ついにお披露目! 未利用魚活用プラットフォーム 商品発表記者会見レポート
こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。
「未利用魚活用プラットフォーム」では、愛媛県八幡浜・千葉県船橋の漁業関係者やメーカーの皆さん、流通企業の「こだわりや」さんと「信濃屋」さん、エシカルな食を生活に取り入れているT会員の方々とともに、約1年かけて未利用魚を使った商品の開発に取り組んできました。
そして、2023年7月5日、「未利用魚活用プラットフォーム」から2つの新商品が発表されました。愛媛県八幡浜の『アイゴあふれるオイル漬け』と、千葉県船橋の『コノシロやわらか煮』です。
本noteでは、7月5日に行われた商品発表記者会見の様子をレポートします。
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記者会見は、CCCMKホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 髙橋誉則さんのご挨拶から始まりました。「未利用魚活用プラットフォーム」による商品開発の特徴の一つに、ビッグデータの活用が挙げられます。今回のプロジェクトでは、ターゲットペルソナの検討時や、商品開発に参加いただくT会員の方々を選出する際にビッグデータが役立ったといいます。
髙橋さん:
CCCグループは、知的資本を活用して、様々なステークホルダーの皆さんと共創型で、日本が抱える社会課題を解決する活動を推進しています。知的資本とは、お客様も含めた社内外の人材、1.3億人のビッグデータ、お客様との関係性の中に構築される信頼といったものを指しています。
「未利用魚活用プラットフォーム」では、未利用魚という課題にテーマを絞り、取り組んでまいりました。愛媛県八幡浜の皆さん、千葉県船橋の皆さんとチームを作り、未利用魚を取り巻く課題について考え、どのように活用すれば日本の資源が持続的になっていくかということを議論してきました。
CCCMKホールディングスは、1社で課題解決に取り組むのではなく、地方自治体の皆さん、漁業関係者の皆さん、メーカーや流通企業の皆さんなど、様々なステークホルダーの方々と一緒に課題を解決する共創型プラットフォームを作ることにこだわっています。そのような中で、今日という日を迎えられたことを、本当に嬉しく思います。
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続いて、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」プロジェクト責任者の瀧田希さんより、「未利用魚活用プラットフォーム」の取り組みについてご紹介いただきました。
瀧田さん:
2050年までには、世界で人口が爆発してタンパク質の供給が足りなくなり、プロテインクライシスが顕在化してくると予想されています。自給率が低い日本で頼るべき資源の一つは魚介類ですが、長年の人気魚種の乱獲によって資源量が低下しています。その一方で、穫れたのに捨ててしまっている「未利用魚」があるんです。「未利用魚活用プラットフォーム」では、特定魚種に集中していた価値を分散させて、水産資源の枯渇を防ぎ、持続可能な漁業に貢献することを目指して取り組みを進めています。
「未利用魚活用プラットフォーム」では、フードチェーンの当事者である流通企業さん、食品メーカーさん、漁師さん、生活者の皆様など、立場も分野も異なる方々が共創する形で、それぞれのニーズや課題、想いの重なりの中で商品を開発してきました。通常、このようなことは実現が難しいと思うのですが、多種多様なステークホルダーの皆様の対話を大切にしながら、今回の商品開発にチャレンジしました。
作った商品は、きちんと売っていくことが必要です。今回は、商品のターゲットペルソナの解像度を上げるにあたって、ビッグデータを活用しました。
たとえば、八幡浜であればワインに合う商品、船橋であればごはんのおともになる商品を作っていますので、そういった商品を買われるのはどのような方々なのかというところを、データから導きました。
その結果、八幡浜の商品のターゲット層は、美食家で世帯年収が平均より高く、ビジネス書をよく読んでいる傾向があることがわかりました。また、プレミアムな海外のビールを好んで飲んでいることがわかり、ワインだけではなく、ビールと一緒に商品をご提案できる可能性がある、という話にもなっています。
船橋のターゲット層は、料理好きで年齢層が高く、健康志向ということが見えてきました。料理好きということで、色々なお料理に使っていただける可能性があるので、商品の味付けはシンプルにしています。また、栄養素の訴求をパッケージや店頭で行うとよさそうだ、ということが導き出されています。
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記者会見には、愛媛県八幡浜のプロジェクトから、オーシャンドリーム 松浦康夫さん、信濃屋食品 岩崎忠之さんが、千葉県船橋のプロジェクトから、海光物産 宗形健一郎さん、エスエスフードインターナショナル 松村勝治さん、こだわりや 藤田友紀子さんが参加され、プロジェクトに参画するにいたった想いを語ってくださりました。
松浦さん:
八幡浜は、年間約200種類もの魚が獲れる港町です。朝6時のサイレンとともに競りが開始されて、所狭し並べられた魚が仲買によって競り落とされていきます。ですが、子供の頃から見ていたそんな風景が、少しずつ失われつつあります。35年前には年間160億円あった水揚げは、現在30億円まで減少しており、深刻な状況に陥っています。
このような状況を打開しなければと思っていた時に、「未利用魚活用プラットフォーム」参加のお声がかかりました。今だ、今しかない、今やらないと必ず後悔する、と思い、参加を希望させていただきました。
