マガジンのカバー画像

#映画 #ドラマ 記事まとめ

242
テレビや動画配信サービスのドラマ・映画に関する記事をまとめていきます。
運営しているクリエイター

#映画評

映画『バクラウ』解説 ─ パンフレットに解説を頼まれたつもりで勝手に新作ブラジル映画の解説文を書いてみた

文●花田勝暁(編集部) ※ブラジル映画『バクラウ 地図から消された村』は、現在、レンタルDVDや、映像配信で観ることができます。 パンフレット 2021年のアカデミー賞の作品賞を受賞することになる作品『ノマドランド』が日本公開された頃、観に行った人たちのSNSで気になる書き込みが散見されました ──「パンフレットが売ってなかった」──。  『ノマドランド』のパンフレットは、公開から遅れて発売にはなりましたが、『ノマドランド』は当初から作品賞受賞に最も近い作品という評判だ

『パーム・スプリングス』と、「ループする日々」の再定義

ループする結婚式の一日「同じ日が何度もループしてしまう」という映画は数多くあり、定番のモチーフとして用いられますが、個人的には、ループものの映画を見る視点はこの1年ですっかり変わってしまったように感じます。少なくとも私は、いままでと同じ気持ちでループものの映画を見ることができなくなった。自粛生活と在宅勤務がそのきっかけでした。家から出ない生活が長期化することで、平日と週末、労働と休息、オンとオフの概念など、いわば「生活を区切っている境界線」がすべて消失してしまい、すべてがひと

『ミナリ』と、アメリカン・ドリームの残骸

これは誰の夢なのか1980年代、レーガン政権下のアメリカ。カリフォルニア州に暮らしていた韓国人一家が、農業での成功を目指してアーカンソー州*1 へ移り住んでくる場面から、映画『ミナリ』(2020)は始まります。カリフォルニア州ではひよこの雄雌鑑別を職業としていた夫婦ですが、独立してひと山あてたいと願う夫(スティーヴン・ユアン)は移住を決意。アーカンソー州の美しい自然がとらえられたオープニングのショットに胸が躍りつつも、これが「夫の目線から見た風景」であるようにも感じられます。

『ノマドランド』と、包摂を止めた社会

セーフティーネットからこぼれ落ちた人びと 「ノマド(流浪民)って、昔の開拓者に似てるよね。アメリカの伝統だと思う」と声をかける主人公の妹。刺々しい会話の雰囲気を和らげるために気を遣ってかけた言葉のはずですが、主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)の苛立った表情からは、妹の発言はあきらかに余計だったことが伺えます。キャンピングカーで暮らすほかない状況を、周囲が「放浪癖」「自由を求める精神」等と都合よく解釈する、その手前勝手さと無理解。60代になっても屋根のある家に住めない

[2021.01]映画評|『わたしの叔父さん』『聖なる犯罪者』|善と悪を、それぞれ対極の表現で描いた二本の映画が、人間の本質を炙り出す

文●圷 滋夫 (あくつしげお/映画・音楽ライター)  善と悪。人が胸の奥に秘めた正反対の心を、その在り方に影響を及ぼす社会的な側面と絡めながら、それぞれ圧巻の、そして太極の表現で描いた二本の映画が公開される。  デンマーク映画『わたしの叔父さん』は、首都コペンハーゲンから遠く離れた自然豊かな田舎の農村が舞台だ。27歳のクリスティーネは孤児となった14歳の時から、足が不自由な酪農家の叔父さんと二人で暮らしている。彼女はかつて獣医を目指していたが、今では叔父の身の回りの世話を

多面性を持つ名作『カセットテープ・ダイアリーズ』を音楽映画として観る

去年の7月にシネクイントで観ました。原題は「Blinded by the light」で、ブルーススプリングスティーンに影響を受けた在英二世パキスタン人が主人公という実話からの映画です。ラストシーンは泣きそうになるほど感動したのですが、noteに各タイミングを逸していたら、AmazonVideoで配信が始まっているようなので、激オススメしたいと思います。 実話からの映画化というのに驚きます。見どころの切り口がたくさんあるのですが、 ・イギリスでアジアムスリム移民の差別も含ん

【たまに映画】『1917』走り抜ける時間

重たい題材の映画を最近は観ないと書いておきながら、戦争映画を観た。 アカデミー賞作品賞にもノミネートされている作品です。 ■1917 命をかけた伝令 作品情報&予告 解説 「007 スペクター」「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」などで知られる名匠サム・メンデスが、第1次世界大戦を舞台に描く戦争ドラマ。若きイギリス兵のスコフィールドとブレイクの2人が、兄を含めた最前線にいる仲間1600人の命を救うべく、重要な命令を一刻も早く伝達するため、さまざまな危険が待ち受け

〈What's Hot? 2019〉 今年、ネットフリックスで最も観られた作品はこれだ!

いつでも、どこでも、好きな時間に、観たい作品を楽しめる、ネットフリックス。映画、シリーズ、リアリティ番組、ドキュメンタリー、アニメなどの多彩なジャンル。その膨大な作品のなかで、今年、日本ではどんな作品が人気だったのでしょうか。本日ここに、トップ10ランキング、<What's Hot? 2019>を発表します。みんなのお気に入りの映画は入ってる? あの話題のシリーズはどうだった? そして、日本で最も観られた作品とは? さあ、今年のネットフリックスを振り返っていきましょう! 2

クロスレビュー:「全裸監督 私はこう見る」 宇野維正、鈴木涼美、ペヤンヌマキ、大根仁

映画やドラマの感想は人それぞれ。語り合うのも楽しみのひとつです。『全裸監督』をどうご覧になりましたか? 映画ジャーナリストの宇野維正さん、作家で社会学者の鈴木涼美さん、劇作家、演出家のペヤンヌマキさん、映像ディレクターの大根仁さんの4人に聞きました。 〝ドラッグカルテル”ものに近い面白さ宇野維正さん(映画ジャーナリスト) 海外では、70年代から80年代にかけてのポルノ業界を題材にした魅力的な作品が作られてきました。きっと一番有名なのが、ポール・トーマス・アンダーソン監督が