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「千葉県・船橋チーム」フィードバックセッション

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局です。

「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、未来につながる食の循環をみんなでつくることをミッションに、食べられるのに使われていない(=未利用)資源を使って商品を開発する「未利用魚活用プラットフォーム」を立ち上げています。 

前回1月に行われた船橋プロジェクトの初回セッションは、T会員3名の方、プロジェクトを率いている海光物産さんと漁師の皆さま、食品メーカーとして商品の製造をしていただくエスエスフードさん、商品の販売をいただくこだわりやの藤田さんと共に、江戸前(東京湾)漁業の変遷や、東京湾でとれる魚種の減少、工業地帯のマイナスイメージを持たれてしまう漁港の現状など船橋の漁業の課題などを通じて、「江戸前漁業の魅力と課題」を共有し合い、「未利用魚コノシロでつくられる商品を通じて伝えたいエシカルな価値は何か?」を対話しました。 

コノシロの美味しさそのものが十分に魅力的な価値であることから、この商品を通じて「低・未利用魚の存在」を知っていただくことで海や江戸前漁業の課題を伝えていけるのではないか、また海光物産さんの持続可能な漁業に対する取り組みをもっと伝えていけたらいいのではないか、などいろんな観点をいただいたセッションでした。 

それを踏まえて海光物産さんと漁師の皆さま、エスエスフードさん、こだわりやさんで試行錯誤して出来上がった試作品を全員で食しながら、商品の開発ストーリー(想い)を共有し、ラボメンバーであるT会員のみなさまの「エシカルな生活者」の観点から共感するポイントをフィードバックしていきます。 

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●開催場所
CCCMKホールディングス本社 

●参加者
海光物産株式会社 宗形さん、中村さん
株式会社こだわりや 藤田さん、木村さん
株式会社エスエスフードインターナショナル 大谷さん、松村さん
一般社団法人Chefs for the Blue 佐々木さん
3名のT会員
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局メンバー
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1. 試作品の開発ストーリー

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前回のセッション振り返りを終えて、海光物産さん、エスエスフードさん、こだわりやさんが試行錯誤してつくられた試作品「コノシロの煮付け」の開発に込められた想いや、想定する喫食シーンについてお伺いします。

 ◯宗形さん
コノシロは低利用魚の部類ですが、食べてみると美味しいのに業界の慣例もあり食用に向かないということで二束三文になってしまいます。今回はとても美味しく作っていただきましたが、だからと言って安くしたくはないので、漁業者さんにちゃんとお支払いできることが重要だと思っています。 

またこの商品を通じてお伝えしたいのは、海の現状でそこから汲み取ってもらえたらいいと思っています。先ほどこだわりやさんからお話ありましたが、「顔が見える野菜」とは言えても、「顔が見える魚」って難しいんですよね。産地も、水揚げされた漁港で決まります。例えばカツオも高知から北上して千葉の勝浦で水揚げされれば勝浦産。さらに仙台で水揚げされれば宮城産になります。我々の場合、船橋港で水揚げされても、表記義務は千葉県産となってしまいその辺りは難しいです。
漁港は漁協組合が浜で競りをして中央に流れていくシステムなんですが、船橋は特殊で、浜競りがなく、我々のような問屋が漁業者さんの魚をお預かりして流通させていますので、より明確に自由にできるのが特徴ではあります。 

◯佐々木さん
補足ですが一般的な漁港はいろんな漁業者が水揚げした魚を、競りや入札で仲買が買い付けてまとめて流通に流すのですが、その時点で既に誰がとったかの名札が消えてしまいます。
さらに、豊洲に入ったときには、漁港の名前もわからないことがあるので物凄くトレースが難しい商材ですが千葉船橋は特殊な漁港なので、トレースしやすいのです。 

