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『世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来篇』千野帽子 志は高く、心は狭く

「志は高く、心は狭く」
そんな小娘のための文学を紹介する『文藝ガーリッシュ』。こちらはその海外文学編です。

「小娘のためのー」といっても、若いお嬢さん方だけに向けられたものではありません。

今現在、わが身から溢れ出る「あぶらみ」や「えぐみ」を隠しきれない中年であっても、行く行くはガーリーな、ガーリッシュなおばあちゃんになる予定の私がぜひ読んでおきたいー、そんな文学作品たちが約60作品紹介されています。

ぜひ読んでみたい小説『エンジェル』

ぜひ読んでみたいと思った1冊がコレ。

『エンジェル』エリザベス・テイラー著

有名女優と同姓同名の作家の長編小説です。

主人公エンジェルは、どこからか仕入れてきた語彙を駆使して、装飾過多の文章を書くような少女。やがて大人になり、通俗ロマンス小説で人気作家になるのですが、その後の人生はその思い込みの強さから哀しいものにー。

この本(世界小娘文學全集)では詳しいストーリーには触れていませんが、エンジェルがどういう人物で、どんな小娘時代を過ごしてきたかを巧みに想起させます。

ノートに詩のようなものを書いた中学生時代を持つ女子は、意外に多いらしい。このとき、中学生の文章のロールモデルがどういうものであるかは、その子の文筆人生を決定する大きな要因です。(中略)人生いろいろですが、大半の子はどっかで憑きものが落ちて、そこまでの文章キャリアをリセットしてしまいます。しかしいまはブログなどというものがあるため、大人になってもこつこつと文を綴り続ける人も増えていることでしょう。リセットしなかった女子はどうなるか。

『世界小娘文學全集』より

で、この『エンジェル』を紹介しています。気になりますよ、これは。

”ブログなどというものがあるため、大人になってもこつこつと文を綴り続ける人もー”、などと言われてはー。

(後日読んだ感想はこちらです。)

評)ガーリッシュな読書は奥が深い

私自身は中学生当時ノートに詩を書くような女子ではなく、むしろそんな女子をバカにしていたタイプです。今でも「文芸オタク」っぽい人や「活字中毒」と自称する人を冷ややかに見てしまいます。

人間クサい読み物が好きなので、もしかすると「私、ガーリッシュじゃないのかも......」と心配になったのですが、その心配はいらない。「ガーリッシュな読書」というのは実に奥が深いようです。

「この作品は感動する」「泣ける」「大どんでん返しにビックリすること間違いなし」というように、読んだときの感想やリアクションがある程度決まっている作品を、その目的意識をもって読む。自分が共感できる小説(映画にも言えることですが)が「いい小説」であって、フレコミどおりに「泣けないもの」や「ピンとこないもの」は駄作だと言いきってしまう。というのは、ガーリッシュではないー男子っぽい読み方だと。

そうではなくて、「なんなの、この女」とか「どうしてこんなことしちゃうのかなあ。ぜんぜんわかんない」というように心をザワつかせる読書。文学作品に込められた「蜜」と「毒」の味わい方こそが、ガーリッシュな読書なのです。

とすると、松本清張を読んで悶々としていた中学生時代の私も、それなりにガーリッシュな読みをしていたのかもしれません。

期せずして読書の目的を考えることになったこの本。これを読めば、ますます本を読みたくなる、ますます本を読むのが楽しくなる、ますますガーリッシュになること間違いなしです。

たとえお嬢さんや小娘が出てこない話であっても、ガーリッシュに読むことはできるのです。

「志は高く、心は狭く」


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