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【二次創作小説】妖蝶キリコ/RE:BIRTH

人に幻覚を見せる蝶ササガワアゲハの鱗粉の研究をきっかけに、人のトラウマを吸収して成長する謎の妖蝶キリコが誕生するという一種のモンスタームービー。物語は、キリコの卵が発生し、幼虫からさなぎへ、そして成虫になっていく様を、蝶をめぐる人々の欲望と謀略をからめながら描いていく。卵が誕生して以降の物語は「幼虫の章」「さなぎの章」と呼称される。成虫編に相当する最終章(95/01/29)では、番組タイトルは「kiriko Big Sleep After」とだけ表記される。“インタラクティブ・ドラマ・ゲーム”と銘打ち、視聴者からの意見を採り入れて進行していくストーリーや、最終章のみ画面の縦横比が約1:1のコ・オペラティブ・ビジョンで放送されるなど、企画・演出・映像ともに実験的要素の強い作品だった。

allcinema作品ページ

今日の午後、偶然手塚とおるさんのWikipediaの出演作品一覧を見ていて気になったWOWOWで放送されていたらしい深夜ドラマ「妖蝶キリコ

早速ネット検索してみたものの情報が驚くほど少なく、やっと辿りついたのが上のallcinemaに載っていたあらすじ

これだけでふと「何か書けるんじゃないだろうか?」と思ったのであくまで想像で下に書いてみようと思うが、出来はあまり期待しないでほしい

ちなみにこの作品WOWOWオンデマンドでの配信もなく、各種動画配信サービスでもなく、VHSやDVD販売もないという…もう今では見る手段が万策尽きたかんじらしい

だがしかし、どうしても見たいので後日ダメ元でWOWOWさんにリクエストしてみようと思っている

妖蝶キリコ/RE BIRTH

「き、キリコは僕のものだ、誰にも渡すもんか……!」仁礼野にれのが大声で叫ぶと友人の門崎は一瞬驚いた表情になり、目を逸らす。

「……君がそんな体になってまでその蝶に固執する理由が俺には分からない。もう限界だろう、早く取り出すべきだ」

そう言って門崎は自室のベッドに横たわった仁礼野の背中を指差す。枕に横向きに寝た彼、息をするのも苦しそうなその背中は歪に盛り上がり、着ているシャツを内側から破って蝶のような巨大な翅がのぞいていた。

「や、嫌だね……。キリコと別れるなんて、できるわけないだろう。このまま羽化させるよ、あとちょっとなんだ」
「なら、勝手にすればいい。君を心配した俺が馬鹿だった。帰るよ」

門崎はまったく聞く耳を持たない仁礼野に落胆し、玄関を出た。厚い遮光カーテンのひかれた薄暗い部屋から外へ出ると眩いばかりの夏の日差しが照りつける。一気に現実へ引き戻された。

(昔はあんな奴じゃなかったのに……。もしかしてあの蝶のせいなのか?)

門崎はぎりっと唇を噛みしめる。きっとそうだ。あいつが研究していたササガワアゲハの亜種……いや、突然変異で生まれたあの蝶。たしか名前は

「……キリコ、だったか」

門崎は先ほど見た仁礼野の背中を思い出して眉根に皺をよせる。あれが蝶のはずがない。人間に寄生する虫は実在するが、あんなものはもはや虫ですらないかもしれない。

毒々しい黄緑の地に人の目に似た赤い模様がびっしりと浮かんだ翅が脳裏に蘇り、門崎は身震いする。

(俺が……なんとかしないと、あいつは。そんなの見たくない)

「……待ってろ仁礼野。必ず助けてやる」

門崎が帰った後、がらんとした部屋のベッドの上で仁礼野は後悔していた。どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。

不意にみしみし、と背中が大きく蠢く感覚に体中から嫌な汗がふき出し、今でも苦しい呼吸と脈がさらに荒くなっていく。痛みの間隔が少しずつ短くなってきている。

(羽化が、近いのか)

もはや耐えられないほどの激痛の中で仁礼野は……笑った。やっと長年《育ててきた》キリコが孵るのだ。喜ぶべきだろう。

「……出て、おいでキリコ」

仁礼野がか細い声でつぶやくと、それに呼応するかのように背中が蠢き……ずるりと何かがベッドの上に落ちる。

仁礼野にはそれがキリコだと分かったが、首を動かしてそちらを見ることはできなかった。

背中に生じた孵化した痕からあっという間に血が溢れ出し、手足が急激に冷えていく。意識が薄れていく中、仁礼野は必死に口を動かす。

「おめでとう……それから、さようなら」

事切れた仁礼野のかたわらで羽化したばかりのキリコが翅を広げ、空いていた小窓から外へと飛び立って行った。

【了】

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