2020年にコーヒー業界に起こること 今後のコーヒー屋の生き方
2020年も2か月半が過ぎ、そろそろカフェ業界にもいろいろな動きが見えてきました。
昨年末から新年にかけて、カフェの専門誌『CAFERES』などを筆頭に、さまざまなコンサルの方がコーヒー業界、ひいては飲食業界の流れを予測していましたが、そろそろ確定してきた動きも出てきています。
そこで、改めてこのタイミングで2020年のコーヒー業界がどう動くかを3つのポイントでご紹介しつつ、弊社として今後バリスタになにが求められるだろうかと考えていきたいと思います。
1. コーヒー器具の市場価格が上がる
まず、確定していることとして一般向けコーヒー器具の市場価格が上がります。
ここで言う"市場価格"とは上代や定価のことではありません。amazonや楽天などオンラインに流通しているコーヒー器具の価格の話です。
先日某コーヒー器具メーカーの担当者の方とお話ししましたが、コーヒー器具を家電屋にあまり卸さない方向へ舵を切ることが決まったそうです。
理由は家電屋が無茶な値付けをし、オンラインで販売をするから。
なかには、コーヒー屋がメーカー、もしくはその代理店から購入する卸価格よりも安く掲載していたショップもあったとか。
コーヒー屋はコーヒー器具を販売することでしか商売できませんが、家電屋はコーヒー器具をフックにして、ほかの商品を売ることもできます。そうした流れが数年続き、コーヒー屋がそういったメーカー以外の商品を売るようになり、メーカー側も危機感を持ってきたというわけです。
一般消費者にとっては厳しいニュースかもしれませんが、メーカーも苦渋の決断だったと思います。
一社はすでにそのような方針を立ち上げていますが、少なくとも、今後どのメーカーでも似たような流れは起きてくるでしょう。
2. 自動化がますます進む
コーヒーの自動化については、ベアポンドなどすでにさまざまな有名店、有名バリスタが触れていますので、目新しいというほどのものではありません。
間違いなく、コーヒーは今後抽出の自動化の流れが加速していきます。
先日、名古屋の有名ロースターであるcoffee Kajitaが姉妹店を出しましたが、そちらもブリュワーは全自動。福岡の豆香洞などの有名店も二店舗目にはいっているエスプレッソマシンは全自動です。
ただ、それでもバリスタが作るような滑らかなミルクフォームは数百万円もするかなりの高級マシンでしか再現できなかったため、ある意味で言えばバリスタの最後の砦と言えたかもしれません。
ですが、先日弊社のツイッターアカウントでもご紹介した2020年日本上陸のこちらのMS-130Tを見て、「ついにここまできたか」と感じました。
そこらのバリスタが作れる程度のミルクならば、このマシン一台あれば誰でも提供できるようになったのです。
しかも、上代は55,000円(税別)。同じクオリティのミルクを作ろうと思えば、セミオートのマシンだと上代30万弱ぐらいのマシンが必要です。
もちろん、上手いバリスタには質的に敵いませんし、トップクラスのマシンを使った綺麗なミルクにもかないません。
ですが、チェーン店の自称バリスタでも本物のバリスタに近いクオリティのミルクがたった数万円で作れるようになったのは脅威です。
エスプレッソの抽出性能が上がってはいたものの、これまでは全自動マシンとバリスタの間にはスチームミルクという明らかな"差"がありました。
ですが、ミルクスチーマーの登場で、全自動マシン+MS-130Tでプロのバリスタと遜色ないカフェラテを素人でも作れるようになったのです。
これを朗報と捉えるか悲報と捉えるかは人によるでしょうが、2020年は間違いなく、日本のバリスタにとっての転機となる年と言えるでしょう。
3. 飲食店の淘汰が加速する
そして、最後のは間違いなく悲報と言えること。これも耳タコになるぐらい色んな方が触れていたのですが、飲食店の淘汰が加速します。
もともと、昨年末のNコーヒーの破産を機に、ここ数年でその流れが進むだろうと言われていましたが、今年の新型コロナがその流れを加速させました。
弊社でも、複数の法人セミナー案件が中止になり、個人セミナーも相次いでキャンセル、カフェも売上の影響を受けています。若者がメインターゲットのお店や豆売りがメインのお店は売上が増えたりといった動きも一部あるようですが、やはり例外は例外。
