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人間ってそんな簡単な存在じゃない/広島弁のキリスト/第三極の動きに注目

2021年11月1日

11月、今年もあと2ヶ月。ホントに日々があっという間に過ぎていく。何にもしていないのに過ぎていく。いや、何もしていないことはないのだけれどそう感じるお年頃なのだろう。衆院選も終わったことだし、ふたたび平常モードで映画三昧、読書三昧とまいりますか。

映画『ファーザー』がすごかった。今年のアカデミー賞で亡きチャドウィック・ボーズマン(『マ・レイニーのブラックボトム』)を抑えてアンソニー・ホプキンスのオスカー受賞で話題となったこの映画。認知症オジイの話で「ホプキンスの卓越した演技がー」という事前情報がかえって見る気を削いでいた。

ヒューマンヒューマンしてそうで、泣かせにかかってくるんじゃないかと思ってたら、あらまビックリ。ある意味ホラー。もちろん上質のヒューマンドラマには違いないけれど、共感とか共存とか「わかり合う」ことに意味を求めすぎる風潮を嘲笑っているかのように思えた。

人間ってそんな簡単な存在じゃない。簡単に「わかり合える」なんて言うな、と。いったいどんな人が撮ったのかと思ったらこれまたビックリ。フランス人劇作家のフローリアン・ゼレールはまだ42歳。舞台用の脚本をホプキンスにあて書きしたこの映画が監督デビュー作である。

ホプキンス、オリヴィア・コールマンほか脇のキャストも良かった。


『仁義なきキリスト教史』を読む。キリスト教の歴史をやくざの世界になぞらえた小説で著者は賀神恭介氏。登場人物は広島弁。イエスの言葉もこうだ。

「なんじゃ言うてもの、いちばんはヤハウェ大親分のことを全力で愛することじゃ。親を大事に思わん極道なんぞおらんけえの。で、二番目に大事なんは自分のことのように隣人を愛することじゃのう。ヤハウェ大親分の言いつけにも色々あるけえど、これより大事なもんはありゃせんわい」

『仁義なきキリスト教史』より

物語の面白さもさることながら、各章末には解説も加えられているのでキリスト教の正しい歴史の理解にもなる。宗教の持つ暴力性といった一面がよくわかる1冊。おすすめです。


いちおう触れておきましょう、衆院選。
自民党は議席を減らした一方、対抗馬と目された野党共闘も支持を集められず、特に立憲民主党は議席を減らす結果となった。

そんななか躍進したのは日本維新の会。関西では圧倒的な強さを見せた。
右傾化する自民もイヤだし、かといって立民、共産ほどの左派もイヤだ。そういう中道の指示が維新に集まったのだろう。

政策は自民と重なる部分も多く「新自由主義的」と言われる維新だが、選挙後代表は「自公」との連立は「まったくない」と明言した。第三極としての動きに注目したい。

現役の幹事長ほか、失言や疑惑の持たれた大物議員が小選挙区で敗れたことも覚えておきたい。本人たちは「説明は尽くした、疑惑は晴れた」と思っているようだが、一度失った信用を取り戻すのは容易なことではないということだろう。ま、それでも比例で復活。のど元過ぎれば―、と思っているのかもしれないけれど。


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