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『銀河鉄道の父』の映画感想まとめ

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『銀河鉄道の父』についてのすてきな映画感想をまとめるマガジンです。
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#宮澤賢治

映画感想文「銀河鉄道の父」家族との関係に焦点を当て宮澤賢治を語る

誰か応援してくれる人がいて、才能は世に出る。 生前の出版は、2冊。37歳で没後、父や弟の尽力で世に知られるようになった宮澤賢治(菅田将暉が飄々と演じる)。 そんな彼の父(役所広司)に焦点を当てた直木賞受賞の原作の映画化。 明治29年、岩手県花巻市にて。質屋を営み地元の名士である、商才に長けた父の下に生まれる。 だからこそ、その豊かな生い立ちから来る罪悪感から、生涯を通じ農民の暮らしに心を痛め、試行錯誤した。 長男である賢治を溺愛した父、放蕩息子である兄の代わりに家業

「銀河鉄道の父」、利他主義と宇宙

役所広司氏、菅田将暉氏が、父とその子、宮澤賢治として向き合う。 賢治が終生慈しんだ妹を、森七菜さんが演じる。 そして「八日目の蝉」の成島出氏がメガホンを取る。 期待しない方が難しい作品だが、予想をはるかに上回っていた。 とにかく、物語の器が大きかった。 聖人としての宮澤賢治、(欲望に基づいた人間の経済活動という見地から言えば)だめんずの宮澤賢治、その間にある、私のような凡人には到底理解できない(また理解できなくても作品に感動する心からは何も引かれない)、宮澤賢治の、いわば

トロント日本映画祭で「銀河鉄道の父」を見た話。

6月8日の夜、何年ぶりかで自宅以外の所で映画を見た。トロントの日系文化会館(JCCC)で開催された「Toronto Japanese Film Festival」の初日に、相方と行ってきた。 20数本の面白そうな最近の日本映画が勢ぞろいしている中で、なぜ初日の作品だけを選んだか。その理由は簡単だ。宮澤賢治に関係した作品だったからだ。日本では今年の5月に公開されたようで、国外で公開されるのは、このフィルム・フェスティバルが初めてだそうだ。 「銀河鉄道の父」(監督・成島出、原

「銀河鉄道の父」知らなかったことを知り、興味を広げてくれる作品の素晴らしさ

先月、門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」(直木賞受賞作品)を読んでいたところ、たまたま今月から映画化されましたので、昨日鑑賞してきました。 本作は、詩人・童話作家である宮澤賢治(1896-1933)のお父さん、宮澤正次郎(1874-1957)の子供達との交流を描いたものです。 明治という新しい時代の中で、賢治を愛し、自由にさせてあげようという気持ちがありつつ、家業や信仰などで賢治と衝突し、葛藤する正次郎。しかし、賢治が愛していた妹の死を挟みながら創り出された賢治の作品に対