先生 PartⅡ

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最近の記事

プライドは「高い」のか、それとも、「薄い」・・・

 印南敦史著『それはきっと必要ない』(2020年12月20日発行  誠文堂新光社)  古書店で、タイトルだけを見て買いました。面白いと思ったのが「薄いプライドは必要ない」という項目です。人は誰しもプライドを持っていますが、「プライド」ということばには若干マイナスの評価が伴っているように見受けられます。「あの人はプライドが高い」と言ったりする時、良い評価を下しているようには思われません。それ故か「プライド」ということばはやや使いづらいく、自尊心、うぬぼれ、誇り、気位といったこ

    •  訳すことの難しさ

       あるドキュメンタリー番組を見ていて、番組の最後に I will not fade away. という英文が映し出され、字幕は「私はあきらめない」とありました。数秒のことでしたので、この通りで間違いないと自信を持って言えないのでいささか気が引けるのですが。 「老兵は死なず、消え去るのみ」とマッカサー元帥が言った時、確か「fade away」という言葉を使っていました。(随分前に見たドキュメンタリーなので確信はありませんが)  いずれにしても、同じ言葉でも文脈によっては、日

      • 「ハサミの法則」

         昨日、ある大学の公開講座を受講しました。 「やさしい日本語」入門講座 ー外国人と共生のためにー 講師の方の「ハサミの法則って知っていますか。」との問いかけに 頭の中で、なんで「ハサミ」がやさしい日本語に関係するの? 一体どういうことなの・・・ ちょっと混乱しました。 説明を聞いておおいに納得です。 ・はっきり言う ・さいごまで言う ・みじかく言う  外国の人と話をしていて、相手が理解できない言葉があると、わかってもらうためにその説明をしようとして、ついつい話が長く

        •  失敗、その後、そして

           古本市で買わなかった『英語はこんなにニッポン語』(ロビン・ギル著)を諦めきれず、ネットで検索。 ちくま文庫を多数取り揃えているという古書店がちらほら。  早速出かけましたが、目当ての本は予想通り、ありません。本棚を見つめ、思ったことは、多数揃えていますとか専門とか言った時、何冊ぐらい、どれぐらいの数を揃えていたらそう言えるのか、ちょっと疑問が湧きました。 燈台下暗し、でした。  ちょくちょく立ち寄る古書店。いつもは週替りの古書が並ぶ、店頭の平台ばかり見ていましたが、その

        プライドは「高い」のか、それとも、「薄い」・・・

          「井戸水」 は 「いどすい」・・・

          「井戸の水」は「井戸水」と書いて「いどみず」。 先日テレビを見ていて、「あれっ」と思いました。出演者の一人が井戸水のことを「いどすい」と言ったのです。司会者や他の出演者は、別段気にする様子もなく、番組は進んでゆきました。  日常では「スイ」と読むのが多いです。(漢字が三つの場合です) 天然水、地下水、伏流水、飲料水、地下水、深層水、化粧水などなど。 「みず」と読むのは少ないようです。    以前「鉄砲水(てっぽうみず)」という言葉がありましたが、今は「土石流」が使われて

          「井戸水」 は 「いどすい」・・・

           おにぎり の 「なかみ」

          『日本語学習は本当に必要か』 多様な現場の葛藤とことばの教育 村田晶子 神吉宇一 編著  明石書店 2024年2月15日 初版第一刷発行  題名に驚かされました。 本当に必要か、と問われれば、必要だ、と自信を持っては言えないもう一人の自分がいます。 (大学であれ、日本語学校であれ、地域日本語教室であれ、そこでの活動が、日本語を習得しようとしている人たちにとって、有効有益なものになっているのかをこの本は問いかけています。地域日本語教室の活動の中で疑問に思うことなど少なくはあ

           おにぎり の 「なかみ」

           文字と音(読み)

          ひらがな・カタカナは表音文字。 漢字は表語文字。 英語のアルファベットは表音文字です。 日本語の「は」は「 ha 」、「 wa 」     「へ」は「 he 」、「 e 」と2つの読み      「 o 」は「お」と「を」の書き分けをします。 それ以外は、1字1音です。 英語のアルファベットはどうでしょうか。 ant aegis coat angel ball 「a」の文字一つとっても「音」は複数あります。 child は複数形になると child

           文字と音(読み)

          「生きがい」の英訳・・・

          「生きがい」という言葉がちょっと気になり、日頃めったに手にしない和英辞典を引きました。ジーニアス和英辞典です。「生きがい」の見出し語の後に普通なら英単語が載せられていますが、そうではなく、以下の文章(説明というか、解説というか)があり、その後に訳語・例文があります。 引用します。 「1語でぴったり対応する語がないので、文脈に応じて「生き(てい)ることの価値」「生きる目的」などと言い換えて英語に直す。」とあります。 実に的を射た説明です。納得です。 次に松本道弘著「難訳

