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映画『希望のかなた』(2017年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:希望のかなた
原題:Toivon tuolla puolen
製作年:2017年 フィンランド・ドイツ
監督:アキ・カウリスマキ

映画『希望のかなた』は、

シリアからの難民青年と、彼をめぐる人々、環境をシニカルに描くコメディタッチのヒューマンドラマです。監督はフィンランドの名匠アキ・カウリスマキ。

最小限に抑えたセリフとそれを補う音楽、仏頂面な人々が見せるちょっとした優しさに「やっぱり人間っていいな」と思わされる1本です。

キャスト

・シェルワン・ハジ(カーリド)
シリアからの難民

・サカリ・クオスマネン(ヴィクストロム)
レストランのオーナー

・イルッカ・コイヴラ(カラムニウス)
レストランの古参の従業員

・ヤンネ・ヒューティアイネン(ニュルヒネン)
レストランの古参の従業員

・サイモン・フセイン・アルバズーン(マズダク)
難民収容所でカーリドと親しくなる

・ニロズ・ハジ(ミリアム)
カーリドの妹 兄とはぐれてしまう

映画『希望のかなた』の見どころと感想

(C)SPUTNIC OY, 2017

フィンランド、ヘルシンキの港に停泊する貨物船から油まみれで出てくる青年カーリド。戦禍の故郷シリアから逃れてきたカーリドはこの国で難民申請をします。

カーリドには生き別れになった妹ミリアムがおり、その妹を探しあてたい。が、難民申請は却下。トルコ経由で強制送還されることになったカーリドは、隙を見て逃走します。

一方、衣類のセールスマンのヴィクストロムは酒浸りの妻にウンザリし家を出、廃業を決意します。在庫のシャツを売り払ったお金をもとにポーカーで大儲け。そのお金でレストラン「ゴールデン・パイント」を買い取ります。

ある日レストランのゴミ捨て場に身をひそめるカーリドを発見したヴィクストロム。言い争いから殴り合いになるものの、カーリドの素性を知ったヴィクストロムは、レストランのスタッフとして雇い入れることに。

カーリドのために偽造の身分証まで作り心通わせていくヴィクストロム他従業員たち。そして妹ミリアムが見つかったと連絡がありー。

評)「人間たるもの、このくらいの余裕をもって生きたいな」と思わされる1本

難民問題というヘビーな世界を描きながらも、そこで助け合って生きる人々の姿は実にユーモラス。ヴィクストロムほか、登場人物はみな仏頂面でニコリともしない。もちろん気の利いたことなんて言いません。そんな人たちがカーリドを受け入れ、結構な面倒事も厭わないのだから、やっぱり人間っていいよな、と思わされるのです。

アキ・カウリスマキ監督は、小津安二郎監督の影響を受けたことでも知られる日本びいき。料理も接客も全然ダメなレストランに客が来ないことに業を煮やしたヴィクストロムが、従業員らと話し合った結果「寿司屋」に鞍替えするくだりは大笑いです。寿司の参考に、なぜか池波正太郎『真田太平記』や藤沢周平『孤剣』の文庫本を買い込む。そして、わさびてんこ盛りのめちゃくちゃな寿司を作る。もう、シニカルを通り越してギャグ。日本に向けた愛ですよ。そして犬好き。

が、こんなユーモラスで愛すべき人々も、難民問題や人種差別といったグローバル化の負の側面に立たされているという現実を突きつけます。シリアでは明らかに紛争がおきているのに、それを認めないフィンランド当局。アラブ人とユダヤ人の区別もつかないようなアホなネオナチに狙われるカーリド。

不寛容な社会の中でどう生きるか。無駄にいい顔をしたり、胸を打つようなことは言わないけれど、お互いを認めあう人々の優しさに「人間たるもの、このくらいの余裕をもって生きたいな」と思わされる映画『希望のかなた』。おすすめです。


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