコンテストということで、新人賞へ応募されるものとはまた異なる作品に出会えるのでは、と大変期待しております。
オリジナルでユニークな、ネット上でも大きく話題となる斬新な作品をお待ちしております。

編集部からのメッセージ

 ── ポプラ社っぽいものではない、尖った作品というと、もう少し具体的に「こういう作品」というイメージはありますか?

末吉 基本的にはあえて限定はしたくなくて。というのも、限定してしまうと同じような作品が集まってきてしまうので。

今回ピュアフルは、恋愛小説部門にエントリーさせていただき、わかりやすいキーワードとして「泣ける」を挙げていますが、どんなおもしろいフックで泣かせてくれる作品があるんだろう、と期待しています。ただの恋愛小説ではなくて、一工夫あるような作品が読めるといいなと思います。

「泣ける恋愛小説」のつくりかた

作品には「強さ」がほしい

── そもそも今回、恋愛小説部門に参加したのは?

末吉 恋愛小説はピュアフルの王道の柱です。そのなかで、ピュアフルっぽくないというか、可能性を広げて募集をしてみたら、どんな作品が集まるんだろう?と思ったというのがあります。

── 先ほど、「心がふるえる」フックの一つとして「泣ける」というキーワードを指定したとおっしゃっていましたが、「泣ける」に限定した意図を教えていただけますか?

末吉 やっぱり作品には「強さ」がほしいと思っています。一口に「強さ」と言ってもいろいろな角度がありますが、一番伝わりやすいのが「泣ける」というキーワードかと思い、今回はそれを表に出しています。

恋愛小説って基本的には、二人が出会って、二人の恋が成就していくという大枠のストーリーは決まっています。そこにどんなオリジナリティを出してくるのか、どんなどんでん返しがあるのか、なにがその作家さんにしか書けない個性なのか──そういうのがあると、より強い作品になると思います。

ストレートに泣かせる、仕掛けで泣かせる……方法はさまざま

── 心をふるわせる方法はたくさんあるということですが、人を泣かせようと思ったときに、大事なこと・必要なことはどんな要素だと思いますか?

末吉 難しいですね……。本当に作品によると思います。たとえば、「よめぼく」シリーズは、基本的にタイトルでネタバレしている作品なんですよね。『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』と言われたら、ある程度のあらすじはみんな思い浮かぶし、二人とも余命があるから死んじゃうんだろうなっていう結末も想像がつく。

でも、大きな意味で言ったらその枠組みはまったく外さないのに、魅力的なキャラクターと儚い美しさを感じさせる恋描写に、とっても胸を打たれるんです。いまシリーズ累計30万部売れていて、熱い感想がめちゃくちゃ編集部に届いているんですよ。「この子たちに出会えてよかった」とか、そのキャラクターに寄り添って、自分の感情をのせるから、最後泣いてしまったというような感想が多いです。こういう王道の作品で泣かせるのは、非常に難しいとは思うんですが、これがある意味「ストレートな泣きの作品」。

一方で、いぬじゅんさんの「冬」シリーズのように、ひねりがあって、どんでん返しが明らかになった瞬間に、驚きとともに涙が出るものもある。本当にさまざまな泣かせ方があると思っています。

── どんな驚かせ方なんでしょうか?

末吉 それは一番のネタバレになってしまうので、具体的には言いづらいのですが……。本当にあっと驚く仕掛けがあって、真実を最後に知ったときに、衝撃と共に涙があふれてくるんですよね。

── その驚きは、ぜひ作品を読んで、体験してみてくださいということですね。

末吉 本当に作品それぞれなので、一口に「こうすれば泣けます」というのは難しいと思います。でも、一口では言えないからこそ、編集部の驚きが生まれるポイントでもあるわけです。繊細な表現の積み重ねが胸を打つこともあるし、ポエミーな文章から生まれるきらめきや世界観に心がふるえることもあります。

「作品のハイライト=泣かせポイント」を明確に

── 世界観や主人公への共感など、売りのポイント、泣かせポイントを決めたうえで、物語を組み立てていくのがいいんでしょうか?

末吉 はい。私自身も、作家さんと一緒にプロットの段階で起承転結を決めるのはもちろんですが、起承転結のどこで泣かせるのか、どこが盛り上がりなのかというのをしっかり共有するようにしています。

たとえばバッドエンドの恋愛小説であれば、「落差」が大事になってきます。失恋で終わったり、相手が死んで終わってしまうとしたら、二人の恋愛が最高潮に盛り上がるシーンがきちんとないと、その後にいくら悲劇になったとしても泣けないですよね。

だから全体プロットを書くだけでなく、どこが泣かせポイントなのか、泣かせるためにはどこを盛り上げる必要があるのか、そこを自分の中でシャープにしてもらうのが大事だと思います。

たとえば映画のCMは、盛り上がるシーンをポンポンポンって4つくらい重ねてつくられているじゃないですか。そんなふうに、作品をCMにするならどこをハイライトとして入れるか、自分の中で明確にしてから執筆をスタートさせるといいのかなと思います。

キャラクターはプロフィールを細かく書いて深めていく

── 恋愛小説の場合、ヒーロー・ヒロインのキャラクター造形や、二人の関係性が大事になってくると思います。魅力的なキャラクターをつくるために、クリエイターのみなさんにアドバイスできることはありますか?

