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雑記 司法書士としての就職・転職活動を振り返る ーその2 事務所選びと面接で聞く勤務条件の話

 その1 のつづき。

 前回の記事では自身の経験を振り返り、司法書士として就職・転職活動する上で個人的に大事だと思った考え方や、その背景となる労働市場から見た司法書士業界について触れた。

業界全体としては、基本的に司法書士が不足していることや、一つの事務所に定着しにくいこと等から、就職者優位の現状がみられる。よって、実際に就職・転職活動をするにあたっては、自分が働きやすい環境を自分で用意することが大切だと書いた。

 今回の記事では、前回から少し掘り下げた点や、就職・転職先を選ぶ上で気になる条件面などを挙げていきたい。


必ず複数社を受けて、比較・検討する

 自分にとってよりよい環境で働くためにも、勤め先としては、よりよい条件を提示してくれるところを選びたい。

そのためには、実際に複数の会社に応募し選考を受けるのが手っ取り早い。複数社を受けることで、金銭・場所・福利厚生面・面接時に受けた印象等、あらゆる部分について条件面・待遇面の比較ができる。

さらにその過程で、事務所選びにあたり、自分の中で特に優先したいポイントは何なのかを知ることもできる。これにより、実際に複数社で悩んだときの判断材料や、面接時の交渉材料等にすることもできる。

(例えば、通勤時間を優先したい場合。似たような待遇を提示するA社とB社があり、自宅からの距離はA社の方がB社よりも離れているとする。このとき、仮に就職にあたり事務所付近に引っ越した場合、支給される交通費が削減できる等の利点がある分、代わりに月々の給与に住居手当を上乗せしてもらえるか等とA社に交渉することも考えられる。うまくいくかどうかは不明だが、確認する価値はある。)

 また、内定をもらったからと言って、そこに入らなければならない訳ではない

前述したような、業界全体として人手が足りていない等の現状は、採用する事務所側も当然認識しているはずだ。事務所側としては有資格者が応募してきたときは、その応募者は他社の選考も控えていることを想定して面接の準備をする。よって自分にとって他により良い条件を提示するところがあれば、選考の結果、採用の連絡をもらったとしても、その内定を辞退することは問題ない。(当然そうした背景がなくとも、内定辞退はOKだ。)

素直に言えば後々事情を話す手間も省けるので、面接の際に、他社の選考を控えていることや、採用連絡をもらったとしても他の結果を踏まえて判断したい旨を予め伝えておくとよい。


条件面は、具体的に確認する

 ここからは勤務条件の話になる。


1.金銭面について

 給与について、実際にいくら・どのような形でもらえるかという点は、最も気になるところだと思う。入社後、金銭面について余計な心配をせず仕事に集中できるように、事前にその点についても自分が理解できるまで細かく聞くべきだ。

個人的には実際に面接等の事前段階で、以下のような給料やその他の出費に関わる部分について、相手の事務所側に確認するようにしていた。

・給料(月給・年収)について
 月給制か年俸制か
 インセンシティブはあるか
 具体額(月収、年収)
 締め日と支払日
・賞与について
 年何回か
 具体額
・昇給について
 昇給条件、昇給額の計算方法
・残業代について
 残業代の計算方法
 ひと月あたり大体残業時間はどのくらいか。繁忙期はいつか。
・司法書士関係費用について
 会費・登録費は全額事務所負担か
 研修費や資格取得費等は出るか
・その他
 交通費は全額支給か
 住居手当等は出るか
 保険完備か

 思いつくだけでも、以上のような点がある。

 残業に関して言えば、ひと月当たりの超過時間よりも残業代の計算方法についての確認を重視した。具体的に言えば、例えば次のような点を確認した。勤務時間を超過した分は全額もらえるのか、もしくはみなし残業扱いなのか。みなし残業の場合、実際にみなし扱いされている残業時間の上限。既定のみなし時間を過ぎた場合の支給額の計算方法。提示された基本給は、このみなし残業部分の給与が元々含まれた状態の金額なのか否か等がある。

