映画『スティルウォーター』(2021年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『スティルウォーター』は、
服役中の娘の無実を晴らすためにフランスに乗り込むアメリカ人父を描くサスペンスです。
異文化のなか孤独な戦いを強いられる父と手助けするフランス人母娘。ヒーローではない父による娘の救済は叶うのかー。あえて事件を見えにくくし主人公らの内面に迫る展開が見どころの映画です。
キャスト
・マット・デイモン(ビル・ベイカー)
娘の無実を晴らそうとする父
・ アビゲイル・ブレスリン(アリソン・ベイカー)
ビルの娘 留学先のフランスで服役中
・カミーユ・コッタン(ヴィルジニー)
ビルを助けるフランス人女性
・リルー・シュヴォー(マヤ)
ヴィルジニーの娘
映画『スティルウォーター』の見どころと感想
アメリカ、オクラホマ州に暮らすビル・ベイカー。その娘アリソンは留学先のフランス、マルセイユである事件の容疑で逮捕され収監されて早5年が過ぎています。なお4年の刑期を残すアリソンは無罪を訴えていますが残された法的手段はもはやない状態。
そんな娘を救うためひとりフランスに渡るビル。面会に訪れたビルにアリソンは弁護士に宛てた1通の手紙を託します。しかし弁護士からこの手紙で裁判のやり直しはできないと告げられます。
娘を失望させたくないと思ったビルは、なんとか自力で無実の証拠を集めようと動き始めます。
しかしビルはまったくフランス語ができず英語で押し通そうとして空回り。
そんなビルが偶然知り合ったフランス人の母娘。母ヴィルジニーに通訳を頼み、8歳の娘マヤとは言葉が通じないながら心を通わせていきます。
しかし、証言を求めた関係者たちはアメリカ人のビルとは会話すらしようとしない。一向に再審の見込みが立たないことにイラつくアリソンとも衝突するビル。
ようやく一人の男の存在をつかみー。
評)異文化社会の中で何があったのか、何がどう見えていたのか
娘の危機を救うために立ち上がる父、といえば、リーアム・ニーソンの演るような身体を張ったヒーローものイメージしますが、この映画はまったく違います。ネタバレ禁ですがこれだけは言っておきたい。
舞台はフランスのマルセイユ。移民の多いこの都市(映画『アテナ』のような団地に半グレが跋扈)は人種も文化も多様。労働者や貧困層も多く、反米感情を持つ人も少なくありません。
主人公ビルは典型的な保守派のアメリカ人。当時大統領だったトランプ氏を支持しているようなプアホワイトを思わせる人物です。英語が通じず、そのことを笑われ、暴力の標的にまでされる。それでも自分が中心、自分こそが正統派であるという意識が垣間見えるビル。
ビルはいったいどんな人物なのか。竜巻で壊滅状態となった地元スティルウォーターで片づけ作業に従事。奥さんはどうしたのか? 娘はなぜ距離をおいているのか?
このあたりのことが徐々に明らかになる一方、娘アリソンの事件にも隠された真相がありそう(*)と思わせる。終盤まで緩むことのない緊張感はなかなかのものです。
そんな緊張感をほぐしてくれるのがリベラルなフランス人母娘。フランス語しか話せない8歳の娘マヤと英語しか話せないビル。2人は言葉を教え合いながら、言葉以上の絆を築いていきます。
それだけに、ラストはちょっとかわいそうなんですが……。
あえて描かれていない部分が多く、異文社会の中、ビルやアリソンに何があったのか、何がどう見えていたのかに思索を広げさせられるこの映画。監督は『スポットライト 世紀のスクープ』他、硬派エンターティメントの名手トム・マッカーシー監督。主人公ビルを演じるのはマット・デイモン。娘にアビゲイル・ブレスリン。この2人の熱演も見ごたえ充分です。
また、この映画はアメリカ人女性アマンダ・ノックスの冤罪事件(ペルージャ英国人留学生殺害事件)に着想を得ていると指摘され、ノックス本人は本作の内容(上記*)に抗議しているとも言われています。
社会派サスペンスの秀作、映画『スティルウォーター』 ぜひ。
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