          「生きがい」の英訳・・・

           本の題に、唸る・・・

           ある古本屋さんの棚を眺めていると一冊の新書に目が止まりました。  『好きになられる能力』という題です。思わず頭の中で唸ってしまいました。  この本の題からは、自分が他者のことを好きになるのではなく、第三者から好かれる、第三者が自分のことを好きになる、そういうことになるには身に付けなければならない能力があります、といっているように思います。 (「人に/人から好かれる能力」のような題では良くなかったのでしょう) 「なられる」という表現。 「好きになる」では第一人称(自

           本の題に、唸る・・・

          試行より思考の錯誤

           先日の古本市で『最新日本語読本』新潮平成四年四月臨時増刊号を買いました。私にとって面白く興味を惹きつけられる記事が満載です。とりわけ最後のページの方の囲み記事を読み思わず笑ってしまいました。 《誤記誤用一行寸評》のタイトルがついた記事の中からひとつ引用します。  思考錯誤(試行錯誤)ワープロならではの間違いだけど、変換操作も試行しないと・・・。  今使っているパソコンで「しこうさくご」は「試行錯誤」と変換されるので別に問題はありません。が、「思考錯誤」のこの四字文字はな

          試行より思考の錯誤

           失敗

           お寺の境内で古本市があり、そこで何冊かの本を買いました。そして、気にはなったのですが買わなかった本があります。それはロビン・ギル著『英語はこんなにニッポン語』(ちくま文庫)です。これなら図書館にもおいてあるだろうと思ったのです。  数日後、図書館に行って検索したのですが、ありませんでした。残念。 書店へ行き、目録を調べると、なんと、品切れ。  やはり、買うかどうか、迷ったときは、買っておくべきですね。(もちろん懐具合にもよりますが)  人から言われたり、また、言ったり

          「私、僕、俺」

           5月1日の朝日新聞 「 ひ と 」の欄  富士通女子バスケットボール(リーグ優勝しました)のヘッドコーチBTテーブスさん’(カナダ出身)の紹介とインタービュー記事が掲載されていました。インタビューの最後の発言を載せていました。  「きょう、(人称)代名詞を三つ使っているね。私、僕、俺」  日本語は独学。  大変な努力をされておられることは想像に固くありません。  言語の習得には動機、目的が極めて重要であるのは改めて言うまでもないことですね。  一人称は単数、複数

          「私、僕、俺」

          簡略化?表現

           先日、テレビを見ていて、ちょっとした衝撃というか、思わず「面白い !」とおもった事がありました。  それはある若い俳優さんがインタビューに答えていった、その言葉、いいかたです。    「カコイチ、難しかったですね。」  「今までで一番難しかった役」だったというのを「過去一」と表現したのです。  「過去一」という言い方が、若い人たちの間では珍しくもないのかもしれませんが、私には新鮮に聞こえました。伝えたいことを簡潔に表しています。  「今までで一番」と「過去で一番」

            「潺 潺」

           今『星を見る人』(恩田侑布子著 春秋社)を読み始めたところです。副題が「日本語、どん底からの反転」とあり、それに惹かれたのです。  そして、いきなり「潺潺」という言葉が出てきました。初めて見る漢字です。  「せんせん」とルビが振ってあります。大国語辞典をひくと「《形動タリ》浅い水がよどみなく流れるさま。また、その音をあらわす。さらさら」とあります。 潺潺が使われていた文章を記します。 「全身から潺潺たる泉のような感情が沸き立っていた」  なんとなく、著者が表現しようと

            「潺 潺」

           「国境」は「こっきょう」それとも

          先々週、雪国の「機関車」について書きました。 「雪国」についてもう一つ。 「国境」のよみは「こっきょう」なのか「くにざかい」なのか。 これまで色々と論じられています。 中村明の『語感辞典』をみて、ある程度すっきりしました。 「くにざかい:国境」について次のように記載されています。 「・・・「こっきょう」より直線的なイメージはなく、境界線の内側まで含む面としてとらえて・・・」 「こっきょう:国境」は「・・・「くにざかい」より厳密な感じがあり線的なイメージでとらえやすい・

           「国境」は「こっきょう」それとも

          モダンジャズの『花伝書』 五木寛之

           月刊図書 4月号の巻頭記事で 五木寛之がモダンジャズの『花伝書』の題でマイク・モラスキー著の『ジャズピアノ』について書いています。 以下に引用します。 「マイク・モラスキーの著『ジャズピアノ』はモダンジャズの世界における『花伝書』といってもいい本だと思う。 (中略) ・・・理論書でもあり、同時に文字によるライブ演奏でもあるこの本に出会ったことで、私の音楽観は確実に変わった。  日本語の文章が、ジャズピアノのライブ演奏を聴いているような感覚を与える可能性を持つことを、私は

          モダンジャズの『花伝書』 五木寛之