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【識者の眼】「これからのこども政策について」小橋孝介

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)
Web医事新報登録日: 2021-12-08

2021年9月から5回にわたって開催された政府の「こども政策の推進に係る有識者会議」の報告書が11月29日公表された。こども庁創設を念頭に、こどもの置かれている現状と課題、求められる対応が幅広くまとめられている【1】。

報告書では、これからのこども政策の基本理念として、以下の6つを挙げている。①こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策立案、②すべてのこどもの健やかな成長、well-beingの向上、③誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援、④こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年度の壁、年齢の壁を克服した切れ目のない包括的な支援、⑤待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換、⑥データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)。

こどもを中心にこどもの視点で考えることは基本理念の①で述べられているが、児童虐待は、日本の法律においてこどもを中心に定義されていない現実がある。児童虐待の防止等に関する法律で定義されている“児童虐待”は「保護者がその監護する児童について行う」行為として保護者を中心に定義されている。このため、たとえば、きょうだいからの性被害は性虐待ではなく、保護者の「ネグレクト」として児童相談所では扱うというねじれが生じている。チャイルドファーストをキーワードに現場で実際にこども虐待に向き合っている立場からすると、大きな違和感を感じる。

児童福祉法は2016年に改正され、こどもを中心とする、こどもの権利条約の精神に則ることが明記された。今後のこども政策の中で児童虐待の法的定義もこどもを中心に再定義していってもらいたい。

【文献】
1)内閣府:こども政策の推進に係る有識者会議報告書.

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