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Teenager Forever ②

作・高山遥/登場人物:9人/時間:十分

【場所】
 某公立高校の体育館ギャラリー
 複数の教室、空間を行き来する。

【人物】
 ・マユミ     ・ケント
 ・サキ      ・ケイスケ
 ・宮田      ・ヨシキ
 ・ムネト     ・先生
 ・ユリ

【1】

高校二年生秋の球技大会。十月ごろ。男子バスケの決勝戦。
女子生徒の黄色い歓声とスポーツ男子がコートを駆け回る音とともに開幕。
ギャラリーにはすでに他の競技で敗北したマユミ、サキ、宮田が観戦している。
3人はあまり盛り上がっていない様子。

マユミ なに今の。
サキ  早すぎて見えなかった。
マユミ うわあ・・・また点とられちゃったよ。
サキ  うそ、入った今。
マユミ 入った入った。ほら、2点プラスされてる。
サキ  えなんで。1点じゃないの。
マユミ バスケは一回シュート決まったら2点だよ。
サキ  そうなの。
マユミ 知らなかったの?
サキ  いやバスケのルールよく分かってないから。
マユミ え、バスケ中学校でやってないの、体育と  

サキ  いや私ずっと走り回ってただけだったから
    (笑)
マユミ (笑う)それ私も。え、じゃあ今までずっと
    分かってなかったってこと。
サキ  うん。いつの間に2点いれたんだろって思っ
    てた。
マユミ そうだったんだ。(笑)
サキ  うん。

マユミ やっぱかっこいいなあ、バスケって。
サキ  何急に。
マユミ ずるいよ。あんなにキャーキャー言われちゃ
    ってさ。
サキ  そこ(笑)
マユミ なんか、卓球全然応援なかったよね。
サキ  ねえ。
マユミ なんか格差感じちゃうよね。

ここらへんでムネトやってくる。
二人から少しだけ離れたところに腰を下ろす。

マユミ めっちゃ盛り上がってるなあ。
サキ  良かったの?ここで。
マユミ いいの、ノリが違うし。
サキ  そっか。

サキ  あれ、ムネト。
ムネト あ、おお。
サキ  下行かなくていいの。
ムネト いやあ、いい。
サキ  そう。え何出てたの、競技。
ムネト バド。
サキ  ああバドか。
ムネト そっちは?
サキ  卓球。
マユミ あれ、ムネト君てバスケ部じゃなかったけ。
ムネト ああ、もう辞めたから。
マユミ あれ、辞めてたんだ。
サキ  もう1か月くらい前だよね。
ムネト うん。
マユミ 初耳だわ。え、なんで辞めちゃったの。
ムネト いやあ、それは
サキ  色々あったんだよね。人間関係的なやつで
マユミ ああね・・・ごめんなんか余計なこと訊いち
    ゃって。
ムネト いや大丈夫。
マユミ でもバスケってなんかさ、あれだよね。上手
    い人が全部ボール回しちゃうから私たちみた
    いな運動音痴はやる事ないよね。
ムネト うんまあそういうところあるかもね。
サキ  あの7組の人すごいうまいよね。
マユミ え?
サキ  あの、ああ、いまドリブルしてる人。
マユミ ドリブルは知ってるんだ。
サキ  そこまでバカじゃないよ(笑)
ムネト ああケントか。
サキ  ケント?
ムネト バスケ部のなかでもずば抜けて上手い。
サキ  へえ。
ムネト この高校もスポーツ推薦で入ってるから。
サキ  へえそうなんだ、すごいね。
マユミ やっぱりさあ、私思うんだけど、
サキ  何急に。
マユミ いや、やっぱり球技大会ってさ、結局運動で
    きる人が楽しいだけやんって思うのよねえあ
    たしは。
サキ  まあ、確かにねえ。
マユミ いま決勝に残ってるのもみんなバスケ部か他
    の運動部の人ばっかじゃん。
サキ  うん。
マユミ その点文化部はさ、いいよねえ、平和で。こ
    うどんな人でも受け入れてくれる包容力?み
    たいなのあってさあ。
サキ  そうだね・・・
ムネト あれ、二人は、部活同じ?
マユミ あ、うん。演劇部。
ムネト ああそっか、演劇部か。
サキ  ・・・
ムネト 演劇部の人って大きい声出しても声枯れない
    のすごいよね。
マユミ ああ、まあ発声練習してるからね。
ムネト 運動部大声出してすぐ声枯らすから。

