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【識者の眼】「第6波の感染者の疫学的特徴はどうなるのか?〜海外の状況から学ぶ〜」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-09-29

第6波がどういう疫学的特徴になるかによって、医療や保健所の体制整備の力の入れ方は変わってくる。筆者は6月7日の記事で40〜64歳の重症例の増加が想定され、病床の逼迫は十分に起こりえると指摘したように、ある程度の想定は可能である。海外の事例は学びが多く、特に英国とシンガポールのデータは定期的に確認している。

英国では、接種者が増えるにつれて、日常生活においての緩和も進んでいるようだ。感染者の数でみると人口あたり最も感染者の多い年代は20代、次いで10代となっている。特に教育機関でのクラスターの割合がこの数週間は増加している。成人においては接種をした人も多くの人が感染している。また65歳以上、特に85歳以上のICU入院がこの週数は増えているのも気になる。未成年の感染が目立つようになることは今後日本でも想定が必要である。中高や大学は今後感染の広がりの場になるかもしれない。

シンガポールもワクチン接種が進んだものの、感染が再拡大中である。12〜69歳までの接種を完了した人は自宅療養としている。これらの人は重症化する可能性が低く、病院で治療を受ける必要はない、とまでしている。自宅療養には、その他の重篤な疾患がないこと、世帯員に80歳以上、または何かあった時に支援が必要とされる社会的弱者とされる方がいないことと条件はつけている。

我が国においても、第6波は、接種者が増加する中において、発生届などで接種歴を早めに把握することで自宅療養などに振り分けができる体制を作れないか。そして、接種歴のない人や高齢者を中心に対応するなどして効率化はできないか。

こうした方向にするためにも、この間に、ワクチン接種者の割合をどれだけ高くできるかが冬の医療のあり方にも関わってくる。自治体でも年代別の接種者の割合などを示すようになったが、市民にもっと訴えて、多くの方が接種することはとても良いことだ、という動きはとれないか。ワクチン接種については「個人情報だ」「同調圧力だ」「差別はだめだ」という指摘に異論はないのだが、日常の話題にもう少しできないものだろうか。

最後に、外務省海外安全情報配信サービス「たびレジ」に登録すると現地から定期的に状況や政府からの情報が日本語で送られてくる。渡航予定がない場合での登録も可能である。国によってコロナに関する情報量には差があるが、時に有用である。

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