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命令に反する_自衛隊の隊長  遺体捜索_東日本災害

[  未完ですが、不思議な小説風です。  長文ゴメンネ。テーマ過多でした。]
およそ  3,800文字  



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平成23年の、3月11日の災害のあとの、自衛隊の話をします。


🔴

三陸の かたい潮風は、厳しい。

遺体を 長い間、岩手県の海辺の村々と 多くの崖の下で 探し続けた、ある日。

自衛隊のひとりの隊長が、捜索隊の全員を集めます。

その低い声が ゆっくりと告げた言葉には、全隊員が 息を呑む、深い凄みが あった。

「 わずかでも、今  自分の心身が  限界に来ていると、思う者は、遠慮なしに、すぐに、申し出ろ!」
一部、撤退を本部に 進言することが、私の考えである!
もう、我々は 今回の遺体救出活動に、あまりにも長期間、対峙し過ぎている!
 
 命令を、繰り返す!
 この一部撤退の計画案 を、最善の策だと、私は考える!
 遠慮は、一切 無用。

 急を要している。

 これは、命令である。

 すべての責任は、私が持つ。

 自分が、限界に来ていると、少しでも  思う者は、遠慮なく  すぐ、申し出なさい。

 撤退の戦いこそ!、
 部隊の真価が問われる。
 今こそ、見事な撤退を、 我々のプライドを、実力を 見せる時である!」




ぬかるんだ、泥の海を進み、
掻き分けて、手探りで つかみ出す。
幾日も、幾月も、彼らは 地表をどこまでも 制服の足で  なぞりながら歩く。

しかし、どんなに勇ましい男らも、表情と声は奪われていく。
涙さえも、ついには 悲しみに反応していた「心」の動きさえ 見えなくなって、固まっていた。



この日が、捜索隊と各支班にとっての 大きな転換のはじまりとなりました。
政府方針にも波及していった、救助救出の広域作戦における方針修正と改編が進んでいく契機のひとつとなったのです。

⬜️ 
⬜️

忙しい数週間が過ぎ、大きな節目を越えた頃、 隊長は、ひとりで 夜の海を眺めながら、集結地のテントを出て、静かな浜辺の高台を歩いていた。

本部からの通達では、交代の次の部隊が、もう間もなく到着する。
自分達には見慣れた、この破壊されてしまった  浜辺の無惨な悪路から、あと何日かで、華やぐ 自分の家のある喧騒の都会へ、アスファルトの光る電飾のビルの連なる平坦な道路へと、間もなく帰れるのだ。

遠く聞こえる波音と 風に向かい、ゆっくりと 彼は一人進んでいた。

どこまでもが、大災害後の荒れ地だったが、 おかしな事に、眠れぬ夜、彼は 漆黒の闇に浮かぶ波間の動めく微光を、なぜか、とても恋しく強く求めていた。



昔の出来事を、思い出した。

彼は、とても久しぶりに、遠いむかしに、訓練を受けた師団中央演習場での、小さな他愛のない会話が、よみがえってきた。

新米の 青春の頃、まだ若輩だった時代の、ひとコマ。

演習で学ぶ期間の中で、当時、憧れていた陽気で明るい上官との 軽い会話のやり取りが、突然、なぜか、とてもクリアに思い出された。


─── あれサ〜 
戦国時代とかってさ 
近い時代では 
日露戦争とかも、かな〜?、 

織田信長とか、乃木大将とかはさ、みんな 大変なんだよネー

そいでサ
戦いが、長引くとかサ〜。なー
だいぶ長くなる戦争の場合さ、 

兵隊の  “士気”が落ちるんだよね〜

ウン。 


どうなるか、わかる? 

そういう時 ?
オマエ ?

( 笑い )

 え ?!、


「 たー ・ けー ・ うーちー!」

 お前、バカか?



そんな マジメに  悩むなよ〜!
( 大きい笑い )

こんな話、そんな、馬鹿マジメに聞くヤツ、いねーよ!  オイ
( 笑 )


いいか ァ〜 !?、
アレだよ
あれ!。

アレなんだョ!!


