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映画『エル ELLE』(2016年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:エル ELLE
原題:ELLE
製作年:2016年 フランス・ベルギー・ドイツ
監督:ポール・バーホーベン

映画『エル ELLE』は、

自宅に侵入してきたレイプ犯の正体をつきとめようとする女性を描くサスペンスです。

レイプ犯との情事に浸るインモラルなヒロイン、ミシェルにイザベル・ユペール。一切感情を語ることのないミシェルの隠された本性とはー。

キャスト

・イザベル・ユペール(ミシェル・ルブラン)
ゲーム会社の経営者

・ロラン・ラフィット(パトリック)
ミシェルの隣人

・シャルル・ベルラン(リシャール・カサマヨウ)
ミシェルの元夫 

・アンヌ・コンシニ(アンナ)
ミシェルの友人、共同経営者

・クリスチャン・ベルケル(ロベール)
アンナの夫

・ジョナ・ブロケ(ヴァンサン)
ミシェルの息子

・ジュディット・マール(イレーヌ・ルブラン)
ミシェルの母親

映画『エル ELLE』の見どころと感想

(C)2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINEMA – ENTRE CHIEN ET LOUP

ゲーム会社の経営者ミシェルは、ある日自宅でスキーマスクをかぶった男にレイプされます。そのことを友人アンナや元夫リシャールに淡々と告白するミシェル。過去のトラウマから警察に不信感を抱くミシェルは被害を届け出ることなく、自分でレイプ犯をつきとめようとします。

その頃社内にミシェルがレイプされているCG動画が拡散。何かと反発してくる社員キュルトを疑いますが、ほどなく犯人ではないことがわかり、動画を作った別の社員もレイプ犯ではありませんでした。

そして再びミシェルは自宅でレイプ犯に襲われます。格闘の末、スキーマスクをはぎ取ったミシェル。レイプ犯は隣人パトリックでした。

評)道徳やモラルをなんとも思わないミシェルにザワつかずにはいられない

パトリックでした、ってネタバレしとるやん、と思われるでしょうが、この映画はレイプ犯は誰かということはそれほど重要でもない、ということでご勘弁を。

なんといっても見どころはミシェルの複雑な人間性。これに尽きるわけです。

そんなミシェルさんの背景をもう少し説明しますと、現在は夫と別れ一人暮らし。猫を飼っています。ひとり息子ヴァンサンが、ほかの男との子どもを妊娠している女性と結婚しようとしていることが気にいらない。さらにこのヴァンサンが自分よりも友人アンナのことを母親のように慕っているのも気にいらない。別れた夫リシャールは、仕事(作家)はパッとしないのに若い女性と親しくしていることも気にいらない。母親イレーヌは美容整形を繰り返し若い男に入れあげていることも気にいらない。

そんな気にいらないことだらけのミシェルですが、もっとも気にいらないのは父のこと。ミシェルの父はかつて世間を震撼させた大量殺人犯で現在も服役中。ミシェルは父のことで世間から怒りをぶつけられてきたのです。

そんな屈折しまくったミシェルなので「レイプなんてたいしたことないわよ」ってな感じで、やがてレイプ犯とわかる隣人パトリックを誘惑しまくります。いやぁ、どの時点で「コイツかな?」って気づいたんですかね。

何を考えているのかよくわからないミシェルですが、それでも充分に面白い作品です。道徳やモラルにとらわれる凡人の心をザワザワさせてくれます。

ですが、この映画、ぜひ原作を読むことをおすすめしたい。

フィリップ・ジャンの小説『Oh…』(邦訳『エル ELLE』松永りえ訳、早川書房)は、映画で描かれなかったミシェルの思いが1人称で綴られています。

「そうか、そうだったのかミシェル、アンタって人は……」となること間違いなしです。

愛すべきインモラリスト、ミシェル。これを淡々と演じるイザベル・ユペールもあえて内面を描かなかったポール・バーホーベン監督もさすがとしか言いようがない。

映画『エル ELLE』、ぜひ原作と合わせてどうぞ。


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