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『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』香山リカ SNSへの違和感の正体

気持ち悪いかどうかではなく「気持ち悪いありき」のタイトル。不覚にもここに惹かれて読んだこの本。

「SNS疲れ」に代表されるようにストレスの一因となっているSNS。便利なはずなのに、いろんな人と繋がれて有意義なはずなのに、なぜストレスを感じてしまうのか。そこにある「気持ち悪さ」を精神科医の著者が紐解きます。

『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』の内容紹介

ツイッター、フェイスブック、LINE……。今やSNSは生活に深く浸透しているが、それに息苦しさを感じている人も多い。ネット上でのつながり、賞賛やその反対にある悪意や炎上。SNSへの違和感の正体と、SNSが変えつつある人間について鋭く迫る。

朝日新聞出版HPより

「つながり」から「陰謀論」まで

TwitterやInstagramにつながりを求める心理と、そこから拡大していくキャラづくり、ウソを含めた「盛り」、プチ正義感によるネット叩き、さらには極端な情報だけを信じ込んでしまうネトウヨや陰謀論などの生成プロセスまでを広く解説した本書。私が「自分語り」や「表面的な賞賛」「身内アゲ」などに感じる「うっすらとした気持ち悪さ」どころの話ではありませんでした。

が、この「うっすらとした気持ち悪さ」をうまく消化できないことが、ストレスや正義感の暴走といったより深刻な状況に走らせていくのでは?と、ちょっとヒヤリとさせられました。

SNSはどうなる? どう使う?

ではどうすればいいのか。この手の本には明確な答えはないのが常。「SNS以外のツールも持つべし」というありきたりな示唆は物足りなくもあるのですが、これはそれぞれが考えることなのでしょう。

とかく正否、善悪の観点でジャッチされやすいSNS上の発言。まっとうな批判でも誹謗中傷ととられることも多く、議論を避けるために明確な意見ととられない発信(私がうっすらと「気持ち悪い」と感じていた「表面的な賞賛」もコレですね)が増える傾向にあると。

6章「SNSは日本人をどう変えるか?」にあるように、SNSは長々と感想や思いを綴る場ではなく、「イイね!」や「いまこれ読んでます」という消費状況の発信の場と割り切ったほうがいいのかもしれません。「自己実現」とか「世界を変えよう」などを求めてしまうと、自分にも他人にも負担をかけてしまう。私はこう思うことで一時期よりも気持ち悪さを感じずにSNSを利用できるようになりました。

この本が書かれたのは2014年。7年が経った今、SNSはさらに気持ち悪くなっています。ストレスや問題を引き起こす心理がわかっていてもー、という現実のキツさを思い知る1冊でもあります。ぜひ。


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