◯藤田さん
この商品は皆さんの思いが詰まったとても価値がある商品だと思っています。
社内でも色々考えて、具体的にこの商品のどんなところが未来に繋がる良いところなのかを5つ挙げてみました。
①     海を持続可能にする適正な価格(漁港、漁師たちを守ることができる)
②     なんといっても江戸前、地産地消(鮮度抜群の状態で加工)
③     栄養価が高い(カルシウムやリンの吸収を助け、骨の形成を促す動きがあるビタミンDが多い)
④     余すことなく骨まで食べられる(フードロスにもつながる)
⑤     漁師さんの顔が見える魚(作り手の顔が見える安心感)
 

そして、コノシロ(鰶)は魚へんに、祭りと書くようですごくいい字だなと思いました。 

また喫食シーンですが、魚を食べたい、カルシウムを摂りたい、子供に食べさせたい、もう1品のおかず、お酒のおつまみなど、シーンを特定することなく、日常の中で食べてもらいたいです。
食べ方の提案は、ご飯にかけて、スパイスをかけて、卵やお野菜と煮てなどいろいろアイデアはあります。 

それから使用している調味料ですが、お醤油は、千葉醤油(1850年代創業の伝統ある醸造蔵で大豆、小麦、塩のみ使用)さん、純米酒・本味醂は、岐阜県の白扇酒造(江戸時代創業の地元を大切に地元のお米で時間と手間をかけて作られたもの)さん、生姜は千葉県産と至ってシンプルな調味料です。
私たちはこだわった調味料というよりは、シンプルな調味料や伝統的な調味料を大切にしています。お酒やみりんは、腐敗防止目的の醸造アルコールも不使用のものです。 

◯大谷さん
こだわりやさんの基準にあった調味料を選ぶ上で、色々勉強させてもらいました。今日は出席していませんが、開発担当は「調味料がいいものなのでそれを活かしたい」とのことで、今回水とお酒は贅沢に同割で使用しています。普通お酒は高いのでそんなに使用しませんがそうすることで旨味が出やすくなっています。使用した日本酒は飲んでもコクがあり美味しい白扇酒造さんのもので、贅沢なつくりになっています。 

◯松村さん
先ほど売り場での提案の仕方について藤田さんからお話がありましたが、このプロジェクト参加前までは冷凍食品メーカーなので、常温の魚商品はありませんでした。常温のお魚というと高齢の方がご飯と一緒に食べるイメージなのですが、若い人も含め幅広く食べてもらうには?と思ったときに、洋風なども考えたのですが、自分達の強みは丸ごと骨を気にせず食べられる商品を作れるところなので、それを活かしたいなと思いました。コノシロも骨が多い魚ですがこの商品は丸ごと食べられるので、炊き立てのご飯やパスタ、ピザにのせて崩して和えるなど幅広く提案できると思っています。 

◯T会員 Sさん
コノシロの大きさは送っていただいたサイズが定番ですか? 

◯宗形さん
今回使用したのはナカズミと呼ばれるサイズで、小さくもなく大きくもないので利用価値が低く価格がつかないんです。シンコは幼魚で高値、その次はコハダでお寿司などに使われ、大きいと養殖魚など漁業用の飼料として使えます。 

◯T会員 Hさん
一般人はコノシロ、ナカズミなどを知りませんが、シンコ、コハダが大きくなった魚ということがわかると、さらに親近感がわくと思いました。なぜ美味しいのに、利用価値が低いのかが不思議です。八幡浜プロジェクトのアイゴでも同じように思いましたが、地元の方の固定観念もあるのでしょうか? 

◯宗形さん
実は静岡や大分ではコノシロ食べられていて、昔は大阪の押し寿司の原点もコノシロだったようです。
流通の慣例でそうなったのだと思います。 

◯松村さん
私は地元が船橋でしたが、コノシロを耳にしたことはなかったし、魚屋にもなかったので、なぜなのかは今でも不思議です。 

◯宗形さん
船橋は都市型漁業なので、船橋で水揚げされて、中央卸市場にその日のうちに出荷します。
例えば北海道の地域でとれた魚は、北海道でも食べる慣習がありますが、船橋はそこで食べるよりも、中央で売ったほうが高いですし、地方でも食べられています。
そもそも船橋は漁業が基幹産業ではないですし、船橋に港があること自体は知っていてもスズキとコノシロの水揚げが日本一であることは船橋市民も知らないと思います。 

