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The important things that make up me



お酒の風景が好きでわたしはお酒を飲んでいる。

両親は必ず晩酌をしていて、母はおつまみにかなり力を入れていた。大トロ、毛蟹、雲丹、ツブ貝、ハマチ、キンキの煮付け。そしてキリンラガー。私が寝たあとはウイスキーかブランデー。

晩酌の風景は子供から見て羨ましかった。早朝から働く両親は早ければ3時半には帰ってくる。子供にはもったいない大人のおつまみを食べながらビールを飲んで寛ぎ、父は釣りの仕掛けを作り、母も飲みながら子供たちの分の食事を作る。その姿は幸せなものだった。

お酒を飲み続ける以上、嫌な思い出もないわけではないが、それを上回るほどに、お酒が好きだ。たぶん好きすぎる。

嗅覚で記憶が蘇るのと同じく、お酒は情景を思い起こさせる。

ずっとワインか日本酒を飲んでいたが、あるときウイスキーを勧められて、いやいや、そんな度数が高いものはいかがなものか、と言ったが一口飲んでみてわたしの世界は変わった。


銘柄はわからないがたぶんスコッチだっただろうと思う、ロックグラスで丸氷で、薄暗い中にバックバーの仄かなかがやき。

ひとくち呑んだ瞬間、すべての輪郭がくっきりした。

スツールから立ち上がってみた。いきなり度数の高いものを飲んでふらふらになってしまうかも、と思って。

それなのに、わたしの世界ははっきりきれいに見えてそれまでの視界とは明らかに違った。

お店も並べられた無数のお酒もお店の人も隣の人もバックバーのミラーに映る自分ですらも、美しく見えた。


誰にも共感されたことがないが(医者には有り得ないといわれた)視力が上がるのだ。もともと1.5とかあるのだが3くらいにはなる気がする。

洋酒で40度以上のお酒を飲むと例外なく、見える。

血管の、収縮および拡張で、一時的に視力が上がるというようなことなのだろう。

要するにわたしには洋酒が体にあっている。風邪もひかないし二日酔いにもならない。健康診断もすべてAである。


(ほぼ)毎日ウイスキーを飲む生活は10年以上は続いている。

現在は自宅待機なので17時から飲みはじめるとするとボトル半分から1本くらい飲む。休みだと朝8時から飲む。何かを口にするとき、それをおつまみにしなくてどうする欲がすごい。

そして次の朝はふつうに5時から6時に起きて1時間運動しお風呂に入って朝ごはんを食べる。(休日は+ウイスキー)

5-6年前まではたまに二日酔いがあったが今は全くない。二日酔いになる人は、良いお酒(決して高価なものというわけではない)を飲むのがよいです。混ざってないものにしましょう。


わたしには合っているお酒だが、個人差があまりにあるのでお薦めはしない。

お酒を無理やり飲ませる人は大嫌いだ。ほとんどのお酒はとてつもない労力を使って作られている。粗末に扱って良いものではない。お酒はお酒を愛する人が飲むものでなくてはならない。

黙って味わうのも好きだし、飲んで騒ぐのも好きだし、ひとりで飲むのも好きだし、好きな人とふたりで飲むのも好きだし、大勢で飲むのも好きだし、知らない人と飲むのも好きだ。

その好きな風景が遠のくとは夢にも思わなかったが、いまそれが自由にできないので、黙々とウイスキーを飲んでいる日々だ。酒量は確実に増え、買いに行くのも面倒なのでストックを用意するとそれはそれで安心して飲み過ぎてしまう。

酒量が多すぎるくらいで、他は健康的に暮らしているが、ふだんお酒で交友関係を築いてきたわたしはとても寂しい。寂しいとお酒がすすむ。

寂しさに浸って飲むお酒だって美味しい。

でも今は寂しくないお酒が飲みたい。

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