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実体験を元にした看護業務の働き方について

私が看護業務に従事していた時の体験を元に働き方についての考えを
伝えてきます。



看護師の実態

あくまでも私が従事した病院での出来事ですので
病院によって異なる部分はあるかと思いますが
その点はご了承ください。


始業前のルール

私が最初に従事した病院の伝統的な風習として
新人は早く出勤して皆が使用するカルテや物品の準備をする
というものがありました。

当時の私は
(新人が早く来て準備なんてまるで部活動のようだ…)と思っていました。

しかし今考えると絶対変です。

そのカルテなどの準備をすると決まった根本的な原因は
電子カルテの立ち上げに10分以上かかるというものでした。

そのため新人が早くきて準備をしておくよう指導されたのですが
今考えると、その間に他の準備をしておけばいい話で
新人が早くきて準備というのはおかしいですよね。

それに新人がいない勤務のときもある訳で、
その時は普通に業務が行えている訳ですし。

当時は、そのパソコンの準備と情報収集があるので
始業は8時15分からなのに7時15分には出勤していました。

この1時間は前超過勤務にはなりません。
あくまで自主的に準備や情報収集に来た、という扱いでした


業務が終わっても…

そして新人の頃はできる業務も限られるので
早く帰宅するように指導されるのですが、
ある程度月日が流れると今度は帰れなくなります。

自分の業務が終わったら
周りを手伝ってから帰りましょう
という
風習があったからです。

そのため自身の業務が終わっても
周りに「何かできることはないですか…?」と聞いて
どんどん帰宅時間が遅くなるという残業がありました。


看護研究という業務時間外の業務

看護師は通常業務以外に
看護研究という研究課題を行うことがあります。
(※これは病院によります)

看護研究とは看護に関連したテーマを決めて
それを研究し、結果を発表するというものです。
研究データの確保のために数か月~年単位でかかるものもあります。

研究自体は非常に学びになり有益なのですが
終業後や休みの日にしか研究ができなかったということです。

この結果、日付を超えて
深夜業務のスタッフと鉢合わせになるということもあるくらいでした。



自己研鑽のための研修

医療は日々学習が必要です。
そのために研修が行われます。
時間内の研修もあるのですが
時には時間外や休みの日に研修を受けたり
必要であれば県外などに出張し研修を受けることもあります。

自分が受けたい!と自主的に行う研修はよいのですが
子育て世代や介護世代の看護師は特に時間に追われている印象でした。
ワークライフバランスの実現は難しいなと
見ていて感じました。



自分の時間が確保できると思った時に…

日々業務や研修や自己学習に研究…
それを終えて、やっと落ち着いたと思った時には

歓送迎会の飲み会が毎週~毎月ありました
(※コロナ禍以前の話です)

というのも毎週~毎月のように研修医が病棟に回ってくるので
そのたびに歓迎会と送別会があったんですよね。

今考えると
果たして数週間で移動する医師のために
歓送迎会をする必要があったのか疑問ですね。
歓送迎されるほうも、人によっては負担だったのではないでしょうか…。


ある日突然やってきた働き方改革

世間で、働き方改革関連法が2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行が始まりました。
その結果、病院でも流れが徐々に変わりました。

タイムカードの導入

ある日突然「働き方改革をしましょう!!」という通達がきました。
世間で働き方改革というものがあったものの
内心
(そんな変わらないだろうなぁ)
と思っていました。

しかし、別の病院で病院監査が入り
残業が問題となり是正勧告がでたことがきっかけに
前残業をしないように!残業もしないように!
と言われるようになりました。

そこからタイムカードが導入され残業をなくそう!
となったのですが…

そもそも
前残業や残業をしないと終わらない業務量
という事は変わっていないので

出勤時間は業務開始時刻間際になったものの
業務が間に合わず帰れなくなりました。

出退勤の時間をタイムカードで管理するようにしただけだったので
根本的な解決ができてないですよね。

そして…これは私の勤務していた病院独自の事だと思いますが
残業時間は予想してあらかじめ申告し、
申告した時間を超えて残業をするなら看護部長室へ理由を報告
しにいくように
というシステムが導入されたため
部長室に行き説明するのが大変でした。

おそらくこの狙いは
〇部長がどういった理由でみんなが残業をしているか把握したかった
〇それぞれの看護師が自分のキャパシティを把握して時間を申告できるか試したかった

というのがあったようですが
一般の看護師からすると管理職や認定看護師や特定看護師でない限り
看護部長と関わることはほぼありません。

つまりほとんど会ったことがない管理職に
「自分はこんな理由で残業時刻を申告したが超過勤務した」と言うのを
伝えに行くことになるので当時は、ちょっとしたストレスでした。

