見出し画像

「愛媛県・八幡浜チーム」フィードバックセッション

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局です。

「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、未来につながる食の循環をみんなでつくることをミッションに、食べられるのに使われていない(=未利用)資源を使って商品を開発する「未利用魚活用プラットフォーム」を立ち上げています。 

昨年の12月には八幡浜プロジェクトの初回セッションを開催し、ラボメンバー4名の方とプロジェクトリーダーであるオーシャンドリームの松浦さん、信濃屋の岩崎さんと共に、八幡浜の土地や食文化を知り、漁業の課題などの現状も踏まえて、「八幡浜の魅力と課題」を共有し合い、「未利用魚アイゴでつくられる商品を通じて伝えたいエシカルな価値は何か?」を対話しました。 

アイゴは「実は美味しい魚」ということを知り、漁業に携わる方の中で適正な価格で取引されることが大切という考え方に共感し、加えて「八幡浜は夫婦仲がいい!」というお話もあり、「アイゴ」の「アイ」と「愛媛」の「愛」、食べる人・漁師や作り手の愛など、いろんな愛が詰まっている!ということで、未利用魚=使われていない魚というネガティブなイメージではなく、「愛」をテーマに楽しくポジティブなメッセージを発信するとよいのではないか?ということで皆さんの想いが一致したセッションでした。 

それを踏まえて今回は、松浦さんと岩崎さんが試行錯誤した試作品を全員で食しながら、商品の開発ストーリー(想い)を共有し、ラボメンバーであるT会員のみなさまの「エシカルな生活者」の観点から共感するポイントをフィードバックしていきます。 

================================================
●開催場所
CCCMKホールディングス本社 

●参加者
株式会社オーシャンドリーム 松浦さん
株式会社信濃屋食品 岩崎さん
一般社団法人Chefs for the Blue 佐々木さん
3名のT会員
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局メンバー
================================================

1. 試作品の開発ストーリー

================================================
前回のセッション振り返りを終えて、岩崎さん、松浦さんが試行錯誤してつくられた試作品「アイゴのオイル漬け」の開発に込められた想いについてお伺いします。

◯岩崎さん
食べて美味しい、食べ続けることができる、化学的なものは使わない安心なものがコンセプトです。
今回アイゴを使った商品開発ですが、開発の際にありがちな自分達の想いが強すぎて押し付けるようなことはしたくないと思っているので、食べてもらう人のことをどのくらい思えるか?どういう方に向けて発信していくか?が大切だと考えています。 

また商品自体は大人向けに作っていますが、ご飯にも合うし、お酒のおつまみでも合うような設定にして、愛媛県産のものも一部使用しています。例えば、日本の誇れる木桶醤油。愛媛県で創業100年以上の梶田醤油さんがつくられているお醤油です。お醤油って色々あるのですが、木桶醤油は、木の桶を使用し(釘もボンドも使わない)日本酒、酢、醤油、味噌などの循環を繰り返すことで桶に住み着いた天然の微生物や自然の力のみで発酵、醸造させたお醤油です。今の世の中、生産合理性でステンレスのようなものが使われていますが、それでは本来の微生物のおいしさや文化は失われていきます。
そういうことも含めて表現していきたい、環境を意識しながら未来の子供達へ文化を残していくようなことを集約した商品になっています。
あと、柑橘系が有名な八幡浜なのでアクセントとして大地の特徴である「みかんの皮」も詰め込んで色々な食感を感じられるようにしました。
それから松浦さんの魅力にも惹かれました。やはり最終的には人ですよね。その人の表現の仕方、考え方、行動、松浦さんは一緒にいてとても心地いい方なので、いろんな人を繋げていくことができたらと思います。 

◯松浦さん
私も岩崎さんに惹かれています(笑)愛媛県は「愛」が最初にくる県で、今の知事が、「愛媛県産には愛がある」ということを訴求しています。 

商品について今回アイゴを使用していますが、20年くらい前はアイゴも水揚げされていて、取扱量も多く、その頃は沖縄県に送っていたようです。ただ飛行機運賃が高く頓挫してしまって以降、トゲの加工処理が大変ということもあり、食べなくなっていきました。 

八幡浜市は西日本で最大級の港町で、200種類以上の魚があがる漁港なので、わざわざアイゴを使わないんですよね。正直、私自身も久々に食べたのですが、アイゴは肉厚で、青魚のカンパチやシマアジような食感と旨味もあり、びっくりしたんです。今日は皆さんの試食の感想を楽しみにしています。

2.  「アイゴのオイル漬け」試食

================================================
岩崎さんと松浦さんの大切にしている考え方や想いを共有いただいた後は、楽しみにしていた試食時間です。この「アイゴのオイル漬け」には、オリーブオイルとみかんの皮に加え、砕かれたナッツが入っています。この日はスライスしたバケットの上にアイゴをのせ、オイルもたっぷりかけていただきました。

◯T会員 Hさん
オイル、アイゴ、みかん、それぞれ単体で食べてみましたがみかんの皮との相性、アクセントが効いてすごく美味しいです。先ほどお伺いしたからかもしれませんが、お醤油の感じもしました、アイゴではなくても美味しいだろうな、、アイゴだから買いたいと思っていただかないといけないのでしょうか? 

