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詩の世界

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#海

【詩作】海へ

【詩作】海へ

寄せては返すさざ波で
静かに私を満たす海

少しばかり恥じらうように
水面を小刻みに揺らしながら
淡く囁く波の音は
次第に熱を帯びてゆく

やがて最も高みに達した波濤は
荒々しく私の洞穴を貫き
迸る真白な飛沫は
未知なる宇宙の奥へ――

悶え叫ぶ呼吸が尽き果て
再び碧い静けさが訪れた時
大理石のような煌めきで
あなたの水面は光り輝く

ああ 海よ
私の愛しき海よ

あなたの歓喜の汗と
愛に溢れた接

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【詩作】邂逅 ―reprise―

【詩作】邂逅 ―reprise―

異国の空を舞う鳥は
淋しさの尽きるまで
西へ 西へと
飛ぶという

愛の喪章を胸に
地の果てへ旅立ち
孤島の切り立つ崖に
降り立てば

春の波濤は千々に砕けて
泡沫(うたかた)に消えゆき
悠久の空の下には
碧(あお)く光る海

寄せては返す
愛おしさの記憶を
海鳥たちよ
運んでおくれ

一度でも愛した心は
愛を知らないよりも
海がこんなにも碧い訳を
知るだろう

ああ 海よ
大いなる腕に抱かれて

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【詩作】邂逅

【詩作】邂逅

愛と別れて
一人旅立ち
最果ての孤島に
降り立てば

異国の海は
果てしなく
碧(あお)い光で
私を抱(いだ)く

大いなる腕(かいな)の中で
海からの囁きを
私の胸は
確かに聴いた

一度でも
愛を知ったことを
印章に深く
刻みつけて

愛した時間(とき)が
決して
泡沫(うたかた)の夢では
ないように

体中をめぐる
歓(よろこ)びに
打ち震えた魂を
海へ返す――