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映画『過去のない男』(2002年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:過去のない男
原題:Mies vailla menneisyyttä / The Man Without a Past
製作年:2006年 フィンランド
監督:アキ・カウリスマキ

映画『過去のない男』は、

暴漢に襲われ記憶喪失になった男を描くコメディドラマです。
作風は変わらず時代も世界線も超えて温かい。円熟味すら漂わせておいて"初恋"と語らせるあたりもニクイ。そして犬ハンニバルが最高にカワイイ、アキ・カウリスマキ監督作品です。

キャスト

・マルック・ペルトラ
過去のない男

・カティ・オウティネン(イルマ)
救世軍のボランティア

・アンニッキ・タハティ
救世軍のマネージャー、バンドのヴォーカリスト

映画『過去のない男』の見どころと感想

フィンランドのヘルシンキ。野宿をしていた男が3人組の暴漢に襲われ重傷を負います。

助けられ病院に運ばれたものの、記憶を失ってしまい自分の名前すら思い出せません。

過去を失った男は地元の人の助けを得て海辺のコンテナで暮らし始めます。職安では身元がわからないため相手にされない。が、救世軍のバンドのサポートをする仕事に就くことに。

男は次第に生きる活力を取り戻しー。

評)何かと殺伐としてしまう現代社会にちょうどいい温かさ

冒頭、ほかのカウリスマキ作品ではスクリーンの枠外にあった暴力シーンが描かれていることにちょっとビックリさせられるものの、この映画でもカウリスマキ監督は社会の弱者、敗者たちを温かい視線で描いています。

この映画の主人公は記憶をがない。名前もわからない仏頂面の男(リーアム・ニーソンとホアキン・フェニックスと足したような風貌)です。

そんな男をこの海辺の街は温かく迎えます。
住むところを与え、犬(その名はハンニバル)の世話を任せ、仕事を与える。男の素性を探ったりしないのです。男はその恩に応えるようと心を開いていく。バンドにロックを教え、イルマとも親しくなっていく。

このなんてことのない展開がことさらジーンとくるのです。何かと殺伐としてしまう今の実社会。親切でさえも重くるしく感じてしまいがちですが、この温かさはちょうどいい。

そしてこの男、銀行強盗に巻き込まれたり、その強盗の願いをー、という出来事のなか身元が判明します。男の元の暮らしとはー。(ここはネタバレ禁にしておきましょう)

この男を終始支えるイルマにカウリスマキ映画ではおなじみのカティ・オウティネン。このイルマが「私の初恋」というくだりが好き。この歳での”初恋”に違和感があるんだかないんだかわからない感じが好きです。

もうひとつの好きは亡きマッティ・ペロンパーの写真がバーの壁に掛けられているところ。ニクイ。

犬ハンニバルもめちゃくちゃカワイイ(カウリスマキ監督の愛犬タハティ、2002年「パルム・ドッグ賞」受賞です!)し、ラストの寿司と日本の歌謡曲風音楽(クレイジーケンバンド、小野瀬雅生氏の楽曲です)もイイ。

今の日常に心が擦り切れそうになったときこそ見たくなる映画『過去のない男』 おすすめです。

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