◯岩崎さん
そうは思っていません。先ほどお話したように開発サイドで未利用魚をお客さんに押し付けてしまうことになってしまいます。色々な人の想いを伝えていかないと、未利用魚なら安いでしょとなってしまう循環にもなりかねないし、それはおかしいので、まず食べて美味しい、その上で実は、、と色々な要素を知っていくと、なんて素敵なの!ってなる、その循環をつくりたいですね。それには伝え方も重要なので、食べて、ラベルを見て、押し付けがましくせず、字ではなく雰囲気で理解してもらいたいなと。 

◯T会員 Sさん
見た目とは違ってマイルドな仕上げでギャップがありました。あと温めると香りが立って美味しいかもしれません。 

◯岩崎さん
当初、バーニャカウダ的な話もありました。食品ロスの観点でもそうですが、オイルは最後余ってもバッと使えるのでパスタやサラダにあえて綺麗に食べ切れるようにしています。

◯佐々木さん
うちのメンバーのお店で未利用魚、認証魚、資源管理されているお魚などを使っていることがありますが、そういうストーリーを伝えるとお客さまは喜ばれます。美味しく食べて、かつ環境や社会にいい還元ができるということで、余計に嬉しくなったり。もちろん押し付けは良くないですが、うまく伝えることで価値にり、同じ商品が並んでいたときに、手に取られると思います。 

◯岩崎さん
人は人を応援したい気持ちがありますよね。ヨーロッパの文化は環境を認めて応援する気概を持っていたり。日本人は消費者中心なので、有機食材は高いよね、となりますが、子供やこれからを考えるとどうか?商品を通じて考えてもらうことが重要ですよね。 

◯T会員 Nさん
道の駅とかで商品を手にしたときに、リーフレットとか置いてあると持ち帰って、食べながら読んだりします。帰ってからも旅行が続いているような感覚にもなるし背景とか知って自分で色々調べたり、人に紹介したりするときも便利です。 

◯T会員 Hさん
私もそうですね。そういう知識を人に教えたくなっちゃいます。 

◯T会員 Sさん
生産者さんと話せるのはいいですよね。そういう作り手さんの話を聞くと、消費者が偉くなってはいけないと思います。 

◯佐々木さん
少し話が変わって岩崎さんの消費者の意識の話に繋がりますが、4年ほど前スペインのバスクに行った時に、「カタクチイワシ」が減った話を聞いて、その地域の水産研究所で話を聞きに行ったことがあります。
ビスケー湾の「カタクチイワシ」は高価なアンチョビになるのですが、2004年には資源が減って獲れな作い状況になり、次の年から丸5年間完全禁漁になったんです。その地域の漁業者には補助金が出たのですが、加工業者さんには出なかったんです。じゃあどうするか?って、アドリア湾のカタクチイワシを輸入して商品を作ったのですが、思ったような味に仕上がらなかったようです。
そこでパッケージに「これはビスケー湾のカタクチイワシではありませんが、わたしたちはビスケー湾を守るために政府の考えを賛同します」というメッセージをつけて販売したら、消費者は全然違う味のアンチョビを買い支えたのです。なぜなら加工業者さんがいなくなってしまったら取り返しがつかないことを消費者が理解していたからです。その5年後に「カタクチイワシ」が戻ってきて、その漁業はMSC認証までとれたようです。そして、ビスケー湾の「カタクチイワシ」を使ったアンチョビがまた作れるようになりました。
漁業現場の取り組みは、サプライチェーン全体で支えないと成り立たないんですよね。 

環境を考えての利他なのか、水産業者さんがいなくなっている利己なのか、わからないけど、思いを引き出したのは、そのパッケージのメッセージだなと思いました。 

◯岩崎さん
日本の教育はそういう現状を知っていくことを知らないとダメですよね、フランスの味覚教育は、美味しい、甘いとかではなくて、自分の味覚を表現する、それは正解不正解ではなく。ものを主張し、感じて、考えることが重要ですよね。
 

「みんなの食プロジェクト」で、缶詰を作っているのですが、中身の「サバ」がとれなくて、「イワシ」に変わるんです。それでよくて、パッケージにはあえて波の絵の表現を入れました。消費者に向けて、「海の現状を知ろう」というような海の環境を理解してもらうためのメッセージです。 

◯佐々木さん
魚は天然のものなので、必ずこの魚をこの日何トンって都合よくあがるというのはあり得ないんですよね。「海に寄り添った消費の仕方」が必要です。そういうことを漁業者さんに押し付けてはいけないですし、最後割りを食うのは海です。 

3. 商品コミュニケーションプラン

================================================
消費者も生産者も対等のはずが、いつしか消費者が立場が上になってしまっているように感じます。
生産者の方と直接会話ができたりすると、様々な気づきもありますが、機会も多くないので先程のラベルの話のようなコミュニケーションの仕方もあるのかもしれません。
ここからは、現状考えている商品パッケージやメッセージ展開の想定を共有いただき、どういう伝え方をされたら心が動くのか?を考えていきます。 

