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映画『サンストローク 十月革命の記憶』(2014年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:サンストローク 十月革命の記憶
原題:Solnechnyy udar
製作年:2014年 ロシア
監督:ニキータ・ミハルコフ

映画『サンストローク 十月革命の記憶』は、

十月革命後のロシアを舞台に、白軍の将校の刹那な恋とロマノフ朝の末期の世界を描いた映画です。

原作はノーベル文学賞作家イワン・ブーニンの短編小説『日射病』。監督はロシアの名匠、ニキータ・ミハルコフ。ロシア革命期の歴史をふまえて、その悲愴美あふれる世界を味わいたい1本です。

キャスト

・マルティンス・カリータ(将校)
革命勢力に敗れた白軍将校

・ヴィクトリヤ・ソロヴィオヴァ(美女)
将校とひと時の恋に落ちる美女

映画『サンストローク 十月革命の記憶』の見どころと感想

1920年、クリミア半島では戦いに敗れた白軍(反革命派)の将校たちが集められていました。地位も紋章も自由も奪われた将校たちは、不安のなか移送されるまでの時間を過ごします。その中の一人の将校は、かつての恋を思い出します。

1907年、革命前の穏やかな船旅で見かけた美しい女性。将校は半ば強引に連れ立って船を降り、ホテルで関係を結びます。名前も素性も知らない女性。しかし二人の恋はー。

評)悲しいほど美しいロシア革命敗者のストーリー

ストーリーは1920年の絶望と1907年の美しい恋物語を行きつ戻りつしながら進んでいきます。
主人公の将校がくりかえしつぶやく「なぜこんなことにー」にあらわれているとおり、ロシア革命によって運命が大きく暗転してしまった将校たち。これからどこに送られるのかわからないなか、ある者は将校の威厳が捨てられず、ある者は貴族出のインテリのまま、無為な時間を過ごしています。

で、主人公はかつての儚い恋を回想しているー、というわけです。

美女(たぶん人妻)との思い出には一人の少年が登場します。船から降り立った小さな町で将校の恋を手助けする少年。この少年が後にー、おっと、ネタバレはできません。

将校が美女とー、というホントなんてことのないストーリーなんですが、とにかく美しい。船から見えるロシアの雄大な自然、ホテルの窓ごしのヴォルガ川。ま、これらが美しいのは想像がつくでしょう。

が、驚くのは1920年(映画上の「現在」)のシーンです。灰色の景色の中、灰色の軍服で踊る若き将校。灰色の階段での集合写真。彼らと運命を共にする一匹の犬。これらがなんとも美しい。悲しいほどに美しいのです。

この映画をただの美しいシーンの鑑賞にしないためにも、ロシア革命期の歴史の理解は必須です。

十月革命とは、1917年社会主義左派勢力ボリシェヴィキ(レーニンが率いた左派)と労働者が帝政(ロマノフ王朝)を崩壊させるために引き起こした革命。以後内戦の後、ボリシェヴィキ主導のソビエトが誕生する。(この映画の主人公は帝政側(白軍)の将校)
史実では白軍の多くは死亡、または国外逃亡を図ったが、真冬の凍結したバイカル湖で命を落とした人も多いという。

そんな歴史をふまえつつ、ぜひお楽しみください。

補足:この映画は、邦題が『サンストローク ロマノフ王朝の滅亡』と表記されている場合があります。


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