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楽しく学ぶ力:成人学習におけるゲームの可能性と効果


楽しく学ぶことの力:成人学習におけるゲームの可能性

「さあ、楽しもう!」この一言で始まるのが、マーク・プレンスキーの著書『デジタルゲーム学習』です。この言葉は、単なるスローガンではなく、学習を再定義するための重要な指針となります。学びを楽しいものにすることが、特に成人学習においても非常に効果的であることが証明されています。現代の学習者にとって、単調で退屈な講義や教材に何時間も向き合うのは苦痛です。退屈な学びが多ければ、それがストレスや学習意欲の低下を招く可能性があるのは明白です。

ゲームで学ぶ効果

プレンスキーは「子どもが学校を好きじゃないのは勉強が大変だからではなく、退屈だからだ」と指摘しています。これは成人学習でも同じです。多くのビジネスパーソンは、座学の研修や一方的な講義に参加し、モチベーションが低下することがしばしばあります。しかし、楽しく、インタラクティブな方法で学ぶ環境が整えば、学習効果は飛躍的に向上する可能性が高いです。

例えば、ゲームを取り入れた学習アプローチは、特に成人学習者にとって効果的です。ゲーム要素を含む学習アクティビティは、学びの過程そのものを楽しむことで、知識の習得やスキル向上を促進します。学びが単なる知識の受け取りではなく、体験や挑戦として捉えられるようになると、学習意欲が自然に高まります。

「苦学なくして学習なし」を超えて

「苦学なくして学習なし」という古典的な考え方を持つ人々は多いかもしれませんが、ゲームや楽しいアプローチでの学びは、その効果が実証されていることから、徐々に支持を得ています。研究によれば、ゲームを通じて学ぶことは、楽しさを提供しながらも、集中力、創造力、問題解決能力を向上させるという結果が出ています。

たとえば、ビジネススキルを教える研修において、座学の講義ではなく、チーム対抗型のゲーム形式のワークショップを行うことで、参加者が意欲的に取り組み、リアルな職場の課題を体感しながら学ぶことができます。さらに、ゲーム形式の学びは、従来の学習に比べて学習者同士のコミュニケーションや協力を促し、学習の成果が高まる傾向にあります。

ゲーム要素を取り入れた学習アクティビティ

私自身も、研修でゲーム要素を取り入れた学習アクティビティを実践しています。特にベテラン社員を対象にした研修では、単に知識を伝えるのではなく、参加者に「ワーク」を通じてゲームを実施してもらいます。例えば、「リーダーシップ」や「チームワーク」をテーマにした簡単なシミュレーションゲームを行い、リアルなビジネス環境で直面する状況を再現することで、参加者が自然に学びを得られるよう工夫しています。

参加者はゲームを通じて、失敗から学び、次回にどう対処すべきかを考えます。実際の業務でのリアルな課題に直面した時、ゲームでの体験が活かされ、行動の変容が見られることが多いのです。このように、ゲームの中で楽しく学び、体感し、実務に応用できるアプローチがビジネスの現場でも有効であることがわかります。

ゲームの力でコーチングを強化

私は、ゲームを「コーチングツール」としても活用しています。コーチングでは、通常、個人の気づきを促すための対話が中心となりますが、ゲーム要素を取り入れることで、参加者はより積極的に行動し、実践を通じて学びを深めます。これにより、単なる講義形式の学びよりも早く、そして深く、意識や行動の変化が生まれます。

ゲーム形式のコーチングは、特に複雑なビジネス課題を解決するために役立ちます。たとえば、チーム内でのコミュニケーションを改善するためのワークショップでは、ゲームを通じて、参加者がどのように相互作用し、協力して課題を解決するかを体感できます。このようにして、ただ話を聞くだけの講義よりもはるかに効果的な結果を生み出すことができるのです。

ゲームが提供する新たな学びの可能性

ゲームを使った学習が教育現場やビジネス研修で普及し始めている背景には、その効果が実証されていることにあります。ゲームは単に楽しむための手段ではなく、学習者が自然に学び、実践できる環境を提供します。これにより、研修の効果が高まり、学習者の意識や行動にポジティブな変化が現れます。

一方で、「ゲーム」を前面に押し出すことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、ゲーム要素を目立たせる必要はなく、学習活動の中に自然に組み込むことで、その抵抗を減らすことが可能です。ゲームはあくまで「楽しく学ぶ手段」として位置づけられ、参加者にとっては学びのプロセスそのものが価値ある体験となるのです。

まとめ

成人学習における「ゲーム」の活用は、学びを楽しく、効果的なものにするための強力な手段です。学習者が主体的に参加し、楽しみながら知識を深め、スキルを向上させるためのゲーム要素を取り入れることは、人材育成の新しいスタンダードとなりつつあります。今後も、楽しく学ぶ「楽習」環境の整備が、企業の研修や教育において重要な役割を果たすことでしょう。

参考書籍:『デジタルゲーム学習』マーク・プレンスキー著, 藤本徹 訳 (東京電機大学出版局)

(この記事は、2020年5月20日にオフィスKojoのメルマガ「KOJO井戸端会議」に掲載したものを再編集したものです。)

※この記事は、弊社のメルマガ「KOJO井戸端会議」の過去の記事からピックアップし、note用に再編集したものです。
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