サキ、立ち上がる。

マユミ え。
サキ  ああ、ちょっとトイレ行ってくる。
マユミ ああトイレ・・・。

マユミ うらやましいな。
ムネト え?
マユミ いやあ、あんなキャーキャー言われたことな
    いなって思って。
ムネト まあ、文化部は、そっか。でも文化祭面白か
    ったよ。
マユミ ああ、ありがとう。
ムネト 県大会行ったんでしょ。
マユミ そうそう、負けちゃったけどね。
ムネト でもすごいやん。・・・あれ、でもマユミ出
    てたっけ?
マユミ 私は、裏方だから。台本書いてたの。
ムネト あそうなんだ。すごいな。
マユミ いやあ、悔しかったな。
ムネト そっか。一応それで勝つと、こうブロック大
    会?があって?
マユミ そうそう。ブロック大会、全国大会って進ん
    でくの。で、今日がブロック大会の初日。
ムネト ああ~、
マユミ 県大会もし金賞とれてれば、今日は公欠で卓
    球なんてやらなくても良かったのになあ。
ムネト それは悔しいなあ。俺やったら今日休んでる
    わ。
マユミ 正直昨日の夜ちょっと思った。さぼろっかな
    って。
ムネト (笑う)

マユミ 宮田さんてさ、何出てたっけ?
ムネト え?
マユミ ・・・
ムネト ああ、え、見てないなあ
マユミ あんまりこういうの参加してるイメージない
    よね。
ムネト 保健室に居るでしょいつも。
マユミ あ、そうなの。
ムネト うん。

ここでサキ戻ってくる。

サキ  あれ、試合終わった?
マユミ まだまだ。
サキ  良かった。
マユミ 18対12 勝ってるようちら。
サキ  さすが、やっぱり友永居るからなあ
マユミ 友永君てでもバレー部だよね
サキ  うん。
マユミ すごいよねえ、何でもできて。
サキ  ねえ。

マユミ ちょっと、飲み物買ってこよっかな。
サキ  あたし行こっか。
マユミ え、いいよいいよ、
サキ  いやいや、
マユミ じゃあ、一緒に。
サキ  うん。

二人はける。

宮田が近寄ってくる。

宮田  あたしさ、バド、出てたんだけど、覚えてな
    い?
ムネト ええ?・・・俺?
宮田  覚えてないか・・・
ムネト え、あ、いや、ええと・・・ああ、でもたし
    か、えっと・・・
宮田  いいよ、無理に思い出そうとしなくても。
ムネト ・・・
宮田  ・・・
ムネト あ、でも
宮田  いたっけ、って思ってるでしょ。
ムネト あ、いや。
宮田  まあそうだよね。
ムネト だって、いつも、ほ、保健室に居るでしょ。
宮田  うん。
ムネト あ、でもたまに来てるよね、教室。宮田さ 
    ん、授業で同じグループになったこともある
    のに、気づかなかった。ごめん。
宮田  いいの、そんな。ごめんなんて。・・・嬉し
    い。
ムネト え?
宮田  久しぶりに名前呼ばれた。
ムネト ああ・・・
宮田  私、保健室登校でしょ。だから、基本的に名
    前呼ばれないの。出席とったりしないから。
ムネト ああ・・・
宮田  ごめんね、いきなり話しかけて。
ムネト ああ、いや、いいんだ。
宮田  私、二人だったら、話せるの。ちゃんと、人
    と。
ムネト そうなんだ。
宮田  うん、喋れてるでしょ?ちゃんと。
ムネト うん笑喋れてるよ。
宮田  良かった。