今回の商品に使用したアイゴは、海藻を食べ尽くすので駆除対象にもされている魚です。刺されると腫れてかなり痛みますし、鮮度が落ちると臭いが強くなるなど、扱いは難しいです。ですが、新鮮なアイゴをすぐにさばいてお刺身で食べた時、とてもおいしい魚で驚きました。食感がよく、シマアジやカンパチに似た味わいがあります。この魚を活用し、持続可能な漁業について全国に発信していきたいと考えています。
岩崎さん:
私は、信濃屋食品のバイヤーの仕事をしておりますので、毎週のように産地を訪れています。そこで、一次生産者さんの疲弊してる姿を目にすることがあります。漁業だけではなく、農業や畜産業など、一次産業全体の課題を目の当たりにしているんです。
ですので、流通業として一次生産者にどこまで寄り添うことができるか、ということをテーマとして活動させていただいています。このプロジェクトには、一次生産者の皆さんの協力を得て、消費者の方々に課題をお伝えするきっかけとなるような商品開発ができたら、という思いで参加させていただきました。
宗形さん:
船橋の漁業は都市型漁業であり、市の基幹産業にはなっていません。ですので、船橋の港でお魚が水揚げされていて、なおかつ、水揚げ高が日本一のお魚がコノシロとスズキの2魚種あることをご存知の方は少ないでしょうし、そこが一番の課題だと感じています。
コノシロというお魚は、なかなか馴染みがないかと思います。お寿司のネタでシンコ、コハダがありますが、そのお魚が大きくなると、コノシロと呼ばれるようになります。出世魚は、大きくなると価値が上がっていく場合が多いですが、残念ながらコノシロは「骨が当たる」「表皮のドット柄が気になる」といった理由で価値が下がってしまいます。なので、これまで食用として流通していませんでした。
水揚げ日本一と申し上げましたが、産出額は3位です。なので、穫れたお魚の価値を上げていきたいという思いもありまして、今回「未利用魚活用プラットフォーム」に参画しました。大変素晴らしい商品ができあがったと思っております。
藤田さん:
こだわりやは、東京を中心に49店舗を展開しており、生産者の顔が見える商品を中心に扱っております。ほとんどの商品で、原料の生産者までわかります。ですが、海に関係する商品は、これまでほとんど生産者の顔が見えませんでした。私たちも、漁業者さんと普段接することがございませんでしたので、このような機会を通じて、海のことをお客様に伝えていきたいという思いで商品開発に参加しました。
フードチェーンをシンプルにして、海から近い商品を作り、未利用魚を取り巻く課題や、漁業の未来のこと、コノシロのことを生活者の方にお伝えしてまいります。
松村さん:
私たちは、食品の製造メーカーとして、千葉の銚子に工場を構えています。普段は、銚子で揚がったイワシ、サバ、アジを中心に使用し、煮魚などの加工食品を作っております。これらは人気魚種でして、最近ですと「サバ缶ショック」なんていう言葉もあるようにサバが消えると言われていたり、大衆魚として出回ってたイワシがいつの間にか高級魚になりかけていて、食品メーカーが原料を取り合ったりしています。
そのような折に、海光物産さんから、コノシロが安く取引されて、餌に回ったり捨てられたりしているという現状を伺いました。私は千葉県船橋市に40年以上住んでいるのですが、コノシロの水揚げ高が日本一だということは、実はまったく知りませんでした。スーパーの魚売り場に行っても、コノシロはまったく見ることがないんです。
船橋で、これだけいいお魚が豊富に獲れるのに、私たちはそれを知らずに、人気魚種だけで生産をしてきたわけです。地元の漁業者さんが抱える課題、水産資源の課題を考えた時に、これは何とかしなければいけないと思い、今回参加させていただきました。
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プロジェクトチームがそれぞれ対話を重ねて、ついに、愛媛県八幡浜の『アイゴあふれるオイル漬け』と、千葉県船橋の『コノシロやわらか煮』が誕生しました。記者会見では、流通企業のお二人から、商品のこだわりをお話いただきました。
岩崎さん:
商品には、アイゴの他に、八幡浜を象徴する柑橘を入れています。また、愛媛県の木桶で仕込んだ醤油も使っています。木桶で仕込む醤油や味噌は日本が誇る伝統文化であり、そのような作り方をしている生産者はまだまだいらっしゃいます。大量生産の食ばかりを追求する世の中になっているからこそ、今回は、八幡浜のテロワールを活かした商品開発にこだわりました。ワインとともに楽しんでいただくことで、食の価値を上げていきたいと考えています。
パッケージでは、八幡浜の段々畑や、海、アイゴを可愛らしく表現しています。また、愛媛県が愛という字を非常に大切にしていますので、「アイゴ」にかけて、『アイゴあふれるオイル漬け』という商品名にしました。若い人たちにも興味を持っていただきたい、という思いで商品開発をいたしました。
藤田さん:
小さいお子さんから、健康面を気にされているご年配の方まで、幅広いお客様をターゲットに商品作りを行いました。エスエスフードさんの加工技術でコノシロを骨まで食べられる商品になっています。頭以外、全身を使っているので、食品ロスの削減につながりますし、栄養も豊富に摂ることができます。
伝統的な調味料、国産原料にこだわって商品づくりをし、汁を多めに入れています。汁を使って、お野菜などと煮ておかずを作っていただくこともできますし、パスタにかけていただくなどのアレンジも可能です。
また、パッケージにもこだわりまして、バイオマスインクと、森林を守るFSC認証の用紙を使っております。
今回開発された商品は、それぞれ「信濃屋」「こだわりや」でご購入いただけます。商品の向こうに広がる海に思いを馳せながら、ぜひ、お家で楽しんでみてください。
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