2. 「コノシロの煮付け」試食

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クセがなく美味しいコノシロを、シンプルな調味料で素材を味付けし、骨ごと食べられるまで煮た「コノシロの煮付け」。海光物産さん、エスエスフードさん、こだわりやさんの想いが詰まったお話に期待感が高まったところで、試食タイムです。
エスエスフードさんに持参いただいた、具材がホカホカに温まる特別な容器で温めていただき、食欲がそそられるタレのいい香りがしてきたところで、そのままいただきます。

 ◯T会員 Hさん
骨がホロホロしていて、タレもとっても美味しいのでご飯にかけたり、余ったタレをカブなどの野菜で炊いたら美味しそうです。後はそのままパスタにあえてちょっとバターを乗せるとか。量的には1個だと主食には足りないので、2個くらい食べたいですね。 

◯T会員 Nさん
とっても美味しいです、開けた時の湯気からファンになるほどいい香りでした。
子供には1食分の主菜として十分な量ですね、大人には量が足りないので青菜系やブロッコリーなどの野菜を足したりしてシリコンレンジなどで一緒に温めて食べても良さそうです。 

◯T会員 Sさん
香りがとってもよく、あっさりしてて良い調味料を使っているからか変な後味もないです。
お弁当のご飯の間に挟んでおけば、そのまま持っていけそうなくらいタレがとっても美味しいですね。
余ったタレでもやし、千切りした人参、長ネギやきのこに和えるとか、紅葉おろし、柚子胡椒、七味などでアクセントをつけてもいいと思いました。 

◯佐々木さん
脂が少ないからか固まらないですね。山椒にも合いそう。煮魚なのにスッキリしてて若い方にも受け入れやすそうです。 

◯藤田さん
味醂を煮切っているので、さっぱり仕上がって素材が生かされているんだと思います。
 

良質でシンプルな調味料を使用したタレが大好評で、野菜との相性も良さそうということで、主菜としての食べ方や残ったタレの活用方法などの調理アイデアもたくさんいただきました。 

3. 商品コミュニケーションプラン

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ここからはたくさんのアピールポイントがある中から、現状考えている店頭でのメッセージ展開の想定を
共有いただき、どういう伝え方をされたら心が動くのか?を考えていきます。 

◯藤田さん
49店舗全店の店頭でコノシロや調味料などの原材料を訴求したPOPを置いて、冷ケースに加えて平台など、いろんなところで展開をする予定です。実施したいのはデモ販売で、漁師さんに店頭に立っていただいて、売ることを目的にするのではなく、この方がとった魚の商品ということで、海のことや商品への想いをお話いただける機会があると良いと思っています。インスタライブで配信も構想しています。
またオンラインでも販売していくので、特集ページも作ってコノシロやこのプロジェクトも紹介したいですね。後はFacebookでの情報発信を業界向け、ツイッターでは商品の製造工程を発信したりユーザーアンケートをしても良いかもしれません。 

◯T会員 Hさん
消費者としてコノシロに対して悪いイメージを持っていないので、ネガティブな訴求ではなく、新しく美味しいものが発見されました的なポジティブ発信だと、買いたくなると思います。
後シンコ、コハダは知っていますが、コノシロは知らないので、シンコ・コハダというキーワードが入っていると、どういう関係?と思い、知りたくなります。 

◯T会員 Nさん
私の行っているこだわりやさんは、平台は季節の商品が展開されていてよく目にするのであそこにあるといいなと思いますし、入口付近の導線上にPOPと合わせてわかりやすく置くのも目立つかなと思いました。POPについては、コノシロがどんな魚なのかわかるようなものが紹介されていたり、できれば試食もあると、どんな味なのかを知ることができるのでいいですね。 