末吉 これも人によってさまざまなので、あくまで私の場合になるのですが、私はキャラクターシートの作成を作家さんにお願いしてます。主人公とほかの主要人物の分もですね。

作家さんと私と、たとえばカバーを描くイラストレーターさんとイメージを揃えることが一番の目的です。たとえば作家さんのなかに「すごくかわいい美少女」というイメージがあったとしても、人によって思い浮かべる美少女像はちがいますよね。

実際に作品を書くときに、キャラクターシートに書いてあるすべてを描写する必要はないのですが、キャラクター像を細かくつくり込んでおくことで共通認識を持てますし、作品内でも大きくキャラブレすることはなくなると思います。

── キャラクターシートには、どんなことを、どんなレベルで書くのでしょうか?

末吉 それも人それぞれで、作家さんによって事細かに書き込む方もいれば、フワッとしている方もいますね。たとえば、家族構成とか、性格の長所短所、好きな食べものや苦手なもの、どういう幼少期を過ごしていたのか、という生い立ちを掘り下げたりとか。あとは、作品の中での立ち位置──学校の中での役割、組織の中や家族の中での立ち位置などが変わるのでそこを明確化させたりとか。サブキャラであれば、主人公に対する感情とか。要はキャラクターを深めていければOKです。

Webでは「口コミのしやすさ」も意識

── キャラクター以外に、恋愛小説を書く上で、大事なポイントはありますか?

末吉 やっぱり「驚き」みたいなもの、「仕掛け」ですね。読者を惹きつけるためのものであり、あらすじを見たときに「これ読んでみたい」と思わせるフック。

それが設定なのか、表現なのか、突拍子もないキャラクター造形なのか、なんでもいいんですが、一見普通に見える小説の中に、どんな驚きが詰まってるのか、というところは一つキーワードとなるかなと思います。

── 編集部からのメッセージに「ネット上でも大きく話題となる斬新な作品をお待ちしております」とありますが、ネットでヒットする作品の傾向はありますか?

末吉 過去に当社で出版したネット発の作品に関して言えば、とにかく感想が熱いものが多いですね。PV数はそこまで伸びていなくても、読んだ人たちがみんなめちゃくちゃ熱い感想を残している、みたいな。そういう作品ってやっぱり強くて。PVが仮に少なくても、読んだ人の心には絶対になにかが残っている。

あとは、口コミのしやすさ。「めちゃくちゃ驚くから読んでみて」とか、「恋愛かと思ったら怖い話だったから読んでみて」とか、おもしろさをネタバレなしにわかりやすく説明できる作品だと、話題になりやすいのかなと思います。

タイトルのオリジナリティを突き詰めて

── あとはタイトルやあらすじも重要になると思いますが、書き方のコツがあれば教えてください。

末吉 コンテストの審査をしていると、どうしても似たようなタイトルの作品が多いんですよね。その中で、ちょっと変わったタイトルや、攻めたタイトルがあると、それだけで「一番に読んでみようかな」と思います。キラリと光るなにか、オリジナリティとか、キャッチーさを突き詰めてもらいたいです。

最近だとラノベを筆頭に、エッセイ的なタイトル──設定と読後感が詰まっているようなものが人気があります。逆に、いわゆるかっこいいタイトル、抽象的なタイトルは難しいのかなと思います。

あらすじが上手くなくてもおもしろい作品もあるので、編集部としてはそんなに意識していないですね。ただ、一般的にWeb小説で読まれるためには、次のページをクリックしてもらわないといけないので、それこそSNSでバズる本の紹介動画のようなキャッチーさが、あればあるほどいいと思います。

── ちなみに、恋愛小説全体でのトレンドはありますか?

末吉 やはり今は「泣ける」恋愛小説でしょうか。最近は、読者が「この本を読んだらなにを得られるか」というのをシビアに見るようになっていると感じます。つまり、泣くまではいかない恋愛小説──ラブコメや淡い恋を描いた作品などは、かつてよりは売りづらくなったように思います。

── 小説を読んで泣きたいというのが、多くの人が求めているポイントなんですね。それって映画など、ほかのジャンルでも同様の傾向なんですかね?

末吉 映画だと、「セカチュー」「恋空」「余命1ヶ月の花嫁」とか、定期的に「悲恋」トレンドがくる感じがしますよね。でも、コミックの編集者と話したりすると、コミックジャンルはまたちょっと違うみたいですね。コミックでは泣ける作品ももちろん人気ですが、もっと設定が細分化された恋愛モノも人気だったりするようです。

応募者に向けたメッセージ

── 最後に、応募するクリエイターに向けたメッセージをお願いします。

末吉 ポプラ文庫ピュアフルは「泣ける恋愛小説」を募集しています。ぜひ編集部をあっと驚くような切り口で泣かせてください。奇抜な設定、衝撃的なラスト、はたまた読後、幸福感に包まれるような作品……どんなタイプの小説でも、「恋愛」「泣ける」が含まれていれば大歓迎です。あなたにしか書けない、オリジナリティのある作品を楽しみにお待ちしております‼

末吉亜里沙
1984年生まれ。2017年ポプラ社入社。文芸編集部に配属され、ポプラ文庫ピュアフルをメインに担当。web発の作品も手掛ける。

創作大賞のスケジュール

  • 応募期間     :4月25日(火)〜7月17日(月) 23:59

  • 読者応援期間:4月25日(火)〜7月24日(月)23:59

  • 中間結果発表:9月中旬(予定)

  • 最終結果発表:10月下旬(予定)

創作大賞のスケジュール

詳しくは、創作大賞特設サイトをご覧ください。

創作大賞関連イベントのお知らせ

【毎週木曜20:00〜】創作大賞RADIO

週替わりで協賛編集部の担当者が出演し、求める作品像や創作のアドバイスなどをお話ししています。

開催済みイベントのレポート


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!