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毎日1000文字を書く芸人 ロザン菅さんに聞いた「なんで有料でnoteを書いてるんですか?」

人気お笑いコンビ「ロザン」のボケ担当・菅広文さんは、noteで「ロザン菅の1000字」という有料記事シリーズを執筆しています。

驚くべきはその頻度と量。なんとこれまで約1年半にわたり、毎日約1000文字のコラムを書き続けています。それらをまとめたものは新刊『京大中年』として発売されました。

ロザン菅さんのnote
ロザン菅さんのnote

高学歴コンビとしても知られているロザンの菅さんが考える、継続するためのコツや、芸人が文章を書くことの意味とはーー。noteの意外な使い方についても聞きました。

毎日1000字、書くことを仕事にするために

ーー菅さんがnoteをはじめられたきっかけ、理由はなんですか。

ロザン菅さん(以下、菅):もともとnoteを知る前からスマホのメモ帳にはいろんなことを書きとめていました。それはどこにも公開はしていなかったです。

ただ書いているうちに、吉本興業とnoteがなにやら連携をはじめるという知らせが届いて、それでnoteをはじめてみようかなと。

ーーnoteでは週に7日。毎日1000字ほどの文章を書き続けています。忙しいなかでかなりのペースですよね。

菅:基本的に毎日続けることが、何事においてもうまくなる近道じゃないかと思っています。自分の文章、もっとうまくなりたいという気持ちがあるので、そのためにはどうすればいいかっていうと、やっぱり毎日続けることなんです。

じゃあ毎日続けるためにはどうするか。それは「続けても苦じゃないこと」をやればいいんです。宇治原さん(相方の宇治原史規さん)が前に、勉強とか仕事に関して言っていたことがあるんです。

みんな毎日継続できる時間だけやればいいんだけど、調子がいいときは何時間もやって、調子が悪かったらちょっとしかやれへん。そんなことをするからあかん

ああ、自分のことだって思う人、いますよね。

これを思い出してみて、だったら僕が毎日続けられるのは何だろうと考えて、感覚的に出てきたのが「毎日1000字」だったんですよね。これならできるだろうって。

実際に書いてみると1000字ってちょうどいいんです。文章として起承転結をつけられるのがちょうど1000字くらいからなので。

ーーネットの発信ひとつでも、ちゃんとオチをつけたいということでしょうか。

菅:そうですね。たとえばTwitterって140字ですよね(※)。あの短さで起承転結をつけるのって、僕にとってはすごくむずかしいです。連投連投みたいなことをする人もいますけど、僕はそういうルール無視みたいなのは苦手で(笑) 決まってる範囲内でやりたいって思うタイプなんです。

これまで本も何冊か出させてもらってますけど、やっぱり仕事としても「書く」ことはちゃんとやっていきたいとは思っていました。それを形にできたのは本当にnoteのおかげだと思ってます。

※有料プランに加入すると140字以上の投稿もできます

ネタはnoteのプレビュー画面で共有する

ーー芸人の方はお笑いのネタを書かれるのも仕事だと思います。もともと文章を書くのが好きだったり、得意だったりする方が多いんでしょうか。

菅:人によりますね。口頭でネタを伝えてしまう人もいれば、箇条書きのメモにして相方に送る人もいるし、あるいは一緒につくっていく人もいる。

ロザンの場合はけっこう僕がひとりで台本をつくって、宇治原さんに送ることが多いです。そこでもnoteを使わせてもらっています。

ーーそれはつまり、noteのプレビュー画面のURLを送っているということですか。

菅:そうなんですよ。おもしろい使い方ですよね。実を言うと、その下書きはnoteを有料で購読してくださっているファンの方には公開しちゃっています。実際の台本はお見せしていないんですけど、だいたいのストーリーとか起承転結はこういう流れですよっていう下書きは、有料部分で公開してるんです。

