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なんでも頭に乗せていいとは限らない話

昔の田舎あるあるかと思ってたけど、いつの世も我が家だけの珍事、ということで、ひとつよろしく。


祖父のこと


私もいつのまにやら50歳を過ぎ、20代の頃に亡くなった祖父のことを思い出すことも減ってきてしまった。
先日ふと振り返ることがあり、久々にどんな人だったかを思い起こした。
私が進学で家を出るまで一緒に暮らしていた祖父。
面白いというか、ちょっと天然で、すっとぼけているじいさんだった。

・歯が痛い時は爪切りについているやすりゾーンで歯を削る
・夜中にお菓子だと思ってバブをかじった形跡
・口にくわえたクギを飲み込んだと大騒ぎになるも、結局飲んだと思い込んだだけで飲んでおらずの騒ぎ損
・預かっていた生後半年ほどの孫が出窓から寝返りをうって下の砂利に落ちて泣いているのを気づかず昼寝、偶然発見した母親が青ざめる←これ落ちてたのは私。ケガもなく元気です。笑

これは日常で、決して当時は認知症だったわけでもなく、至って正気の沙汰。その事実がある意味怖い。
そんな祖父は、変わったエピソードが色々ある。


祖父の思い出①アクロバットすぎたドライブ


私の覚えている記憶のひとつ。
祖父がおそらく70歳くらい、私は5歳くらいだったと思う。
祖母と私が後部座席に乗り、祖父の運転で畑に向かった時のこと。
祖父は畑を見に行きたい、父は用もないのに見に来るなと言う。
農家の世代交代したてあるあるだ。

まさにこの攻防が繰り広げられている時代に、孫を乗せて畑を見に行く祖父。
いわば私は畑を見に行くための人質。
孫が見たいと言ったから、みたいな理由付けにはもってこいのシチュエーションだ。
畑に興味のない5歳がそんなこと言うわけないんだけども。

自宅から離れている畑は、堤防の下にあり、畑に降りる道がUの字になっている。
Uターンのようにギリギリを攻めながら、絶妙な運転さばきが必要な道路を通らなくてはいけない。
運転技術が退化中の老人にはなかなかリスキーな道路だ。
特に我が家の祖父の運転技術は全く信用してはいけない。

案の定、Uターン状に堤防を降りる道路で、
ご想像を裏切ることなく、思い描いた通りに、ターン中に脱輪。
しかも、そのまま畑に滑り降りていった、ならまだよかったのだが、
車はゴロンと側転して堤防の土手を落ちた。
1回転して畑に着地したか、タイヤを上のして逆さまで着地したか、肝心な記憶があいまいだ。
いずれにせよ、タカハシレーシング状態で回転ながら車は落ちた。

田舎ならではで、顔見知りだらけの地元。
あー、あのじいさんまた畑見にきたのかな?と、近隣の畑の人がたまたま走ってくる車を見ていたのが幸い。
急に車が視界から消え、「え??落ちた?!」と、仕事を中断して駆けつけ助けてくれた方がいた。

どうやって帰ってきたのか、車がどうだったのか、など全く記憶にないのだが、車から引っ張り出してもらった(ということは逆さまだったのかな?)ことと、帰宅後に祖父が父に怒られていたのはなんとなく覚えている。
結構なインパクトのある出来事だったにもかかわらず、堤防の土手が芝だったせいか、たしか全員無傷…だったはず。
今となっては、この薄い記憶がなんだかもったいないなと思うが、なかなかの思い出だ。
がしかし、記憶をたどると、祖父はもっと特異なエピソードのある人だったことを思い出す。


祖父の思い出②ハゲ頭をふんだんに使った鉄板ネタ


昔、私の実家の辺りは、田舎だったのもあり、とにかく野良犬、野良猫、おまけに野生のキツネなど、野生動物が盛りだくさんだった。
野良犬に追いかけられることは日常茶飯事。
おかげで未だに動物が苦手で、動物愛護の心が育たなかったのはこのせいもあると思う。
動物が苦手なのは父もそうだったので遺伝的でもあるとは思うが、それにプラスして祖父のある行動が拍車をかけたのではないか、と思っている。

こんな土地柄なので、昔の形状で隙間から出入り自由状態の車庫や物置の天井裏には、時々ネズミや猫が走っている音が聞こえた。
全然かわいくも楽しくもない、リアル版トムとジェリー。

ネズミはやっかいで、保存している食料を食べる、包材をかじる、など困った存在。
当時の我が家は、カゴ式のネズミ捕りをよく使っていた。
それを使って、いつも「やっかいもの退治係り」に任命されていたのが、時間を持て余している祖父だった。
ネズミが掛かると、祖父の手によってカゴごと水に漬けられた。
残酷…とはいえ、当時はこれはしょうがないことで、50年前の田舎はこうやるのが主流。

そこから先だ。
よその家ではどうやって処理していたのか気になるところだが、我が家はそこからがちょっと独特。

祖父は、私や弟妹、従兄弟など、子供がいる時間であれば必ず孫を外に呼びよせ、一連の流れを行う。

①ネズミを孫たちに見せる(反応はもちろん、うわ…という感じ)
②それをカゴから出し、なぜかハゲ頭に乗せる
③孫がキャーキャー逃げまどう
④おもしろがる
⑤ひとしきり満足すると川に捨てに行く

これがお約束コース、祖父の鉄板ネタだ。
現代であれば、川にそんなもの捨てるなんて罰せられそうだが、当時は何でも(七夕の笹とか)川へ持って行って捨てていた。(もちろん今はやりません)

黙って処分すればいいものを、必ず頭に乗せて見せてくる、この何度見たかわからない光景。
祖父は、自分のしたことで面白がってくれる(厳密には誰一人として面白がってはいないのだが)と余計に拍車をかけてくるタイプだった。
たまにしか来ない従兄弟らにもわざわざ見せていたところをみると、かなり気に入っていた祖父のパフォーマンスだったと思われる。
全員が鮮明に覚えている光景だったので、祖父の葬式の際は、じいちゃんの思い出といえばコレ、と従兄弟らとその話でかなり盛り上がった。

ただ、ネズミではないもう少し大きめの野良〇(←あえて現代なので割愛)バージョンを見たのは、おそらく私だけ。
そらそんなもん見せられたら動物好きになるわけないっちゅうの。

祖父から代々続くのもなんですが


そういえば、先日亡くなった私の父(祖父の息子)の葬式も、お酒と行きつけのスナックの話ばかりで終始泣笑いの起こるものだった。
代々葬式で故人の思い出話で笑いが起こるところをみると、我が家は平和な家庭なんだな、と思う。

まぁ、悲しいだけよりはいいのかもしれない。
生きている間に楽しい思い出があればあるほど、泣いたり笑ったりできるいい葬式になるんだな、と実感した。
自分も最期はそんな葬式を出せるように日々平和に生きていこうと思う。
今のところの私は、

 ・財布がないと思ったら冷蔵庫で発見
 ・年賀状と一緒に通帳をポストに投函
 ・エレベーターの閉ボタンと思って連打したのは非常通話ボタン

気づいてますとも、脈々と受け継がれているであろう遺伝子を…。
とりあえず何でも頭に乗せないように気をつけて生きていこうと思う。


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