うん。

兵隊が 歌を 唄わなくなるんだ。

それまでは  楽しい歌を唄いながら、、強がりでも、良い感じでもな、、

でも、音楽だけは  変わるんだよ。



アレだよ、
『故郷や 田舎を 想う唄』とか、
『切なくて、狂おしいバラード』とかが、聞こえてくるんだヨ、、

ッ  てなーー!! ( 高笑 )


ん  ???

あれ  ?、

オイオイ〜、
 竹内よ〜
  竹内くんよ〜!
まさか、お前!!、アレか?
そういう、唄のジャンルとか、イロイロとか、あんまり知らねえタイプなのか〜?



ふ 、 !

バカ !!、
声 デカすぎる !!

 バカやろー、
オイ!

な に が、、
自分は、まったく何も知りません!!』だよ!。

そいで モッテ、何でもカンでも、すぐ謝んなよ!、コノヤロー

 も 〜 〜、

そんなハッキリ、でっかい声で 言うんじゃねぇよ!!

ここは、こんな御立派なエラい皆さんの、極めて 美し〜い お部屋なんだからヨ〜、
ココは〜、

バカ真面目に 叫ぶんじゃないよ〜!
オマエは、。もう、
 ほんとバッカだな〜、、


おおっと!!、

 あああ!、

と アレ 〜 、

お前、
 あれ、
見てみろよ〜。ア レ!

あ    っ  ち を!!

 見て下さいよ〜、、

あそこに居る、凄いエラい お方は、な〜 
再来年には、めでたく定年退職される『偉大なる教官の 江川ジジイの  まさおみ殿』なのだヨ。

その 特別教官の江川の爺さんが、、
見ろよ!、珍しく 何だか、すっげ〜 ウケてるぜ!!

久しぶりに、爺さんが爆笑してるヨ!


あの、 あ、、

あの、 教  官 ど の ーー!! !

ハイ!、、あの〜、

江川の大教官 殿!!、、



 ここに、竹内という、、東北の海で育った、新人が、参っておりま〜す!!
(笑)

この〜 昨年度 入隊の、遠くは福島の田舎、 漁村生まれの、、

この親潮を知っておる 若者が〜!、、

畏れ多くも、、
 偉大なる教官殿の「南国土佐のよさこい」を ひと節、ふた節、
是非是非 お聞かせ頂きたいと、只今、願い出ておりま〜す!
どうか、よろしくお願い申し上げますー。

 (大勢の笑い)


おいおい!!
アレだよ〜、竹内よ〜

こりゃ〜  かなりヤバいぞ!

江川ジジイは なぁ〜、土佐は高知の おヒトだ 〜!

な ! 、
だからな!

そうだ〜、“焼酎”のヒトだぜ〜!
オイオイ!、
気い  つけろよ〜!。(笑)


ああ〜、  あ

そんでもって、なーー、

竹内よ、、


 お前のサ〜、


お前の、福島の海は?

お前の福島の海の唄ってサ〜?

どんな 唄 なんだ ?

( とても  明るく  笑う )



多くの上官の笑顔と、窓からのあたたかな太陽の光、整然と並んだ建物が 師団訓練場と、どこまでも続く連絡道。

あの頃の教官の名前を記憶から引き出しながら、、
懐かしい日々を、急に思い返す。

変に照れくさくて、そして たまらない。とても眩しくも感じる。言葉に出来なかったが、温かくて、私はいつも うれしかったのだ。

あの時代、上官たちは 未熟な私を、忘れることなく、よく励ましてくれた。

いつも言われたことは、
『オマエは、我慢のしすぎである。』
『だから、うまく  しっかり自分を把握し、SOSを早く出すように。』

そして、あの季節の中の、上官の指導の仕舞いには、たいてい お決まりの、明るい笑いがあった。
それは、おどけ混じりで 問いかけられる、二つの質問だった。

・東北人は、お前みたいに、みんな ひたすら何でも我慢する  ンカ?

