感染症病棟〜新型コロナウイルスが変えたもの〜⑩
深刻な人員不足
「あのー…そろそろ人増えないんですかね?」
「確か当初の話では感染状況を見ながら人員補充してもらえるって話だったと思うんですけど…」
と、単刀直入にスタッフ皆で病棟師長に確認した。
師長は険しい表情をしながら
「一応…全看護師に意向調査はしてあるんだけど…やはり移動してもいいと答える人はそんなに居なくて…でも、何とかするから。」
そう回答が来た。
それはそうだろうなと感じた。
私自身も元々、内科と感染症の混合病棟に従事していてその流れで居るだけだ。
もし始めから違う病棟であれば
わざわざ移動希望を出すことはなかっただろう。
だがそんな状況でも
数人の移動があった。
本当に心の底からありがたいと感じた。
「今日からお願いします!」
そう答える新しく移動してきた看護師に
恐る恐るマニュアルの束を手渡す。
「あの…早速で悪いんですけど、感染防護具の着脱をマスターしたらこのマニュアル全部暗記してもらわないといけなくて…。」
と伝えると
移動してきた看護師たちは驚いた表情になり
「え!?これ全部!?」と声をあげた。
それもそうだ。全て合わせると何100ページにもなる。
そのマニュアルは何度も修正を繰り返し皆で築き上げたものだった。
このことも一つ問題だった。
人員が増えてもこの手順を覚えるまでが
かなりの時間を要するのだ。
そしてこの頃には
軽傷者はホテル療養となっていたため
入院患者となると中症〜重症患者となっていた。
中症~重症ということは
それだけ1人1人の対応にも手がかる。
マニュアル上の手順もかなり細かくなった。
(何だか後手後手に回っている気がする…。このペースで人員確保だと厳しいんじゃ…。)
と嫌な予感がしたが
その予感は的中することになる。
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