誰かのために生きること
「あんた、いつからそんなに優しい子になったの」
たまの休日に実家に帰ると、母はそう言って揶揄いながらも満面の笑みを見せる。
たしかに自分勝手な性格のおれは、母に対して数えきれないほどの迷惑をかけてきた。
最低な親父にそっくりなおれを、20年間も育ててきた苦労は計り知れないし、少なくともおれは世間一般でいう"良い息子"ではなかった。
ただ大人になるにつれ、自分にとって大切な人を見極めることができるようになった。
おれが幸せにできる人の数には限りがある。
おれはアイドルでも政治家でもないから、何百人もの人に幸福を届けることはできないけど、たまの休みに会いに行きたくなるような、頭の片隅でおれのことを見守ってくれているような人たちを、幸せにしたいと思う。
自分の力量を把握し、その最大限のエネルギーを、数少ない大事な人に全力でぶつけるつもりだ。
毎日の些細な行動で、少しづつ、誰かのためにおれは生きたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?