◯T会員 Sさん
トレーサビリティができるということを売りにして、「大野さんが、いつ、何時にとって、、」みたいな超具体的なトレーサビリティを発信できるとすごくリアル、船橋ってそんなふうに魚とっているんだということも伝わる気がします。後は先ほど、とてもいい匂いだったので、お店でもあの匂いを体験できればそそられこと間違いなしです。 

◯宗形さん
実は*月*日*時にとったことは公表していてQRコードで見るとトレーサビリティできる仕組みを実験していたりしますが、鮮魚の場合、店頭で今朝とれたものでも、翌日になると鮮度が悪いイメージを持たれてしまったりと難しい部分もあります。あとポジティブな表現がいいというお話、正直海の現場はネガティブなイメージしかなくて、ドット柄がきれいと言われていましたが、逆にドットがだめという話になったりするので、嬉しく思ったと同時にこれは流通させてこなかったことでのギャップがあるんだなと感じました。 

◯中村さん
ほんと全く食べてこなかったですからね。もう先入観で小骨が多くて食べられないっていうイメージでしたが、仲間うちで桜の葉を巻いたコノシロの押し寿司を食べたら、すごく美味しかったんです。
そこで先入観がガラッと変わりました。 

◯宗形さん
弊社内では、サバ、イワシ、サンマのようにコノシロが受け容れられるのか?といつも話題になるのですが、今日のように消費者の方のコノシロが美味しかった!という声を届けたいですね。 

◯藤田さん
情報を知ることに積極的なお客様は個人的に農家さんのところに行かれたり、パッケージを見てメーカーさんにお電話される方もいらっしゃるので声をお届けできるかもしれません。 

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消費者の方にはコノシロをポジティブに発信し、漁師の方には美味しい!という消費者の生の声を届けることでコノシロの今後の広がりに繋がるのではないかと思います。 

最後に今日の感想をお聞きして本日は終わります。 

◯宗形さん
漁業者に消費者からの声(コノシロのおいしさ)をストレートに伝えたいと思います。 

◯松村さん
この商品以外にもコノシロの発信の手伝いができればと思っています。 

◯藤田さん
発売してからがスタートで、自分達の情報発信力が重要だし責任も感じますが美味しく作っていただいて、本当によかったです。それが何よりも大切です。 

◯大谷さん
皆さんの美味しいという言葉が嬉しかったです、後は価格面の工夫ですね。 

◯木村さん
これまで食べられなかったコノシロをどう売ったらいいのか、、と難しく考えていたのですが、難しいものを売るということではなく、美味しい魚を売るためにどうするかを考えた方が広がりがあると感じました。 

◯佐々木さん
皆さんの気持ちが一つになったからできた商品だと思い感動しました。イワシ、サバ、アジが日本の漁業生産量を支えてきましたが今は減っています。そんな中、足元の東京湾にコノシロが眠っていたということです。
価値が見出されていなかったからこそ乱獲されなかったコノシロを守りながら食べていければと思います。 

◯中村さん
美味しいというキーワードが非常に良かったです。木を見て森を見ずで、マイナスイメージがあって
コノシロとコハダを分けてきましたが、臭みもなく骨も気にならないので自分のイメージも向上しました。
また、これをきっかけにこだわりやさんが魚に注力されたり、エスエスフードさんは、持続可能な魚に取り組まれたりという循環も良いことだと感じました。 

◯T会員 Hさん
スーパーには常に魚が売られていて、いつでも食べられると思っていましたが知らないことがたくさんありました。アイゴもコノシロも美味しい魚なので商品化できるといいなと思います。 

◯T会員 Nさん
コノシロを食べてみて幸せな気持ちになれたので、ポジティブイメージを大事にしたいです。
漢字の「鰶」も、楽しそうで、ドットもお祭りっぽい、楽しいイメージですね。 

◯T会員 Sさん
美味しくて、使い勝手がいいなんてとても良いし、よく考えたら生で皮付きのまま食べるのコハダ・シンコそのものに両方ドットあるので、コノシロの柄も受け入れやすいです。どんどん盛り上げていければと思います。

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商品最終化に向け、引き続きブラッシュアップしていきます。

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