見出し画像

人生の質について意識させてくれる本

 会社のセミナーに出席した際に、全体向けに上司が紹介していた本です。別に仕事に対して悩みを抱えたりしていたわけではないですが、そういう時に見るこの題名が、何だか興味深く感じられたので読んでみました。
 今回から5分で読める!を目標に読了記事を作っていきます!

概要

 田坂広志『なぜ、働くのか -生死を見据えた「仕事の思想」』(2007年)

 なぜ働くのかという、誰もが考えたことがある簡単な問いについて、ひとの生死まで視野を広げ、壮大な観点からその意味を問う面白い本です。

 著者は、働くときには「思想」が最も大切だとし、その仕事における思想について「3つの観点」から見つめることで深めることができると述べます。


要約

 まず「死生観」。人は生死の体験から揺らぐことのない「覚悟」と「思想」をつかみ取ることができ、それを若いうちから持つことによって精神が成熟するといいます。
 死の淵に際したときにそれらが生まれるといいますが、戦争などもなく平和に過ごしている日本でそのような死生観を得ることは容易ではありません。著者は『想像力の極みで死と対峙する』ことでそれらは磨かれるといいます。具体的には戦争体験の手記や生死について取り上げた文学を読んでみるといいようです。
 人はいつ死ぬかわからないからこそ、どのように生きるのかという思想を持つことが大切です。

 次に「世界観」。日本に住んでいる私たちは恵まれているという事実を受け入れ、それを幸運だと思わずに感謝することが重要です。これを著者は恵まれた人間の使命だとしています。
 天台宗の祖である最長の言葉に「一隅を照らす これ国の宝なり」という一文がありますが、これは「世界の一隅にいながらもその世界全体を照らすような生活をする人こそが国の宝である」としています。仕事に対しても心を込めて取り組むことで、たとえそれが小さな作業であったとしても大きな世界を観ることにつながるのだそうです。

 最後に「歴史観」。歴史について、人類の歴史のみに捉われるのではなく、人類という枠組みを超えた人間を超えたスケールで歴史を見つめることで大きな視野を得ることができるといいます。

 これら3つの思想を「現実に流されないための錨」として深く、揺らぎないものを持つことによって「なんのために働くのか」、「なぜ働くのか」といった生きている中で必ず流れてくる悩みや不満に流されないようにすることが大事だそうです。

感想

 私にはまだわかりきらないような話もあって、すべてを理解できてはいないのですが、この本を読んで私が思ったことは2つあります。

 1つは「死を意識することの難しさ」です。私はまだ社会人2年目で定年とか還暦とか、人生の節目なんていわれるものまで40年くらいあるのですが、そんな中で死を意識するというのは容易ではないでしょう。日々の運動不足や不摂生な生活からの身体的な衰えは感じるかもしれませんが、さすがに死ぬほどでもないと感じます。
 そんな中でいつ死ぬかもわからないという気持ちで毎日を生きろと言われても難しいし、著者が言うように生死について書かれた文学を見ても正直それだけで覚悟を持つのが難しい。
 でも死を意識、つまりは終わりを意識しながら仕事をすることはすごく重要に思えます。これが終わったら今日は友達と飲み会だ!とか、彼女とデートだ!となったら、待ち合わせの時間に間に合うように仕事を終わらせようと努力すると思います。膨大な量の仕事に漫然と取り掛かるのではなく、昼までにここまでは終わらせるという明確な目標を立てることによって、自分の仕事のモチベーションにもつながるし、サボってしまって目標に到達しなかったときなども反省点がはっきりするので次回に活かせるわけです。

 もう1つは「視野を広げることの重要性」です。
 昨今テレビやSNSを見ていると、悲観的で中傷的な文言が多く感じます。実際は多いわけではないのかもしれませんが、そういった文言はふと視界に入るだけでも強烈に記憶に残り、しかも見た人を不快にさせます。そしてそんな言葉が世界中にあふれているのだと思い込んで絶望し、この国はダメだとか、世界は全く幸せじゃないんだなというように感じてしまうわけです。
 しかしそれは世界の一部分で、その部分だけを見て世界に絶望してしまうのはまだ早いんじゃないかなと私は思います。著者の「私たちは恵まれている」という言葉の中には、こうした不幸な世界に生きている人たちを救出するという意味合いもあるのではないかなと思います。

 まだまだ私の中の思想を「現実に流されないための錨」とするまでには至りませんが、この「なぜ働くのか」という著書の表題への問いを常に持ち続けていることで、なんとなくお金をもらうために惰性でこなしている仕事についても、大きな意味を見出すことができるかもしれません。この本を読んで仕事の質についてよく考えられるようになると思います。

Hako 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?