部長に報告すると「もっと効率よく業務をしなさい!」と言われていましたが
そもそも当時は人手不足だったのでベテラン看護師でも超過勤務をしている状況だったのでなかなか厳しいものがありました。

そのうち部長へ報告することが億劫で
事前の超過勤務予定時間を長めに申告すると
「申告時間が長すぎる!もっと効率よく業務を!」と結局指導が入りました。

しかし、当時
どのようにすれば効率的になるかは自分で答えを見つけてしなさい
という指導だったので、
救急の患者が毎日多く入院する状況では個人での業務改善には限界がありました。



出退勤時間をごまかすようになる

タイムカードの導入で出退勤時間をごまかせなくなっていたのですが
徐々に、皆、ある方法でごまかすようになっていました。

それは
早めに出勤してタイムカードは後で押す
業務終わりは早めにタイムカードを押してあとで退勤する

ということを自然とみんなするようになったんです。

理由は業務が間に合わないことと
残業理由を部長室に報告行くのが嫌だったんだと思います。

タイムカードのごまかしは
上司からやれと言われたわけではありません。
ただ、各病棟の師長も気づいていたとは思います。


電子カルテの入力時間とタイムカードの時間のずれ

しかし、ごまかしはいつまでも通用しません。

タイムカードでは退勤になっているのに
何故カルテに名前が??

と院内監査で問題になります。

後々わかったことですが
タイムカードをごまかしていたのは
全病棟だったようなので
誰に言われるまでもなく皆そうしていたようですね。

それからいよいよタイムカードでごまかすことも
できなくなりました。

ごまかしが効かなくなった結果

ごまかしが効かなくった結果…どうなったかというと
前残業は極力どのスタッフもしなくなったものの
後残業は増えました
なぜなら情報収集なども業務開始時刻から行う必要があるため
全体的な動き出しが遅くなったからです。

徐々に残業時の部長への報告義務も無くなり
超過勤務代は保証されるようになったため
給与は増えましたが…
毎日超過勤務となり
時には日付を超える間際まで業務をするようになり
毎日皆、クタクタでした。

つまり
前残業できない分の業務が後ろにずれ込みました。

ですが、
情報収集を業務開始時刻から行えること自体は
間違いではなくむしろ正しいかと思われます。

看護は予測できない急変や入院も多々あるため
時々超過勤務というならば仕方ないでしょう。
しかし、毎日のように超過勤務がある
ということが問題です。

新人やベテラン問わずに
業務がそれだけ毎日ずれ込むという事は
1人1人業務量が多すぎるということです




根本的な解決方法は

今から見直せること

根本的な解決はやはり業務内容の改善人員確保ですよね

しかし現実問題、
予算の関係等で人員確保は難しいと言われることが多いです。
(コロナ以降はそもそも募集しても人員が来ないと労働組合の話し合いで人事部の方が話していました。)

では改善できるとしたら何か?
それは業務内容の改善の方です。

私は転職歴があるので転職してから気づいたことがあったのですが
前の病院で当たり前にやってた事だけどよく考えたら無駄だったな
ということがある事です。

なので
これ以上無駄な業務なんてない!減らせない!
と思い込んでいる部分もあるかと思います。

例えば上記の話で言えば
新人が早めにきてパソコンや業務の準備をしていたということがありましたが
それも、それぞれがすれば良いことです。

よくあるのが申し送りはこれ以上減らせない!
と言うのですが
申し送りは事前に情報収集をしているので最低限でいいですし
カルテを見ればわかることなので長々する必要はありません

ただ、情報収集や申し送りに慣れていない新人や移動者には配慮する必要があるかと思います。
病院によっては申し送りを廃止しているところもあります。

あとは検査や手術出しの時間を調整して
早すぎないように工夫しているところもありました。

入院のカルテの入力をテンプレート化して
簡略化できるように工夫しているところもありました。

看護助手の人員を増やして
看護助手に雑務を依頼している病院もありました。

他にもさまざまな工夫がありました。

結局のところ
忙しいからとそのままにしていると
ずっと体質は変わらない
んだろうなと思います。

それを1個人でするのは難しいので
労働組合がある病院であれば組合に訴えたり
看護研究で働き方改革を挙げて上に伝えるという手もあるかもしれませんね。


業務改善の1つの案として

PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)の導入

業務改善の一環で私の従事していた病院ではPNSが導入されました。
PNSとは福井大学医学部附属病院が2009年に提唱・導入した新しい看護方式で看護師2人が1組となって複数の患者を受け持つ二人三脚型の看護方式のことです

