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ぼっち在宅介護 父のリハビリより大好きな嚥下訓練②

昨年の夏の終わり、突然、下顎が機能しなくなり、水分も食べ物も摂れなくなってしまった父は、主治医と意思の確認をして、胃ろうなどの医療措置は選択せずに、在宅にて自分の機能での回復をのぞむことにしました。

数日で、訪問看護ステーションの依頼で、言語聴覚士(ST)さんが様子をみにきてくださることになり、個人的に契約していた口腔ケアの歯科からも自主的に打合せに参加してくださりました。


ま、そんなこんな中、
初回の嚥下訓練がはじまるまでの二人ぼっちの時は、なんとか二人で食べたり飲んだりせねばなりませんで。

海に遭難しているイメージで飲み込む手法が功を奏し、徐々にドリンクゼリーが飲め、お粥が飲み込めました。

頬の筋肉を戻したい、舌の動きを戻したい、足りていない栄養を補給したい…
スルメとか…
飴とか…
プリンやヨーグルト
いろいろ買い込んできて、チャレンジするもプリンがやっと。

プリン、ドリンクゼリーを交互に与えていると、口が甘くなり嫌になってきてしまい、たべれなくなりまして…

お粥におかずをすると喜ぶけれど、唾液が出過ぎて喉が溺れて…

だんだん私の方が、食事介助に疲れてきてしまい…

たまたま作っていたカレーを食べてみるか聞いてみると、食べたいと返事をするのであげてみたところ…
(もちろん、遭難スタイルのままですが…)
カレーを飲み物のように、ごくんごくんと飲み込んでいきまして…無事にクリア。

カレーとか雑炊とかをどんどん口に運ぶうちに、ポテトサラダがたべれて、コロッケが食べれて…

訪看さんが主治医に食事量を連絡したら、、、
「僕は誰の食事の報告を聞いているの?」と驚かれたそうです。

当初、父の様子から、
いよいよ最後の時かも?と、診療方針を本人と私と確認し、
「Fさーん、聞こえますか?急にこんなことになるなんて!すぐに逝かせませんからねー!命の水(点滴)いれますから、頑張って下さーい。」と、先生が叫んでくれた4日後の話でした…


翌週から、
月曜に、歯科の通常の口腔ケアに、
舌のマッサージと開口訓練が追加されました。

金曜日には、嚥下訓練がスタートとしました。
最初の頃は、長枕を使いながら、上半身、下半身それぞれに力が入りすぎないように寝姿勢のまま、麻痺しかけている下顎のマッサージ。
こわばる体の緊張をほぐすため、顎周り、首周りのマッサージ。数日で舌が痩せて硬くなってしまったため、ペロペロキャンディを使いなめらかに動かすための運動などをしていました。


嚥下訓練は、体のリハビリよりも、すごく一生懸命に、受けていました。

どうしても、普通にご飯を食べ続けたかったみたいです。
「食べるのはしんどい。けど、薬やと思ってたべてるんや」と介護がはじまった頃からよく言ってましたので。
薬をやめた自分には、食事しかない!だから、頑張る!そんな思いだったのではないかと思います。


1週すぎ、2週すぎ、頬に筋肉が戻ってきて、舌もふっくらしてきましたら、
「タバコ!」と言い出しまして…
「え〜、大丈夫?」と形だけのつもりが、
しっかり自分で持って一服したのには、驚きを超え呆れてしまいました。


看護師さんも、主治医も驚く速さで回復していくため、STさんは「Fさんとは短いお付き合いになるかもしれませんねぇ」と言われました。

嚥下訓練は、食べれるようになるとやめてしまう方が多いそうなんです。

が、父の食に対する意欲が尋常じゃなかったですし、誤嚥もはじまり吸引機が導入される状況ではあったので、長いスパンでお世話になりたい旨を伝え、継続していただくことにしました。
「とにかく、本人が頑張りたいらしいので、先生がトライしてみたいリハビリがあればなんでもやっていただいていいので、ガンガントライさせてみてください。実験台で構いませんので」と父とお願いしました。

食事を自分の口から摂る事で、口周りに筋力が戻ってきて、筋力アップと維持にいろんなチャレンジをやってくださいました。

吹き流しや風船。
体育の時の笛。
チョコレートや飴。
様々な食感のものなど。


全然、会話をしない、ぶっきらぼうの父ですが、言語聴覚士のNさんだけには、
柔らかい表情になったり、真剣に訓練したり…
唯一の通訳だった私が全くいらない二人の世界が出来上がってきまして、
次第に、立ち会わないで任せるようになりました。


いろんな方が出入りしてくださっています。
Nさんは、一番関係が浅い方なんですが、父は全幅の信頼を寄せています。

もちろん、私も大好きな方なんですけど。
他の方でも好きな方、父が好きそうな方もいるんですが、Nさんは見るからに特別です。
以前、お世話になった理学療法士の男性の方にも同じ感じを見たので、女性や男性というところでもないです。

食事に対する執着もあるのですが、父が気を許せる心地良い空気感が漂うのです。

それはなんなんだろう?
ずっとずっと考えていました。


それが、半年たって、やっとわかりました。


次は、そのなぜがわかったことについてです。

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