はっきり言って面接時に聞く残業時間はあてにならない。それは、事務所側の面接担当者が調子のいいことを言っているというよりも、その時期や人によって実際の残業時間は異なるからだ。

したがって、残業時間ではなく残業代の計算方法を聞くことにより、仮に残業が発生したとしてもそれに見合う対価がきちんと得られるかどうかを確認していた。またみなし残業の場合は、一定時間は支給額が固定されているため基本的に残業するだけ損である。よってその場合は、勤務時間内にやることを済ませてとっとと帰ろう等と、予め自分なりに働きやすい時間管理の仕方を想定しやすくなる。

 司法書士会費と登録費の負担についても気になるところだろう。個人的な印象としては、会費に関しては事務所側が全額負担する所が多いが、登録費の対応については様々である。登録費について、事務所側が全額負担する所もあれば、例えば2年間以上在籍した場合は全額返済免除のように、事務所からの条件付きの貸与という措置をとる所もある。事務所側の負担なし(要するに、自腹)の所もある。会費・登録費は決して安くはなく、また入会・登録するからこそ事務所の業務は回るので、個人的にはどちらも事務所側が全額負担の所をおすすめする。

 また、入社後も、実際に給与明細等を確認することが大切だ。実体験としては、次のようなことがあった。

面接時に交通費全額支給と聞いていたにも関わらず、応募先の事務所からの採用連絡の際に、社内規定が変わり交通費に上限ができることを伝えられる
・事務所での研修期間経過後は、月々の給与に住居手当が上乗せされる旨の約束を所長としていたが、そのことをなかったことにされかけた

 当然その都度所長に直接指摘し改善させたが、自分の身は自分で守らなければいけないと改めて感じた経験だった。


2.業務内容について

 就職先・転職先を選ぶ条件として、業務内容を重視する人もいるだろう。
例えば、司法書士を目指した動機自体が特定の分野・案件に携わりたいと思っていた人や、将来的な独立に向けて重点的に経験を積みたい分野がある人等は特に気になるところではないかと思う。

 しかし、ここで注意すべき点としては、事務所がその業務を標榜していることと、実際に多く扱っていることあるいは得意分野であることとは別物であるということだ。

 例を挙げれば、決済事務所で勤務していたときのこと。そこで取扱う業務は売買関連の不動産登記業務がほとんどであったが、その他に相続手続や遺言書作成などの相続・生前対策業務に関しても積極的に標榜していた。しかしその実態は、相続・生前対策業務についての取扱い件数は少なく、また実務に関する知識レベルも悲惨なものであった。例えば、不動産登記上は信託財産そのものに関して持分という概念が存在しないというのは、試験合格者なら誰でも知っている基本中の基本の知識である。しかし、その事務所ではその業務の代表者ですら、申請書に具体的な持分を記載して信託登記の申請をしようとする等、散々な有り様であった。(自分が事前に気づいて申請を差し止めた。)

希望する業務に対して、このような事務所では経験できる機会も少なく、またそれ以上に間違った知識を身につけてしまうリスクが大きい。場合によっては、試験合格後にそのまま開業した方がよいとも考えられる。

 一方で、希望する業務をその事務所が現実に取扱っているからと言って、入社後実際に携わることができるとも限らない。ろくに実務をさせてもらえず、長い間お茶くみや電話番など雑用係をやらされる事務所もあると、同業者の何人かから聞いたことがある。

 このように、会社のWEBサイト等に「〇〇分野に積極的に取り組んでいます!」と書いてあるからといって、入社後実際にその業務に携わることができるとは限らない。したがって、面接等の事前段階で、自分が取り組みたい業務に関する質問として、例えば実際のひと月あたりあるいは一年あたりの取扱件数、全体の案件数のうちに占めるその業務比率、また自分が入社後に担当することとなる業務内容や実際に担当者として案件をもつまでの期間等、よりつっこんで聞くべきだと個人的には考える。

 せっかく入社したのに、「やりたいことができない」「思っていたのと違う」と感じたまま無理してそこで働く期間は本当にもったいない。有意義な時間を過ごすことができるように、こうした点についても具体的に確認したい。

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