宮田  私、今日ケント君に告白するの。
ムネト へ。
宮田  今日体育館倉庫裏で会うの。昨日連絡して
    さ、会ってくれませんかって。
ムネト 今日。
宮田  そう。
ムネト なんで、それを、俺に・・・?
宮田  誰かに話しとかないと、落ち着かないじゃ
    ん。いくら、振られるって分かっててもさ。
ムネト ・・・
宮田  ムネト君て、そういうこと話しても大丈夫な雰囲気?あるから。
ムネト そう笑

サキ、マユミ帰ってくる。
宮田、すっと元の離れた位置に戻って座る。

サキ  あれ、負けてない?
マユミ ホントだ。
サキ  もうなにやってんのムネト~
ムネト え、俺?
マユミ なんでそんなニヤニヤしてんのよ。
サキ  うわあ。
マユミ これ逆転むずかしいね。

マユミ 今日のご褒美アイスだよ。
ムネト え、うそ。たい焼きじゃないの。
マユミ 今先生クーラーボックス運んでたから。
ムネト ええ、季節、逆だよね。
マユミ 逆?
ムネト だって前の球技大会六月なのにたい焼きだっ
    たじゃん。
マユミ ああ確かに。
サキ  今日寒いもんね、ちょっと。
ムネト それは私らが動いてないだけでしょ笑
サキ  そっか。

体育館騒がしくなる。

ムネト え、ケント。
マユミ どうした?
サキ  けが・・・
マユミ ええ、大丈夫かな。
ムネト ケント。・・・・?
マユミ え・・・
サキ  え、これヤバいね。
ムネト ケント・・・

【2】
振り返ると宮田はいない。
照明変化。蝉の鳴き声がかすかに聞こえてくる。夏になったようだ。
宮田のモノローグ

宮田  軽度の脳出血で倒れたケント君はそのあと病
    院へ運ばれて何とか一命をとりとめて私は告
    白どころじゃなくなって、一か月くらいで学
    校に戻ってきたみたいだけど、結局もう会う
    ことはなくて、廊下ですら見かけることはな
    くなった。大会のあと先生がくれたご褒美の
    ガリガリ君は味がしなくて、それからしばら
    くは保健室にも行かなくなった。

ユリが姿を見せる。

ユリ  サエちゃん、もう行こうよ。

宮田  春が近づいて、ユリって子と出会って、

ユリ  ねえ、行こうよ。

宮田  私のことを名前で呼んでくれたのはその子が
    初めてで、なんか、その子がいれば、その子
    さえいれば、他にどんな人が混じってても一
    緒に話ができるような気がした。

ユリ  ねえ、早く。

宮田  え、あ、ごめん。

ユリ  もう掃除の時間だよ。いこ。

宮田  気づけば、私たちは18歳になっていた。

チャイムの音。生徒たちの声。
ユリ「もうなにしてたの」宮田「ごめんごめん」などと言いながら退場。
入れ違いにケント、ケイスケ、ヨシキ、ムネトが掃除用具を手に入ってくる。
照明フラットな感じに。

ケイスケ え、試合中にだったんだ。
ヨシキ  いやもうマジでビビった。俺ドリブルして
     て、二人くらい後ろと横からブロックしよ
     うとしてきたの。で、あ、やばいって思っ
     て、ケント!と思って探してもいなくて、
     でなんかざわざわし始めたからなんだ、と
     思って見たら倒れて。
ケイスケ それはビビる。
ケント  いやあ、俺倒れてからのこと全然覚えてな
     いんだよなあ。
ケイスケ でも逆に覚えてたら怖いっしょ。
ヨシキ  おい、今日ゴミ俺ら。(ゴミ袋をケイスケに渡して)
ケイスケ あ、やった。
ヨシキ  どんな感じなの倒れるって、
ケント  いやあ、なんか苦しいとかつらいみたいな               
     感じじゃなくて、むしろ気持ちいい。
ケイスケ 気持ちいい。
ヨシキ  へええ。
ケイスケ 気持ちいいと言えば清水(童貞)卒業した
     って、ついに。
ヨシキ  は、まじで。
ケイスケ まじまじ。
ヨシキ  あの清水が付き合ってるのってあの三組の
ケイスケ そうそう、ユミカちゃん。

