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【映画日記】「罪悪感」……。映画『天の怒り』

2024年8月17日

今年も墓参りも何もしないお盆が過ぎた。罰当たりなヤツと思われるかもしれないけれど、亡母をはじめご先祖さまには24時間365日、いつでも心の中で感謝している。神様、仏様、どうぞお怒りになりませぬように……。

映画『天の怒り』(2022年)

人気推理作家クロスターに雇われていた女性筆記者のルシアナ。
10年前、ルシアナはクロスターに無理矢理キスをされたと訴えた。即時示談金が支払われ解決するが、クロスターの妻子が亡くなった(精神的に不安定だった妻が幼子を殺害し、自死)ことを知らされる。

ルシアナはその後相次いで起こる自分の家族の死がクロスターの復讐ではないかと疑い始める。

ルシアナは旧知の記者に力を借りてクロスターを追い詰めようとするが―。


作中に象徴的に登場する「目には目を歯には歯を」 というハンムラビ法典の有名な言葉。受けた傷の対価は同程度のものをというもの。が、その重さは計り知れない。「同程度」を誰が決めるのか、法か?それとも神か?

小説「ルシアナ・Bの緩慢なる死」(ギジェルモ・マルティネス・著)の映画化作品で主人公の一人が作家という設定だけあって、非常によくできたプロット。狂言回しの記者を加え、10年前から現在を行きつ戻りつしながらそれぞれの背景を描く展開に引き込まれていく。

中年作家がいやらしいことをしよう(ホントに視線がエロい!ちょっとアル・パチーノ風。パチーノ、すまん)として訴えられたくせに、推理作家としての才能を武器に完全犯罪、クソっ、という一意的な見方にはとどまらない。

クロスターの完全犯罪なのか、家族の死は単なる事故でルシアナの被害妄想なのか。曖昧に描かれる展開の中、自身も作家としてルシアナと仕事経験のあるの記者エステバンが疑惑をぶつけに来ます。そこでクロスターはルシアナの根底にある「罪悪感」について言及。クロスターの、そして原作者の深い洞察にハッとしてゾッとするシーンです。

この罪悪感こそが「天の怒り」なのか。
「目には目をー」の受けた傷の重さを決めるのはほかならぬ自分自身。
が、罪悪感という最も重いものを「天の怒り」として背負わされるということなのか。

ラストのクロスターの行動はエロジジイの完成形のように見えるけれど、あれはクロスターなりの自罰とも思えた。

ちょっと書きようがなかったので補足みたいでナンですが、記者エステバンのフアン・ミヌヒンが素敵、です。

映画『天の怒り』原題:La Ira de Dios
2022年/98分/アルゼンチン
監督:セバスチャン・シンデル
出演:ディエゴ・ペレッティ、フアン・ミヌヒン、マカレナ・アガチャほか





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