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【書評リレーマラソン】『解剖から理解する頚椎診療』

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2023年7月発売の 『解剖から理解する頚椎診療』(編著:遠藤健司・三原久範) について、頚椎診療のトップランナーに読んでいただき、それぞれの視点から感想と、「私の頚椎診療」とい… もっと読む
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【書評リレーマラソン⑥】『解剖から理解する頚椎診療』―臨床現場ですぐに役立つ情報が満載

【書評リレーマラソン⑥】『解剖から理解する頚椎診療』―臨床現場ですぐに役立つ情報が満載


本書を読んで本書の2人の編者の先生は,2008年に第4回日本脊椎脊髄病学会トラベリングフェローシップにご選出され,2週間の海外研修をともに経験された旧友です。日本の脊椎脊髄外科医がお互いを最も深く知り得るチャンスのひとつがこのトラベリングフェローシップです。私も第5回に和歌山県立医科大学の中川幸洋教授と参加させて頂き,中川先生とは今でも良き旧友です。頚椎疾患の診療と研究に尽力され,かつ息の合った

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【書評リレーマラソン⑤】『解剖から理解する頚椎診療』―臨床経験と解剖に基づいた自身の考えで頚椎臨床に真摯に立ち向かう姿勢に共感

【書評リレーマラソン⑤】『解剖から理解する頚椎診療』―臨床経験と解剖に基づいた自身の考えで頚椎臨床に真摯に立ち向かう姿勢に共感


本書を読んで頚椎分野では,わが国(特に整形外科)は神経症候学の面で非常に優れた業績と歴史を持ち世界をリードしてきた。手術手技的にも,神経根症に関してはわが国独自の発想に基づく手技はあまりないが,脊髄症に関しては特に長大なOPLLに対する前方除圧固定(浮上術を含む)の開発・実績に代表されるように,他国の追随を許さないほどの高レベルの手技も実践されてきた。

一方,頚椎変形に関する知識と治療技術は,

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【書評リレーマラソン④】『解剖から理解する頚椎診療』―類書との違いは少数執筆者による統一感

【書評リレーマラソン④】『解剖から理解する頚椎診療』―類書との違いは少数執筆者による統一感


本書を読んで本書を通読して第一に感じた類書との違いは少数の執筆者によって執筆されたことによる統一感でした。本書では執筆者が多い場合にありがちな非統一性や重複が極力排除され,統一感のある構成になっており,編者らの企画力が反映されていると思います。教科書的記載の域にとどまらず,執筆者らの実際の診断・手術経験に基づく記載には,なるほどと思わされる部分が随所にあり,大変参考になります。

上位頚髄に存在

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【書評リレーマラソン③】『解剖から理解する頚椎診療』―脊椎バカにも必携の書

【書評リレーマラソン③】『解剖から理解する頚椎診療』―脊椎バカにも必携の書


本書を読んで本書は,頚椎に特化した今までにないユニークな教科書である。通常こうした書籍は多くの著者が分担で各章を執筆するため,既にある程度エビデンスが確立された知見の網羅的・表面的記述に陥り易い。
一方,本書は経験豊かな二人の脊椎外科専門医がすべての章に著者として関わっており,内容に一本のしっかりとした芯が通っている。多くの章でカラフルなイラストを多用して頚椎の解剖や生体工学に基づく病態の解説や

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【書評リレーマラソン②】『解剖から理解する頚椎診療』―独自の考えを盛り込みながら,攻めの姿勢を崩していない魅力的な書

【書評リレーマラソン②】『解剖から理解する頚椎診療』―独自の考えを盛り込みながら,攻めの姿勢を崩していない魅力的な書


本書を読んで本書は,これから頚椎診療を始める若手医師だけでなく, 経験豊富なシニア医師にとっても有益な成書である。

頚椎の成書というと,手術手技や術式選択,適応,周術期の注意など,難しいとされる手術を中心に詳述されていることが多い。本書にも,頚椎手術についての最近の知見を含む多くの情報がわかりやすく掲載されているので,頚椎外科に意欲的な若手脊椎外科医にとって有意義な書となっている。

ただ,そ

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【書評リレーマラソン】『解剖から理解する頚椎診療』―教科書でありながら、時の経つのを忘れて読破してしまう、1冊の文学書である

【書評リレーマラソン】『解剖から理解する頚椎診療』―教科書でありながら、時の経つのを忘れて読破してしまう、1冊の文学書である


本書を読んで本書は,遠藤健司先生,三原久範先生が日本脊椎脊髄病学会のアジアトラベリングフェローで意気投合し,2012年に共著で『頚椎診療のてびき』を出版したことに端を発しています。その11年後に,最近の疾患概念,診断方法,治療法の変化を盛り込んで,満を持して発刊されたのが本書です。

両先生とは昔から懇意にさせて頂いておりますが,研究や手術に対する熱い思い,さらに,考え方の一貫性は,世界でも随一

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