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構造的OJTの重要性:『Structured on-the-job Training』で学ぶ効果的指導法


S-OJTとは何か:『Structured on-the-job Training』の提言

OJT(On-the-Job Training)は、多くの企業で採用されている従業員教育の手法ですが、その実施方法が無計画で効果的でないケースが少なくありません。特に日本では、伝統的な徒弟制の影響が強く、「背中を見て学ぶ」「模倣学習」といった方法が中心となりがちです。しかし、こうした方法では、効率的かつ効果的な教育が難しいという課題があります。

そんな中で、注目されているのが『Structured on-the-job Training(S-OJT)』という書籍です。この書籍は、日本語には翻訳されていませんが、OJTを体系的かつ理論的に進めるための方法論を提案しており、多くの企業においてOJTが無計画に行われていることへのアンチテーゼとなっています。S-OJTは、インストラクショナルデザインの「学習者中心の原則」に基づいて構築されており、指導者の役割と組織全体の関与が強調されています。

S-OJTの重要なポイント

S-OJTの基本的な考え方は、「もし従業員が学んでいないなら、それは指導者が教えていないからだ」というものです。これは、OJTの成果は指導者の責任に大きく依存することを示しており、単に業務を教えるだけではなく、学習支援を構造的に設計し、効率的かつ効果的な指導が求められることを意味します。

また、S-OJTは1対1の指導を基本としていますが、組織全体の関与が重要であるとされています。つまり、トレーナー(指導者)に任せきりにするのではなく、組織としてのフォロー体制が必要不可欠であり、それが最終的に教育の成果に結びつくとされています。組織のサポートがあることで、トレーナーはより効果的に指導を行い、従業員の成長を促進することができます。

S-OJTシステムとプロセス

S-OJTの実施方法は、「S-OJTシステム」と「S-OJTプロセス」に分けられます。

  • S-OJTシステム:これは、OJTを実施するための全体的なフレームワークです。指導者がどのように指導を進めるか、またどのようなサポートが必要かを定めたものです。

  • S-OJTプロセス:具体的な指導の流れを示したもので、学習者がどのようにしてスキルや知識を身につけていくかを体系的に示しています。このプロセスに従うことで、無駄のない効率的な学習が可能になります。


S-OJTシステム
S-OJTプロセス

これらのシステムとプロセスを用いることで、従来の徒弟制に比べて、4〜6倍の時間削減と2〜8倍の金銭的効果が得られるという研究結果も報告されています。これは、S-OJTがいかに効果的な指導法であるかを裏付けるものです。

S-OJTがもたらす効果

S-OJTを導入することで、従来の徒弟制に基づくOJTに比べて、学習効率や効果が飛躍的に向上することが期待されます。具体的には、以下のような効果が期待できます。

  • 時間の効率化:計画的かつ体系的な指導により、学習にかかる時間が大幅に短縮されます。

  • コスト削減:効率的な指導により、教育にかかるコストを削減できます。

  • 高い効果:学習者が確実にスキルや知識を習得し、実際の業務に生かせるようになります。

これらの効果は、単に指導者だけでなく、組織全体が協力してOJTを進めることで初めて達成されます。従来の徒弟制では得られなかった効果を実現するために、理論に基づいた計画的なOJTの重要性が強調されています。

まとめ

『Structured on-the-job Training(S-OJT)』は、OJTを効果的に進めるための理論と実践の指針を提供する重要な書籍です。従来の無計画なOJTに対するアンチテーゼとして、計画的かつ体系的な指導が必要であることを強調し、学習者中心のアプローチを取り入れることで、従業員の成長を促進します。S-OJTの導入により、時間やコストの効率化を図り、組織全体の成果を向上させることが可能になります。

OJTを担当するすべての指導者や企業が、このS-OJTの考え方を取り入れることで、より効果的な人材育成を実現できるでしょう。今後も、理論に基づいた構造的なOJTの重要性を認識し、その実践に取り組んでいきたいものです。

(この記事は、2017年3月9日にオフィスKojoのブログ「伝刻の詞」にエントリーしたものを再編集したものです。)

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