コーヒー屋にとって秋〜春は稼ぎどき。その稼ぎどきに、こういったトラブルが起きるとなかなか辛いというのが実情です。
先行きの見えない状況で、今後も営業を続けていくべきかと悩んでいる方がお店を閉める方向に動くのも無理はありません。
「なんとなく立ち寄る」お客様は間違いなく減りますので、これまで以上に明確に「ウチを目指していらっしゃる」ようコンセプトやターゲティングがはっきりしたお店だけが生き残ることになるでしょう。
ちなみに、これに関連してUBER EATSなどの配達サービスの浸透が加速するだろうと予測している方もいらっしゃいます。
バリスタとして生き残るために
さて、コーヒー器具が安売りされないなど、一部コーヒー屋にとっては悪くないニュースもあるものの、「自動化によって平均レベルが上がる」「飲食店の淘汰が加速する」と総合的に見れば2020年はコーヒー屋にとって厳しい年となるでしょう。
ただ、何度か触れてきたように、この流れはすでに数年前から予測されてきたものですし、弊社でも同じように"近いうちにこのような流れは起きるだろう"と感じていました。
ですので、弊社スタッフにも今後コーヒー屋として生き残るには、最低限スキルアップと、将来この業界でどのように生きていくかのビジョンの明確化が必要だと何度も伝えてきました。
スキルアップとは、もちろんコーヒーを抽出することもそうですが、1つはサービスの強化です。
スタバでは、必ずお客様に一言お声がけすることがスタッフ教育でされる店舗があるそうですが、似たようなものです。もちろん、そういったサービスがすべての人にとって素晴らしいものかは分かりません。
ですが、少なくとも、私は飲食店を利用するときにお店の方にお声がけいただくことは嬉しいですし、またそのお店に来ようと思うきっかけになります。
スペシャルティコーヒーやサードウェーブの登場など、「美味しいコーヒーを抽出すること」がバリスタのスキルだとクローズアップされてきたここ数年、改めて本来のサービス業としてのバリスタの側面がまた差別化要因になるのではないかなと考えています。
また、サービスや抽出技術に加え、知識も今後より重要性を発揮するでしょう。
いくらコーヒー器具の安売り競争がなくなったからといって、その知識がないままでは品揃えやポイントなどで家電量販店に負けるのは明らか。
コーヒー豆も、スペシャルティコーヒーの普及率が数年前の5%から11%になったり、コンビニやスーパーでもスペシャルティコーヒー豆を販売するようになったりと、そこそこ美味しいコーヒーを飲むだけならどこでもできるようになってきました。
ただ、豆を並べて販売しているだけなら、わざわざコーヒー屋にいく必要がなくなったのです。
焙煎からの保存環境に関する知識、豆自体の知識、お客様の好みに合ったコーヒー豆を提供する知識と、今後コーヒーの知識はダイレクトに売り上げにつながることでしょう。
生き残りが厳しい時代だからこそ、コーヒー屋同士でも密に連携をとって、知識や技術の共有をし、共同でレベルアップをしていくことも今後必要ではないかなと考えています。
コーヒースタンドから喫茶店へ
また、これも最近言われていますが、いわゆるコーヒースタンドやコーヒー専門店的なお店自体はその数を減らす可能性があります。
スペシャルティコーヒーの普及に伴い、どこでも美味しいコーヒーが飲めるようになった結果、コーヒーだけで差別化するのが難しくなってきたからです。
世間的にも日本の喫茶史的にもコーヒーそのものは政治や娯楽、食事のサブ的な立場にいることがほとんどでした。
そこそこ美味しいコーヒーが"普通"に普及してきたからこそ、◯◯+コーヒーがクローズアップされることが増えてくるでしょう。
実際、最近では名古屋のシヤチルなど「グランド喫茶」と呼ばれる"喫茶店より食事もコーヒーもスイーツもワンランク上"を目指した喫茶店が注目を集めています。
派手なものでなくてもかまいません。ですが、こだわりの〇〇と言えるものをコーヒー以外にも持つことが求められる時代がすぐそこまで来ているように感じます。
名古屋市千種区でコーヒーセミナー運営、コーヒー豆・器具の卸売り、直営カフェを運営するnote合同会社の公式コラムです。