◯岩崎さん
先ほどの食べながら読みたい。というお話、商品にカードのような何かをつけてもいいのかなと思いました。あと商品には「八幡浜」「アイゴ」という言葉を入れるべきかと思っています。
アイゴはほとんど皆さん知らないと思いますが、まず食べて美味しい、その後「アイゴ?ああ、未利用魚なのか」となってくれると嬉しいです。愛媛ではなく、「八幡浜」でがんばられている人達の想いがギュッと入るようにしたい、どうでしょうか?松浦さん。 

◯松浦さん
そうですね、「八幡浜」でとれた魚なので、愛媛ではなく、「八幡浜」を入れたいですね。消費者の人は「八幡浜ってどこ?」ってなるかもしれませんが、そこに興味を持っていただき、行ってみたいと思っていただけると嬉しいです。 

◯T会員 Hさん
この商品にアイゴが入っていることは知りたいですね。自給率の問題や、アイゴが困っていることは、触れた方が良いし、少し知ると、もっと知りたくなるので、QRコード的なものから情報発信したら良いかなと思います。 

◯T会員 Nさん
漁業課題とか、少し書かれていると気になりますね。そこで問題に気づいて、なんでそれが起きているのかとかは詳細で見られるくらいだと買うときに重たくないです。
あと調味料も万能なので、QRとかでもいいですが、ちょっとしたレシピとか写真つきなど視覚的にわかるようにしたらいいかなと思います。お醤油も入っているので、お豆腐にもかけたらおいしそうです。 

◯T会員 Hさん
海苔にも合いそうですし、おにぎりの具材にしても良さそうですね。 

◯岩崎さん
T会員の皆さんの「こうやって食べたら美味しい」的なレシピ集をWEBとかで紹介できるといいですよね。先ほどのお豆腐もそうだし、料理する人もしない人も、ちょっとアレンジするくらいの、使い方みたいな。せっかくこうやって皆さん一緒に集まっているので。
ラベルはできる限りイラストを使って、コンマで情報キャッチしてもらいたいと思います。 

◯佐々木さん
アイゴってあまり写真とか出てこないのですが、結構グロテスクな魚というイメージが漁業関係者に強いので、イラストチックだとかわいいのではないかなと思いました。
というのも、やっぱり消費者はどんな魚なのかを見たいのではないかなと、親近感湧くようなものがいいかなと思いました。 

◯岩崎さん
そうですね、パッケージには、太陽、海、八幡浜の段々畑、人、アイゴを基本に、優しさや可愛らしさは表現したいと思っています。 

◯松浦さん
確かにアイゴを見たことないですよね、今回は鮮度が一番だと思っているので、定置網で生きたまま持ち帰って、氷じめして、捌いて、アルコール冷凍しています。なので刺身や炙りなども今度企画できると思います。いきなり刺身だと「なにこれ!?」となってしまうので、まずはオリーブオイルで食べてもらってアイゴに慣れてもらってから、刺身にシフトできればとも思います。 

◯T会員 Hさん
逆にアイゴの刺身があっても、東京の人からすると知らなかったお魚の刺身なので、地元の方や松浦さんが思っているほどネガティブなイメージや先入観がないですね。 

================================================
試食をしながら、質問も飛び交い、あっという間に3時間が過ぎてしまいました。
最後に発売後こんな風になるといいなというイメージをお聞きして本日は終わります。 

◯T会員 Hさん
アイゴのお刺身はぜひ食べてみたいです。美味しければ買うと思うので、どんどん攻めて欲しいなと。
私はみんなに話すことしかできませんが、その気持ちを松浦さんにお伝えしたいです。 

◯T会員 Sさん
アイゴはこんな美味しいということを知ってほしいし、生産者さんに近い方と今日話して消費者も待ちの姿勢でなく、知りたいと思えるようになれたらいいかなと思います。 

◯佐々木さん
商品はすごく美味しかったです。アイゴは干物、練り物ではありますが、洋風のものは初めてです、
製品化を楽しみにしています。 

◯松浦さん
愛媛から来た甲斐が本当にありました。自分で考えるレシピも限界もあるので、豆腐やおにぎりのアイデアは発見でした。安心できる商品をみなさんのお手元に届けていきます。 

◯岩崎さん
ここからが勝負ですね。いかに伝えていくかを念頭におきながら食べて感じてもらう、環境、色、人の繋がりなど、そういった商品に育てていきたいです。 

◯T会員 Nさん
夫が長崎出身ですごい種類の魚を食べていましたが東京は魚の種類が少なく多くは食卓にのぼらないです。
漁業の衰退を防ぐためにも、こういう商品を通じて消費者が意識を持って、日本の漁業について深ぼって考えていけたら子供の未来が明るいのかなとも思いながら参加しました。 

================================================
今回は初のリアルセッションでしたが、直接お会いすることができ、一緒に試作品を試食しつつ想いを共有し合うことができ、事務局としてはリアルで開催して本当に良かったなと心から思いました。この後は引き続き商品最終化に向け、ブラッシュアップしていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?