ーーそんな使い方をされているんですね。記事を有料にできるのはnoteの特徴的な機能のひとつですが、有料とすることにプレッシャーを感じることはありますか。

菅:やっぱり有料で読むことと、無料で読むことはまったく違うものだと思うんです。たとえばほとんどの本はお金を払って読みますよね。

そうするとこちら側もそれなりの覚悟がいる。プロとしての意識を持って書いています。書く自分にも責任が生まれるし、受け手の方にも真剣に読んでもらえると思っています。

正直に言うと、僕の場合はそれ以上に自信になるっていうのがありますね。ものを書いて、それを買っていただけるお客さんがいるんだっていうことは、この仕事をしていいんだ、継続して書いていいんだっていう自信につながります。ありがたいですね。

ーー有料の記事をたのしんでもらうために、何か工夫してることはありますか。

菅:noteは最初の部分だけ無料にして、途中から有料にできますよね。そうすると実は大事なのって無料の部分なんですよね。

無料の部分を読んだときに、有料ゾーンを読みたくなるくらいおもしろいか、続きが読みたくなる書き方ができるかっていうのがすごく重要だと思います。自分のnoteだけの小さいデータですけど、ちゃんと分析はしています。

我々の仕事には「つかみ」みたいなものがあって、10分間つかむためには、はじめの1分が大事なんですよね。そこは文章の書き方と似てるのかもしれませんね。

ただ、ここでもうひとつ大事なのが、いかに「釣らないか」です。有料部分の内容とはまるでかけ離れたことは書かないほうがいいですよね。たとえば「このあとの有料部分はむちゃくちゃおもしろいですよ」って適当なことを書いたって、絶対に続かないんですよ。

それが一回うまくいったとしても信用を失ってしまうので、本当にいいことを書いたとしても読んでもらえなくなります。どれだけ興味深い無料記事を書けるか、なおかつ、釣らないで書けるかが重要なポイントになってきます。

noteの執筆、そのまま出版にも

ーー以前、noteを書く目的のひとつは「本を出すため」とおっしゃっていました。先日発売された『京大中年』の出版に、noteでの執筆は役立ちましたか。

菅:けっこう大きいですね。1年後に出る本のために文章をコツコツと書き溜めていくよりも、毎日noteに出していったほうが執筆が進みますから。

いままでだったら、たとえば本を出すのに6万字が必要となれば、6万5000字くらい書き溜めてそれを6万字にまとめる作業をしていました。

でも僕は今回noteに10万字以上は書いていました。それを6万字、7万字に収めてるわけで、より濃密なものに仕上がっていると思います。

noteは月額制(630円)でやらせてもらっているんですけど、はじめのころは1記事ごとに200円で販売していたんですよ。なんでやっていたかというと、みんなが買いたくなるのはどんな記事かってわかってくるんです。

だんだんと、なるほど、こういうものをみんな読みたがっているんだ、おもしろいと思っているんだ、と。そういう記事をベースにまとめたのが『京大中年』という本でもあります。

記事を単体で売ることでマーケティング的な役割を果たせたというところですかね。

ーーいまのメインの芸人としての活動とnoteの執筆活動、それぞれがお互いに影響し合うことはありますか。

菅:これはnoteさんの取材だから言うわけじゃないですけど、いま僕の生活の中心ってnoteなんですよ。自分の中で何をおいても、書くことが一番重要じゃないかなと思っています。

まずnoteの下書きがあって、それがもとになって劇場の仕事があったり、テレビの仕事があったりする。「あ、これnoteに書けるな」と思いながら生活してます。そこからたとえばネタがつくれたりとかして、けっこう心地がいいですね。

ーー仕事の前に自分の頭の中を書き出すためのツールとして使っている感じでしょうか。

菅:そうですね。noteを書き続けてみてわかったことがあります。「そんな毎日書くことないよ」とおっしゃる方はおられると思うんですよ。僕も書くまではそうだったんですけど、逆なんです。

毎日やるって決めると書くことができるんですよ。書くことがあるから書く、ではなくて。

僕なんか書くことないよ、私なんか書くことないよ、とか、「そんな菅ちゃんみたいに毎日アンテナ張ってない」みたいなこと言われますけど、そうじゃなくて、書くって決めてるからこそ、書くべきことが見えてくるんだと思いますね。

