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作り手に会えば心は動く | エシカルフードインタビュー 藤田友紀子さん

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

今回は、ラボの活動に有識者として参画されている、株式会社こだわりやの藤田友紀子さんへのインタビューをお届けします。季節や旬を大切にし、環境保全型で生産された食品を提供するオーガニック食品の専門店「こだわりや」にて、長年バイヤーとして活躍されてきた藤田さんに、私たちがどのように「エシカルフード」に向き合うべきか、お話を伺いました。

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藤田 友紀子さん(株式会社こだわりや 専務取締役)
神奈川県出身。家業である池栄青果株式会社(こだわりや部門)に1995年入社、1999年株式会社こだわりや設立のため移籍。店長職を経験後、商品企画統括バイヤーとして20数年、加工食品全般の仕入れ、MD、フェア企画立案、全国の産地の商品発掘、共同商品開発等に携わっている。

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ー 藤田さんは、なぜこのラボに参画されたのでしょうか?

日本に住む人たちのために、国産の良いものを売っていきたい。これは、34年前の「こだわりや」創業当時から変わらない当社の思いです。私は創業者の娘なので、学生時代からそうした考え方が会話の中、生活の中に自然と浸透していました。ラボにも、そのような思いを持って参加しています。

仕事を始めてから27年経ちますが、「エシカル」という言葉が頻繁に出てくるようになったのは、ここ1〜2年のことだと思います。「エシカルフード」って一言ではなかなか説明できないですよね。シンプルに言ってしまえば「倫理」や「道徳」になるのかもしれませんが、それだけではない気がしています。いずれにせよ、人として、生産したり消費したりしながら生きていくにあたり、必要な考え方だと思っています。

微力ながら、「エシカルフード」についてみなさんと一緒に考え、伝えていきたいです。

ー 創業から34年間、こだわりの商品を販売してこられた中で、消費者の方々の意識に変化は感じていらっしゃいますか?

以前は、自分のため、子供のため、家族のためにいいものを買おうと考える方が多かったですね。それが今は、人のため、環境のため、というように変わってきたように思います。

お客様の年齢層も広がっています。以前はご年配の方が多かったのですが、若い方にもご利用いただけるようになってきました。良い食材を選ぶことは、環境のため、人のためでもありますが、やはり自分の身体のためでもありますよね。食べるもので自分の身体はできていますから、そうした意味でも食べものを見直す人が増えてきているな、と感じています。

世界を見ると、アメリカとヨーロッパは、まったく違うオーガニックの求め方をしていると感じます。アメリカと比べると、ヨーロッパって「地球のため」「環境のため」「動物のため」といった話や、「これをしたら地球がこうなる」みたいな話が多いんですよね。日本は、食品にしてもファッションにしても、アメリカで人気のものが流行りがちですが、最近はヨーロッパ的な考え方が特に若い女性を中心に入ってきていると思います。

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ー これから「エシカルフード」が選ばれていくために、どのようなことが必要だと思われますか?

教育だと思います。ヨーロッパでは、子供の頃から環境に関する教育をしっかり受けているそうです。日本では、今の小中学生は環境やSDGsについて学んでいますが、20代以上の人はほとんど環境教育を受けていないですよね。

日本では、新しいものを持つこと、安いものを買うことが美徳とされているところがあって、それが薄利多売、大量生産・大量消費、使い捨てなどにつながっています。ものを大切に扱うよう、それを変えていかないといけないと思っています。

消費者に行動変容を促すためには、消費者と接する人たちが情報を伝えていく必要があると、私たちは日々実感しています。教育を終えた人は、なかなか勉強する機会を持てないんですよね。そうなった時に、嘘か本当かわからないネットの知識を鵜呑みにするのではなく、現場で知っていくことが一番だと思います。私たちが、現場で伝える活動をすることによって、「エシカルフード」はもっと広がるのではないかと期待しています。

ー 「こだわりや」では、具体的にどのような取り組みをしていますか?

コロナ禍の前までは、社員を連れて生産現場を訪問したり、または生産者さんに来ていただいて商品のことを学んだりしていました。店舗のスタッフが、ただ品出しやレジ打ちをするのではなく、お客様とお話したり、商品や作り手さんのことなどの質問に答えたりしながら商品のよさを伝えられることが理想です。

生産者に会うとファンになるので、「こんな人がこういう風に作っていました」「こんなに環境に配慮しながら作っているんですよ」と伝えられるようになるんですよね。そうすると、お客さんも心が動いて、じゃあ応援する、食べてみたい、買ってみる、となるんです。そういった小さなアクションの積み重ねによって、エシカルな消費が少しずつ広がるのではないかと感じています。

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ー 藤田さんはこれまでたくさんの「エシカルフード」に出会ってこられたと思いますが、たとえばどのようなものがありますか?

様々な分野で素敵なものを作っている方がたくさんいらっしゃるので、一つだけ挙げるのがなかなか難しいのですが、たとえば、「ハイジとつくったたるいさんの有機緑茶」というお茶があります。浜松で何十年も有機栽培を続けている農家さんのお茶なのですが、環境にも動物にもやさしい作り方をしているんです。荒れた山を開墾して、農薬の飛散がない場所でお茶を有機栽培していて、やぎに草を食べてもらうことで除草しています。やぎの排泄物は肥料になるんですよ。最近は、包材にプラスチックを使うのもやめようと、環境に配慮したバイオマス素材の包材を使うようになりました。ティーバッグもバイオマスです。

生産者の想いがとてもきれいで、それを応援したいし、お客さんに伝えたい、飲んでほしいという気持ちに私たちもなるんです。買ってほしいというよりも、飲んで応援してほしいと思う商品です。

そういった商品は決して安いものではないので、高すぎると思われないように、しっかりストーリーを伝えることが私たちの仕事だと思っています。「有機栽培っていいことなんだな」というように、お客さんの心を動かせるような伝え方をして、いいものを広めるお手伝いをしたいんです。

適切な価格で販売するために必要なのは、商品の背景を伝えていくこと、ということでしょうか?

何も知らなければ、安いに越したことはないかもしれません。でも、安いのには訳があって、どこかにひずみが出ていたり、誰かが負担を感じていたりするんです。環境に負荷をかけていたり、事業を継続できないぐらいの薄利だったり。なぜ安いのか、理由を考えられるぐらいの知識や余裕があったらよいですが、それも難しいと思います。

悪いものを悪いというのは簡単ですが、私たちは逆に、素敵な取り組みをしている方々をもっと紹介していきたいと考えています。購買行動を100%変えられなくても、5回に1回、3回に1回ぐらい、「たまにはこっちを買ってみようかな」となるようなきっかけ作りができたらいいなと思うんです。

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ー 最後に、「エシカルフードアクション」を始めたい場合、何から取り組めばよいか教えてください。

作っている人に、ぜひ会ってください。生産現場に行ってみてください。

作っている人に会うと、すごく心が動くんですよね。本当に感激するんです。なんとかしなきゃいけないっていう気持ちが生まれたり、こういうことを応援したいとか、こうした方がいいよねなどと思うようになったり。

今は、各地でマルシェやワークショップが再開され、都内に来ている生産者もいます。素敵な商品に出会ったら、作っている人と会って話して、ぜひ生産現場まで行ってみてくださいね。

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