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第8回目 Saul Bellow "A Theft" を読み終える(4th)。翻訳物では物足りないという考えを支持する記事を見つけ、元気付けられました。

<翻訳本の出版に携わる人々のコメントを見つけた>

翻訳を仕事とされている方や翻訳本の出版企画、編集を仕事とされている方々の本音を漏らすかのような記事を季刊誌「大学出版」No.73, 2007.12に見つけました。青木薫氏が正直に科学関係本、それも一般読者向けのものの和訳においてすら自身の専門知識不足故に満足できる翻訳文が作れない旨を記されています。ケンプリッジ大学出版の日本事務所の高浜美恵子氏は英国本社側の考えだとして翻訳権を与えたところで完成した翻訳本の中身のことにはほとんど意見を挟まない。依ってケンブリッジのロゴの使用を翻訳本の出版社に認めることはまず無いと明言されています。小説の和訳文が科学出版物のそれより有用だといえると私は思いません。

<「窃盗事件」拾い読み:男・イシエルの見苦しさ?>

(Page 144 ページ末の4行【注】アイゼンハワーがウォルター・ルード病院に入院した時には氏の内臓の図が新聞などにでかでかと報道された旨の話に続く部分です。)
"… then I'm glad there are no diagrams of my vitals in the press and the great public isn't staring at my anus. For the same reason, I've always discouraged small talk about my psyche. It's only fair that Francine shouldn't have valued me. I would have lived out the rest of my life with her. I was patient. …"
【和訳】「・・・私の臓器の解説図画が新聞に掲載されないこと、世間の人々が私の尻の穴を覗いていたりしないことを有難いと思います。それと同じ感覚で私は自分の内心を周囲の人たちとの間で話題にはしなかったのです。フランシーヌが私の価値を知ることが無かったとしても彼女に何ら悪いところはないのです。私はこれから先の人生をフランシーヌと過ごすことにしていたのです。私は寛容でした。・・・」

【私の見解】男女が一緒に暮らす理由を真面目に考え直すことを読者は求められます。どうでしょう?

<「窃盗事件」拾い読み:オーストリア娘、オ・ペア・ガールがニュー・ヨークで遂げた成長>

(Page 168、4行目から) (オ・ペア・ガールとしてクラーラの家にいたジーナがそこを出て数週間の後、二人がやっと再会し話し込んでいるシーン)
Then she leaned toward Gina--two heads of fine hair, each with its distinct design. The girl put up her veil. "Now, Gina … tell me," said Clara.
  "The ring looks wonderful on your hand. I'm glad to see it there."
No longer the au pair girl waiting to be spoken to, she held herself like a different person--equal-equal, and more. It was a great thing she had done in America.
【和訳】続いてクラーラはジーナの方に自分の頭を寄せたのです。綺麗に仕上げられた髪の頭が二つ、双方とも薄い茶色ながら、それぞれ独自のデザインの頭が二つ、寄り合っていました。若い方の女性は顔のベールを上方に折り上げていました。「ジーナ、・・・では、聞かせてください。」とクラーラは切り出したのでした。
  「指輪があなたの指で一層生えますね。あなたの指に納まった指輪を見ることが出来て本当にうれしいです。」
  彼女の話し方はオー・ペア・ガールという立場にあって、雇人に話しかけられて初めて話し始めるやり方からすっかり変化していました。彼女は当時とハッキリ違った態度を獲得していました。対等の話し相手です。いやそれ以上かもしれません。それは彼女がアメリカに来たことで獲得・確立した彼女の大きな成果でした。

【私の見解】一人で他所の国に住まい、苦労・経験をし成長する若い人に共通するよろこびでしょう。違いますか?

<Study Notes の公開 ”A Theft Part 4” from Saul Bellow Collected Stories>

今回の「A Theft, Part 4」 は原書のPage 154 - 173に対応します。「A Theft 窃盗事件」はこれで終了です。次のファイルのダウンロードは無料です。