・アンマ笑わない、お前  見てると、東北の人間は ひょっとして、みんな 全員そうナンダ〜、って思っちまう!
 オイオイ、竹内よ!
 俺には、もう わっかんね〜ぞ〜(笑

とにかく、いつも、
「笑え!」、「弱音をはけ!」、「喋れ!」  と叱りを受けた。そして、上官は 思い出したように、私の肩をヒッパたいては、笑いを周りに広く振りまいていた。

明るい太陽と、楽しげで 豊かな表情の緑林、そして花壇の豪華な香りが並んでいく。

あんなにも、ひどく まぶしい建物が並んていた 暮らしがあった力強い時代、年月。

回想が終わる。

回想から、

空に、、、

空に

大きな丸い月が

見えた。

強い風が、肩を押し、駆け抜ける。

気づいた時、、私は、海の中、腰までの波を感じていた。

陸地の終わりの海のはじまりの場所、
「海岸」の浅瀬で、私は、
夜の天空を見つめ、

立っている。

砂浜の海と波が流れ、ゆっくり 音をたて、動いていく。
ひとつふたつ、遠くで、打ち寄せた波音が、激しく震わす長く低い音で、鳴り渡りつづけた。

私は、本能と一緒になり、
砂の岸へと身をひるがえし、潮中の砂の足場を強力にしっかりと落ち着かせては、一歩ずつ一歩ずつ、砂浜の上へと戻っていった。

黒い波と海は だるくて、やけに重い。
腕を使い、全身の力で、陸の上に。

砂の上を見渡し、よろめいては、歩きはじめ、、
視線が見つける物体は、、不思議に、自分のシャツと上着だと感じると、手が つかむために、前方に進んで行く。

私は 半身、裸だった。

少しずつ  戻って来た、意識と感覚の隅々は、ゆっくり 幾つかの事を、発見しつなぎ合わせていく。

発見したことは、
この肩が、痙攣するように動いていたのだ。
私は、、自分が、、赤ん坊のように、かなり激しく泣きじゃくっていることを、理解し、次第に  実感したのである。

この荒れる呼吸が、嗚咽が、いつまでも 簡単には 止まらなかった。

私は、シャツにすがりつき、そして 自分の鼓膜が破れるほど、泣いた。
南へと 延びる、海岸線に向かい、ひざまずいて、まるで聖者に向かい祈るように、、
潮と風の中のドロと砂を、身に浴びながら。


どれくらいの時間を、超えたのか、わからない。
私は、満月の浜辺を、歩き出し、そして次第に、一歩ずつ 砂を踏む足と体の前傾が走りはじめた。

このまま、ずっと  この海の端の道を走りつづけ、南へ翔んで行けるなら、とても美しい大都会に着く。
そして、つながる。 あの青春の街へ。

遠い果ての  闇へ、
上官の名を呼びながら、友の名を呼びながら、

そして、、妻の名を、父よ母よと、叫びながら、走り、
走る。
夜が、まだ明けていない、あの南空の真下には、私のわたしの故郷がある。

私は、泣きながら、助けを、
助けを、私は求め、叫び続けていた。

走っている。

助けを求めて。

繰り返し舞い上がる、黒い波のしぶきは、
何の手出しも   してくれやしない。

風と、、

丸い月が、回る夜に。
名も知らぬ、星々が 輝きすぎる、強い紺碧の暗転に。


もうひとつの 回 想 ーーー

満月の夜、、西の穏やかな、終わりのない山々は、深く 眠っていた。

東の、東の海だけは、いつまでも無言のまま、、
私を見ていた。

あなたがたは、この私を、見守っているのか?



どうか 人々を、早く 返し給え、

日本の 海よ。

私達自身が、 みずから 細心に 丁寧に 心から、埋葬をしますから、、

燃える 東の海よ、 私達を 日本人を どうぞ 信じ給え。

海よ、 私達 日本人は あなたを これ以上 身勝手に 汚しはしない。

だから、 海よ、 私達は あなたに 大きな 謝罪がしたいのだ!!



◎◎◎

工事中、メモ。。。

終盤のタネあかし。。
劣等生だったこと。。多くの人からの励まし。。
夜の海からの帰還。

テーマを、減らして書き直す。。


ヒント。。。福島の原発の汚染水。

南国土佐の歌  くちずさむ??

( 海が奪ったものは、海に奪われたものは、また海を人生から失った人間は、

海でそれらを取り戻し、癒やされるしかない???)

◎◎


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