この導入は当時賛否両論ありました。
その1番の理由はベテラン看護師の負担が大きいからです。

2人1組になって患者を受け持つということは
そのパートナーとの相性が重要になります。

ベテラン看護師からすると今まで1人で行えていたことが後輩のフォローもしながら業務することになります。

しかし、新人や中途採用者や移動者にとっては心強い制度です。

そして受け持つ患者の量は以前の倍になるということです。
いままで7人で良かった受け持ちがPNSによって14人受け持つことになります。
PNSだからといって患者数は減りません。
なので導入前は「仕事が増えるじゃないか!」という意見もありました。

結果的に導入が決まってからどうだったかというと
PNSがあっている人にはとても良い制度でメリットが大きいが合わない人も若干いる
という印象でした。

まず、2人1組で業務するのでお互い相談しながら業務ができました。
それに、体位変換など1人で行うのが大変な業務も2人ならスムーズに行えます。
1人がカルテを書きながらもう1人が患者対応をすることもできます。

何より一番助かっているような印象を受けたのは
妊婦や子育て・介護世代の時短勤務者だったような気がします
いままでは時短勤務でも引き継ぎが困難だったのが
PNSではパートナーが把握してるため引き継ぎが容易です。

ただし引き継がれた方は
途中から1人で14人の患者対応になってしまうので大変そうな印象はありました。
しかし、それまでにカルテ入力などをある程度済ませておけば対応はできている様子でした。

PNSはパートナーとうまくいけば業務が分担され、とても効率が良いものでした。

ただし、忙しすぎると結局パートナーに声掛けする間もなく個別で動かざるを得ないこともありました。

まとめると
【メリット】
・新人看護師や時短勤務者にとってはフォローや引き継ぎや容易である
・パートナーに相談しながら業務できる
・体位変換や保清など業務を効率的に行える
・パートナーとの相性がよければ非常に効率よく業務が行える。
・パートナーがいることで休憩をとりやすくなる

【デメリット】
・ベテラン看護師の負担が大きい
・時短勤務者のフォローをするパートナーは若干残務になりがち
(時短勤務者とのパートナーの業務は業務内容の調整が必要)
・忙しすぎると結局パートナーと別行動で動かないといけないことがある。
・パートナーとの人間関係に左右されがち

という点があります。

個人的には、導入して楽になったなという印象でした。
時短勤務者のフォローもそこまで負担はありませんでした。

リシャッフルがうまくいくかどうか

PNS制度では2人1組で看護師が勤務するのですが
定期的に「リシャッフル」といって全員が集まり業務の状況を把握していく制度があります。
そこでリシャッフル時に
業務が多いチームと少ないチームを把握することで、業務が多いチームのフォローに回るようリーダーが采配するのです。

リーダーをしていたときに一番問題だと感じたのは
リシャッフルの招集をかけても
「今忙しいから集まれない!勝手にやっといて!」と言われるという状況です。

しかし、忙しいからと集まらないと業務が采配できず余計に業務が終わりません

忙しいときこそ数分でもリシャッフルに参加すべきです。

仕事が終わらないときに
周りに助けて!というのは非常に重要です。
これは看護に限らずどの職種でもいえるのではないでしょうか。

ただし、フォローしてもらいたいときは
ただ単純に「忙しいんだ!!」と言われても何をフォローしたらいいのかわからないので
具体的に「〇〇が終わってないので〇〇をお願いします」と伝える必要があります。

そして全体を把握して指揮するリーダーの采配にもかかってきます。

リーダーの采配がうまくいかないと
あるチームは業務が終わってすることがないのに、別のチームは業務に追われているといったズレが生じるので采配は重要です。


看護協会が挙げている働き方改革とは

看護協会のホームページに勤務の時間などに関する働き方改革についての提案があります。
下記にリンクを載せておきます。


静岡病院での取り組み

静岡病院では時短勤務の看護師が一般病棟に応援にいくようにして業務調整を行っているようです。
これは時短勤務者の負担も少なく、時短でない勤務者にとっても病棟配置の際に時短者がいないことで途中から業務を引き受ける必要がないため良い制度だなと思いました。




最後に

看護師は専門職として通常業務に加え自己研鑽が求められ、やりがいのある仕事である一方で、とても疲弊しやすい仕事だと感じます。

人の命を預かる仕事で学びなども大切ですが
その一方でまずは1人の人間としての生活も大切にしてほしいなと思います。

日々の生活と業務に追われ、精神的に辛くなる看護師をたくさん見てきました。
自分の精神が安定しないと人の看護は難しいです。
看護ではなく業務をこなすだけの日々になってしまいます。

無駄な業務を削減し、皆が明るい時間に帰宅できて
家族とゆっくりとした時間を確保できる事が当たり前となる世の中になるといいなと思います。

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