ケイスケ、ヨシキ喋りながらゴミ捨てに行く。
教室にはケントと、ムネト。
黙って掃除を始める。
やや間があって

ケント  ムネトってさ、進路どうすんの。
ムネト  え?
ケント  やっぱ、県内?
ムネト  県外出ようかなと思ってる。
ケント  そっか。
ムネト  東京。
ケント  東京かあ。いいな。
ムネト  ・・・スポーツ推薦で行くの。
ケント  いや、一般かな。
ムネト  あれ、一般で行くんだ。
ケント  うん。・・・もうバスケ、辞める。
ムネト  ・・・ああ、そう・・・。

ケント  お前、まだ怒ってるの。
ムネト  え。
ケント  まあそりゃ起こるわな。部活内不倫だもんな。
ムネト  不倫じゃねえし。
ケント  ・・・ごめん。
ムネト  あいつの彼女と俺が二人でいたのは文化祭
     の打ち合わせで...
ケント  (遮って)ああ、ああ分かってる。
ムネト  ・・・
ケント  分かってるよ。
ムネト  ケントはまだ続いてるの。
ケント  うん。
ムネト  球技大会の後さ、・・・宮田さんが・・・
ケント  ああ、それなら
ムネト  え。

別の場所からユリと宮田歩いてくる。

ユリ   それは、残念だね。
宮田   ・・・
ユリ   でも、しょうがないか。
宮田   うん。
ユリ   次があるよ。次が。

ケイスケ、ヨシキ戻ってくる。

ケイスケ ああ~だるかったあ~
ヨシキ  まじで。
ケント  何が。
ケイスケ いやこれ分別ちゃんとしてないって森本が
     ガミガミうるさくてさあ。
ヨシキ  (笑う)
ケイスケ サッカーぶなんだからちゃんとしろって、
     いやサッカー部関係ないだろって。
ケント  森本顧問か。
ケイスケ そうそう。
ヨシキ  細かいよなああの人。

先生、入ってくる。
先生   おいお前ら掃除してるんやろな。
ケイスケ はい、してますしてます。
ヨシキ  いやもう余裕すぎますねここの掃除。
先生   じゃなんで手ぶらなんや。
ケイスケ いや、いまゴミ捨てに行ってたんで、
ヨシキ  今からやります。

ケイスケ、ヨシキ、急いで雑巾がけを始める。

ゆっくり照明が変わると、舞台上の別の位置にマユミとサキ。
こちらも掃除中らしい。

マユミ  まだ気にしてんの。
サキ   え。
マユミ  べつに負けたのはサキがセリフ飛ばしたか
     らじゃないって。そもそも脚本でもう負け
     てたし。
サキ   ・・・・
マユミ  演技も下手だったしね、うちら(笑)
サキ   ・・・
マユミ  来ないと思ってた。
サキ   え。
マユミ  球技大会。
サキ   なんで。
マユミ  だって、中部大会初日だったでしょ。
サキ   そんな、その日だけ休むなんてしないよ。    
     休んだら余計しんどくなるから
マユミ  賢いね。
サキ   え。
マユミ  私は正直ちょっとサボろうかなって、思っ
     た。
サキ   でも、来てよかったでしょ。
マユミ  卓球はやりたくなかったけど笑。

♪ドラマ/羊文学
再び宮田のモノローグ。
後ろではかすかにサキとマユミの話声が続く。

宮田   先生がご褒美にくれたガリガリ君は味がし  なくて、私を初めて名前で呼んでくれたのはユリって女の子で、

ユリ   サエちゃん。

宮田   気づけば、私たちは18歳になっていた。

ユリ   サエちゃん、遊ぼ。

宮田   18歳になっていた

ムネト  おい。
ヨシキ  ・・・
ムネト  掃除くらいさ、ちゃんとやれよ。
ヨシキ  ・・・

宮田   18歳になっていた。

見渡すと不穏な空気のまま別れるムネト、ケント、ケイスケとヨシキ。
楽しそうに話すマユミとサキ。
ユリに誘われて一緒に駆け出す宮田。

音楽徐々に大きくなっていき。

━幕━

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