ーーいろんなものの見え方も変わってきそうですね。

菅:僕も子どもができて、やっぱり見る景色が変わりました。いままで「下」ってあまり見ていなかったんです。地面をね。

でも子どもと歩いていたら、地面を見るじゃないですか。水が溜まっているなとか、ガラスのかけらがあるなとか。いままで意識してなかったことが、子どもと一緒だと見えるんですよ。

空も見なかったんですけど、子どもって空を見るんですよ。で、一緒に見るじゃないですか。「あ、いま空見てるわ」と思って。要はそういうことだと思うんですよ。noteは自分の子どもみたいなもので、たぶんいろんな世界の見え方が変わると思いますね。

人と比べず、できる範囲で続けることが大事

ーーnoteの会社としてのミッションは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」です。「続けること」はとてもむずかしいですが、菅さんなりのコツや秘訣はありますか。

菅:しんどくないことが一番大事だと思いますよ。そのためにはまず「人と比べない」ことです。

僕、ゲームだとRPGが好きなんですよ。でも、むちゃくちゃ下手なんですよ、自分でも思います。でもむっちゃ楽しいんです。なぜかというと人と比べてないから。

オンラインゲームみたいなのは少し苦手です。どうしても人と比べられがちじゃないですか。noteはオンラインに開けてはいるんですけど、自分の世界に入り込めるツールだと思います。

誰かと比べるんじゃなく、自分のできる範囲からやってみる。それが一番続けるコツなんじゃないかな。

ネットの発信、芸人の仕事にもプラスに

ーーロザンとして活動しはじめた当初はいまのようなネットの環境はなかったと思います。それが状況がだいぶ変わってきて、いまネットで発信して良かったこと、仕事においてもプラスになったことはありますか。

菅:むちゃくちゃありますよ。僕はありがたいことに本も出させてもらいましたけど、実際、本を出すのってかなりハードル高いじゃないですか。でもnoteとかが出てくると、とりあえずコンテンツを出すこと自体のハードルは低くなりますよね。その良さはもちろんあります。

自分がやりたいと思うことを形にするのが、すごく手っ取り早いし、あとは誰の力も借りなくていいじゃないですか。僕ひとりの力でいつでもできる環境を持っている強さはあるんじゃないでしょうか。

YouTubeもそうです。僕らは特に編集はしていないので、機材があって2人でしゃべったらコンテンツができる。最小限の人数でなんでもできるようになったことは大きいですね。

ーーテレビでもラジオでも、既存の仕事の多くはまずはじめに依頼ありきでスタートすると思います。それが自分発で動けるようになりましたね。

菅:そう、これはかなりのゲームチェンジなんじゃないかな。要は僕らってファンの方に支持されることが一番大事なはずじゃないですか。でもこれまではその前にひとつハードルがあったわけです。

「あの人にハマらないと」「この人に気に入られなければならない」

昔はよく聞きましたけど、最近は聞かなくなりましたよね。どこでも発信できるので、そこでファンの方にちゃんと届いてくれればよくなったんです。これはいい時代ですよね。

ーー芸人さんの仕事ってたとえば演技の仕事につながったり、書く仕事につながったり、いろんな活動に枝が伸びていきますよね。まずはネットになにか書いてみることは、ほかの芸人の方にもすすめたいですか。

菅:おすすめだと思いますよ。全員にやってほしいですけどね、吉本の社員も含めて。要はこれって「ウケる」「ウケない」とかじゃなくて、起承転結がある文章を書けるということは、仕事をする上で基本中の基本だと思っていて。

だって「書く」って、自分の頭の中にあることを「表に出す」ことじゃないですか。もちろん、しゃべることもそうなんですけど。

どの仕事も同じですが、メールひとつ送るにもちゃんと書けないと伝わらないですからね。芸人かどうか問わず社会人として、noteでもなんでも書く練習をしてみるのは良いことだと思います。

ロザン 菅広文さん
note:https://note.com/rozansuga
Twitter:https://twitter.com/sugachan1029
YouTube:https://www.youtube.com/@rozannogakuya

新刊情報

京大中年
発売:好評発売中
出版社:幻冬舎
価格:1,600円(税別)

ロザン菅さんの新刊『京大中年』
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