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「Tカードみんなのエシカルフードラボ」のロゴから野生動物が消えた理由

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

この度、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」のロゴが変更になりました。エシカルフードの有識者との対話を経て、野生動物である鹿をロゴから外した理由を、ラボリーダーの瀧田さんにお聞きしました。

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ー 「Tカードみんなのエシカルフードラボ」のロゴは、どのようなコンセプトで作られているのでしょうか?
地球、循環、そして食べるということを、地球上に生きる多様な生物と共に表現しています。ラボが目指している世界観を表したいと思い、このようなロゴにしました。

ー 今回、ロゴを変更した理由を教えてください。
ラボの活動の一つに「未利用資源の利活用」があります。食べられるのに捨てられてしまっている資源を利活用することは持続可能な食につながる側面があるので、そのような資源を使った商品開発や啓発を進めているんです。

現在は未利用魚をテーマにしていますが、今後は駆除の過程で捨てられてしまっているジビエも利活用したいと考えており、ロゴに鹿のイラストを入れていました。

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ですが、1年ほど前に、エシカルフードの有識者としてラボに参画いただいているペオ・エクベリさんから問題提起がありました。それは、「ロゴに野生動物である鹿がいることが、”ジビエを食べよう”というメッセージにつながっているように見える。そのメッセージは世界の潮流から逆行しているため、ロゴから鹿を外してもらえないか」というものです。

ペオ・エクベリさんはサステナビリティコンサルタントで、日本、スウェーデン、ザンビアの3拠点で生活されている方です。ザンビアでは、通常は廃棄されるバナナの茎を活用した、フェアトレード認証の「バナナペーパー」を作っていらっしゃいます。ペオさんは、現地アフリカでは貧困や環境問題を減らしながら、人と野生動物の衝突の問題解決に向けても活動されています。今回の指摘は、アジア、欧州、アフリカの世界観を深く知っていらっしゃるペオさんだからこそ言えることでもあったと思います。

日本では獣害が社会問題になっていて、駆除した野生動物が捨てられています。捨ててしまうのではなく、日本の「もったいない精神」で利活用することは考え方として問題ないと思う、ということを、私からペオさんにお伝えしました。

それに対するペオさんの返答は、「日本のもったいない精神は素晴らしい。しかしジビエに関しては、そもそも野生動物を駆除しなくてはならない原因が人の活動によるところが大きい。これは途上国を含む世界の共通課題であり、”ジビエを食べよう”は危うさがあるメッセージなのでエシカルの場合は避けるべき」というものでした。

ペオさんによると、野生動物を食べることには様々な問題があるそうです。まず、絶滅危惧種を生んでしまう可能性がある、ということ。これは人と野生動物の共生を考えた資源管理をすることで解決ができます。次に、たとえばアフリカでは、密猟につながってしまうということ。アフリカでもスマホでSNSを見る人が増えてきていて、先進国でジビエが人気だということがわかると密猟につながってしまうこともあるというのです。密猟で捕まると何年も刑務所から出てこられないため、子どもたちが教育を受けられなくなる、などの課題に発展します。

野生動物を商品にすれば市場が生まれます。本来は仕方がなく駆除して、もったいないから利活用していたのに、市場の原理が働くと「さらに獲ろう」という流れになり、特定の動物の数が減ってしまいます。”ジビエを食べる”というメッセージは、そういった危うい方向に導きかねない、というのがペオ・エクベリさんの指摘でした。

さらに、そもそも人間による森林破壊や特定の動物の駆除が、生態系の破壊につながって獣害を生んでいる、とペオさんはいいます。人間が問題を引き起こしているのに、特に管理基準がないまま野生動物を駆除し、もったいない精神で利活用しているものを「エシカルフード」として入れるのはおかしくないか、というお話もありました。

ペオさんの一連の意見や長年のアフリカでの経験を踏まえて、間違ったメッセージが伝わるリスクや、意図しない形で市場が形成されるリスクをなくすために、今回ロゴから野生動物を抜くという判断をしました。「地球、循環、そして食べるということを、地球上に生きる多様な生物と共に表現する」というコンセプトは変えずに、新しく作ったロゴがこちらです。

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野生動物の利活用には、世界的に見ると様々な論点があるのですね。
そうですね。一方で魚についてはどうなのかとペオさんに尋ねたところ、漁業は資源管理がルール化され、信頼できる国際的な認証制度があるので状況が異なるとのことでした。野生動物も同様に国際的に認められる資源管理の方法を確立すれば、また考え方も変わってくるのでは、とおっしゃっていましたね。

ー 今回ロゴから自然動物を抜きましたが、利活用の取り組みは今後どうなるのでしょうか?
人間が生態系を壊してしまったことは深く反省しながらも、駆除したジビエの利活用は行いたいと考えています。ですので、未利用魚を利活用するプロジェクトの次に取り組むつもりです。ただ、資源管理を行っている地域と共に進めることで、間違ったメッセージにつながらないようにしたいと思っています。

新たに市場を作るのではなく、殺されてしまったものを活かす、という観点が大事です。未利用魚の利活用においても、未利用の特定魚種が人気になって獲られすぎてしまうと本末転倒なので、あえて私たちは魚種にフィーチャーしていません。

たとえば、ウマヅラハギは元々未利用魚だったのですが、カワハギの代替として価値がつき、人気が出て資源が少なくなってしまったと聞きました。そういったことは避けないといけません。あくまでも、定置網漁などで獲れてしまった未利用魚を利活用することがテーマであり、持続可能な漁業につながることを実現したいと考えています。

ジビエも、未利用魚同様、特定の対象動物をフィーチャーせずコミュニケーションを取っていく予定です。売るためには、鹿が低カロリーだということや、その栄養価などをアピールしたくなりますが、そうすると人気が出て鹿を獲ろうとする人が増えてしまいます。それは、避けないといけないことだと考えています。

ー そのような制約がある中で、どのように未利用資源の魅力を伝えていけばいいのでしょうか?
未利用魚の利活用においては、未利用魚にまつわる課題といった「事象」にフォーカスして伝えていくことが、一つの手だと思います。また、地域の魅力と絡めて伝えることもできます。

ただ、魚種が豊富な未利用魚と違い、ジビエは基本的に鹿か猪なので、種別が意識されがちです。どう伝えていくかは、今後の課題ですね。

今回、ラボで何度も対話を重ねた結果、ロゴを変えるという判断をしましたが、ジビエを取り巻く問題は、すぐに答えを出せない難しいものだと感じています。引き続き、みんなでこの問題について考え、対話を重ねていきたいと思っています。

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■ Tカードみんなのエシカルフードラボ

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