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紙ストローは本当に持続可能なのか?|品川エトワール女子高等学校 出張授業

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

2022年9月13日(火)、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」は、学校法人藤華学院 品川エトワール女子高等学校で「エシカルフードの浸透」について考える出張授業を開催しました。

次代を担う高校生と、ラボのメンバーが、「エシカルフードアクションの浸透に向けて、自分はどのように関わっていくことができるのか」というテーマで対話を行った出張授業。どのような点にこだわって企画し、対話はどのように広がったのでしょうか。

企画に携わった、ラボリーダーであるCCCMK ホールディングス株式会社の瀧田希さんと、ラボでPRを担当する大森展弘さんにお話を伺いました。

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「きれいごと」ではなく「じぶんごと」

ー なぜ、高校での出張授業を企画されたのでしょうか?

(瀧田)
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」は、多様なステークホルダーが集まり、集合知で課題を解決していく、価値を生み出していく、というあり方を大事にしています。ですが、これまで、未来を担っていく「こども」がステークホルダーにいなかったんです。

こどもたちと対話する機会をつくるために、今回の出張授業を企画しました。こどもとの対話は、ラボを立ち上げてから初めてのことです。

瀧田さん

ー ラボとしても新たなチャレンジだったと思いますが、Z世代のみなさんとの対話を円滑に進めるために工夫されたことはありますか?

(大森)
今回の出張授業は、ラボに「エシカルフードに関連する有識者」として参画されている、株式会社honshokuの平井巧さんにご協力いただき実現しました。

平井さんは、品川エトワール女子高等学校の3年N組(ネイチャースタディコース)で、2020年から食に関する授業の講師をされているんです。「40年後の食」というテーマで授業をしたり、食品メーカーへのインタビューを行うなどの社会との接点づくりにも取り組まれていました。

今回、こどもたちと対話するにあたってこだわったことは、何もないところから突然エシカルについて話すのではなく、普段の考えの延長線上で対話をする、ということです。品川エトワール女子高等学校のみなさんは、平井さんの授業を通じてエシカルについて何らかの思いを持っていらっしゃるはずなので、ぜひこのクラスで対話を実現したいと考えたんです。

大森さん

ー エシカルについて、こどもたちにゼロベースで考えてもらうのではなく、これまでの授業で得た知識や考察を活かしながら対話を進めたかったということですね。

(大森)
そうですね。ある程度エシカルに詳しく、自分の意見を持っていることが望ましいと思いました。そのようなこどもたちに向けて、ラボがエシカルに関する問いを投げかけた時に起きる化学反応に期待しました。

(瀧田)
一番大切なのは、高校生たちに、対話を自分ごととして捉えてもらうことだと思ったんです。

突然よそからやってきた大人に、エシカルというテーマについて教わる、という授業にはしたくなくて。対話の過程で、「実は私たち大人も、もやもやしている」ということを共有するようにもしました。

エシカルって、正解がないものだと思うんです。倫理観は時代や国ごとに変わりますし、エシカルな考え方に則って何かを達成すると、どこかにひずみが生まれてしまうという問題もあります。

たとえば、児童労働をなくそうといって、こどもたちからバナナ農園やコーヒー農園での仕事を取り上げた結果、売春婦になるしかないこどもたちが現れたりもするんです。

このように、エシカルについて考えていると、常に新しい問いが生まれてきます。すべてに答えを出せない中で、一歩でも前に進むために、ラボでは対話を続けています。

なので、今回の授業でも、白黒つけたきれいな答えを見せるのではなく、グレーのグラデーションの中で少しでも前に進む様を感じてもらうことを意識しました。

こどもたちも、綺麗事ばかり言われても自分ごとにならないのではないかと思うんです。SDGsやエシカルが大切なのはわかっているし、でも毎日毎日言われていると疲れちゃうよね、みたいな部分もあるじゃないですか。なので、お互いのもやもやを正直にさらけ出しながら対話をするということにこだわりました。

エシカルを推進する中で、諦めていたことがあった

ー 生徒のみなさんから出てきた考えで、印象に残っているものはありますか?

