【識者の眼】「成長と分配のためのイノベーションを期待する」神野正博
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
Web医事新報登録日: 2021-09-29
日本という国は、話題作りに事欠かない。これというのも、朝早くから夜遅くまでワイドショーとワイドショー化したニュース番組の連続だからだ。そして、コメンテーターとして新たに「有名人」となった、あるいはなろうとしている御仁があえて極論を発する。コロナ禍においても、たくさんの「専門家有名人」を続々と輩出した。
コロナが下火になると同時に、話題の中心は自由民主党総裁選であった。激戦の末、29日に岸田文雄氏に決まるまで、毎日毎日、マスコミはこれぞとばかり、ありとあらゆる政策で○か×かといった選択を強いた。
本誌9月25日号、No.5083の「各候補の医療関心度は?」といった記事を参照し、改めて岸田文雄氏の医療政策を予想していただきたい。コロナ対策を中心とする医療政策以上に、わが国のこれからに対する関心事は、「分配」か「成長」かだろう。どちらも対になることは言うまでもないが、その順序はいろいろだ。どちらを先行していくか。新総理の現実的施策の行方をウオッチしたい。
私見だが、分配を先行しても成長につながる消費にはつながらない。なぜならば、将来の不安がある限り人は貯蓄に回す。社会保障として分配しても現物給付である限り同じだ。
ならば、成長戦略に期待したい。特に2025年以降、急速に進む生産年齢の減少を踏まえ、いかに分配の原資となる成長戦略を目論むかが重要だ。その成長を将来への借金を前提とした公共投資に頼るのか、増える社会保障費にメスを入れるのか、それとも新たなイノベーションを引き起こすのかが問われてくる。
人口減の中で、女性、シニアが活躍し、障がい者や外国人と共生した社会としなければならない。そのためには、多様な働き方を受け入れ、健康経営を行いながら生産性を向上させる仕組みの構築が必須だろう。そこにこそ、イノベーションとしてのデジタルトランスフォーメーション(DX)の1丁目1番地があるに違いない。
またDXを推進させるためにも、医療におけるがんじがらめの人員基準などと決別し、思い切って結果にコミットしたことを担保とした構造改革が必須であろう。新総理には、過去にとらわれないイノベーションを期待したい。
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