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「隣の誰か」に伝えていこう| エシカルフードインタビュー 中西悦子さん

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

今回は、ラボの活動に有識者として参画されている、パタゴニア日本支社の中西悦子さんへのインタビューをお届けします。気候危機や生物多様性などをテーマに、環境社会アクティビズムを推進されている中西さんに、私たちがどのように「エシカルフード」に向き合うべきか、お話を伺いました。

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中西悦子さん(パタゴニア 日本支社)
環境社会アクティビズム。気候危機や生物多様性など環境・社会テーマのキャンペーン戦略、ステークホルダーコミュニケーション、エンゲージメント等関係構築、共創の実践。

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ー 中西さんは、なぜこのラボに参加されたのでしょうか?
環境問題は、専門家など特定の人たちのみで話し合っていても、すべてを解決することは難しいものです。より多くの方に関わっていただかないと、変化、行動変容につながっていかないということを日頃から感じています。

ラボリーダーの瀧田さんとお話しした時に、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では消費者のこともラボの仲間として捉えていることがわかりました。有識者の力を借りながらも多くの方々を巻き込んで活動するラボである、ということが参加の決め手です。Tカードは、約7千万人の会員を抱えています。T会員の方々が日常の中で自然な形でエシカルフードを選ぶようになれば、大きな変化につながっていくはずです。

ー 「行動変容」という言葉がありましたが、環境や気候変動に対して、自分ごととして行動している方はまだ多くはないように思います。どのようなアプローチによって行動変容は実現できるのでしょうか。
自分ごとになるかどうかは、人それぞれが持つアンテナに左右されます。私たちの投げかけに反応してくれる方がいる一方で、もちろん反応のない方もいます。

ですが、近くの誰かや自分が大切にしている何かが関わると、変化が生まれやすいです。たとえば、「気候変動の問題」と言われている時は遠く感じられますが、「食の問題」と言われると近く感じます。私たちの場合は、「海の温度が高い」「雪が少ない」など、フィールドの状況を伝えることで問題を身近に感じてもらえることが多いですね。

もしかすると、限られた分野での発信に留まっているので、社会問題が特定の人たちにしか伝わらないのかもしれません。様々な分野の方々が隣の誰かに伝えていく、ということが重要なのではないかと思います。

ー 中西さんは、環境問題に対してアクションを取っている方々との関わりも深いと思います。そのような方々は、何をきっかけに問題を自分ごと化しているのでしょうか。
当たり前だと思っていたものに対して違和感や疑問が生まれた時に、深く掘り下げていくことで、その先に変化があるように思います。

世の中には情報が多いので流れていきがちですが、自分のちょっとした違和感や好奇心を大事にすることが行動変容につながっていくのではないでしょうか。

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ー 中西さんの活動の中で、行動変容を生み出せた印象深い事例はありますか?
私たちの店舗が長野県の白馬村にあるのですが、近年、村の方たちもスノーボーダーの方たちも雪が少なくなったと感じていました。

そこで、スノーボーダーの方々とシンポジウムを開催することにしたんです。シンポジウムでは、気候変動が起きているという事実や、この問題に今から取り組んでいくことが地域経済や自然をベースにしたビジネスにプラスになるということ、また、問題への取り組みの先行事例をお伝えしました。

シンポジウムを通じて、集まった300名の村の方々やスノーボーダーの方々と、気候の問題について前提条件を揃えることができました。すると、村での日常会話の中に、自分たちの自然をどのように守ったらよいのだろうという会話が生まれるようになったんです。

村の住民のなかから「このようなことならできるんじゃないか」という提案が自然に出てきて、それを後押しする形で話し合いを重ねました。地域の高校生や大人の皆さんが少しずつ取り組んだ結果、白馬村は全国で3番目に「気候非常事態宣言」を出しました。その後、長野県も続き、気候変動というものが一気に自治体レベルで語られるようになった感覚があります。

ある問題について気になると思っていても、一歩前に進むことってなかなか難しいんですよね。ですが、様々な企業や人が積極的に行動を提案することで、一歩進めずにいた人が集まってくるのではないかと思います。特に、今は人を集めやすい時代なので、これまで以上に変化を促せるタイミングに来ています。

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日本の企業と海外の企業に、環境問題についての意識の違いはありますか?
もしかすると、日本では欧米と比べて消費者が環境問題に関心を持てていないので、企業がそこに時間を割いて深堀りしきれていない場合があるかもしれません。

たとえば、オーガニックコットンについて、お客様から「肌にいいんですか?」という質問をいただいたりすることがあります。過敏症などでお困りの方もいるとおもいますが、矢印が自然と自分の方に向いていることが多いのかなと思うことがあります。

届ける側として、ものを取り巻く様々な物語を伝えていく必要がありますね。自分のことに加えて、これが大地の健康とつながっているのだな、という何気ない感覚が持てるように。ものの背景についての好奇心が購入する人のなかで増えていって、「こういう風に作られたものがほしい」という意思が生まれていけば、企業もそれに見合った商品を提供できるように動くはずです。

近年は、ものの背景に関する情報が増えてきていて、もう一度「つながりなおし」をしているイメージがあります。過去には、表面的な部分だけがきらびやかに仕上がって出てくるような時代が長く続いていました。ですが、今は、その後ろ側にある「どこでとれたか」「誰が作っているか」という情報に興味を持ち、関係性に豊かさを感じる人が多くなっている時代です。なので、そのような情報発信が活性化するといいですね。そうすることで、背景に興味を持つ人たちも増えていくのではないかと思います。

ー 最後に、ここまで読んでくださったみなさまに、メッセージをお願いします。
一人の人には、様々な役割があると思います。たとえば、ある時は消費者ですが、勤め先の企業では別の役割を担っていたり。ひとりの市民として、自分が担う様々な役割のなかで環境や社会とつながってみてください。そうすることで、社会課題を解決するプレーヤーが増えていくように思います。「新しい公共」という言葉もありますが、みんなで環境を保全し、社会を作っていけるといいですね。

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