(大森)
私たち大人だったらグッと飲み込んでいたような、本質的なコメントが多かったように感じました。

たとえば、今後は昆虫食が必要になってくる、という話になったのですが、こどもたちからは「必要なのはわかるけど、食べたくない」「生理的に無理」という声が上がりました。他にも、「紙ストローが大事なのはわかるけど、全然おいしくないですよね」という話が出たりして。

自分は、昆虫食についても紙ストローについても、そういうものなんだと納得していた部分があったんです。そんな中、こどもたちが「おいしくない」「受け付けない」ということをあけっぴろげに話していたのが、なんだか新鮮に感じられました。

(瀧田)
本質的な価値を封じ込めてまでエシカルな事柄を取り入れた結果、エシカル消費は本当に拡大するのか?という疑問があります。

もちろん、プラスチックのストローは使わないにこしたことはないと思いますが、紙ストローで飲むと味に影響が出てしまうことはあります。

でも、大森さんが言うように、紙ストローを使うことがスタンダードだし、そうしないといけないし、という前提のもとで、思考停止していたようなところがあると思うんです。

でも、高校生のみなさんが「おいしくない」と言うのを聞いて、そうだよね、自分も本当は使いたくないんだよね、と思ったりして。そういうことを議論しないまま、「これが正しいから」と言って取り入れるのは、持続可能ではないし、広がらないと気づかされました。違和感やもやもやする気持ちを置き去りにしてはいけない、と感じたんです。

ー 高校生のみなさんとの対話の中で、気づきがあったんですね。

(大森)
そうですね。こどもたちの話を聞くと、私たち自身が諦めていたというか、無理に納得していた部分に気づかされました。自分も一番最初は、もやもやした気持ちを抱えていたということを、改めて思い出すきっかけになりました。原点に帰ったような気分です。

(瀧田)
「本質的な部分に向き合わないと、持続可能ではないし、広がらない」ということが、出張授業の大きな気づきです。

ラボでは、食品メーカーのみなさん、流通のみなさんと「エシカル消費研究会」を作って対話を行っていますが、そこでは「エシカルフードは高いので、その価格差を乗り越えての消費は行われにくい。食品の価値はあくまでもおいしさと安心・安全であり、エシカルはリピートを生むための要素」というところまで見えてきています。

出張授業での対話から得た気付きは、エシカル消費研究会で話している内容にもつながっています。

対話を通じてゆるやかにつながる関係

ー 今回、初めての出張授業でしたが、今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?

(大森)
高校生のみなさんと対話して得た気付きの大きさを踏まえると、多様な人たちと話をし続けていくことが大事だと強く感じました。

小学生や中学生、大学生とも対話ができたらいいと思いますし、もちろん年代ではない区切り方もあるかもしれません。

(瀧田)
元々、多様な人たちとの対話の中で課題解決、価値創造をしていくというのがラボの考え方ですが、どんな観点にも間違いはないので、多様であればあるほど望ましいと思います。今回の出張授業はとてもいい形だったので、他の場所でもやっていきたいと思っています。

ラボについて、「共創型のプラットフォーム」という言い方をしていますが、プラットフォームとは何かと言いますと、多様な観点、多様な想いの集合なんです。「市民の時代」においては、一人ひとりがどう思っているかということがとても大事です。

出張授業の中で、「あなたはどう思いますか」と問うと、時間はかかっても何かしらの意見が返ってきました。高校生のみなさんはこうしたやり取りに慣れていないでしょうし、言葉が出てくるか心配していましたが、杞憂でした。誰もが、自分なりの考えを持っているんです。

ー 自分の考えを正面から問われる機会って、日頃あまりないかもしれないですね。

(瀧田)
そうなんです。自分の意見を聞かれる機会が少ない方はたくさんいらっしゃると思います。なので、問いを立てる場、対話する場が今後とても大事になると思いました。

出張授業に限らず、対話の機会を広げていきたいですね。性も年代もばらばらな方々が集まる場も作りたいです。何か一つの問いについて真摯に対話する時間は、普段の暮らしの中での出会いとはまた違った形で、人と人を結びつけるのではないかと思うんです。

私たちは、とかく自分に似た人たちとコミュニティを作りがちですが、それだけだともったいないじゃないですか。驚くような考えを持っている人が、実はすぐ近くにいるかもしれないので。

「隣人との会話が生活の質を上げる」という研究結果を読んだことがあります。友達にまでならなくてもいいんです。人と人とが、ゆるやかにつながっていく。プラットフォームとしてのラボは、そんな場でありたいと思っています。

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