最近読んだ本の感想「完全シミュレーション台湾侵攻戦争」
端的にいうと、かなり恐ろしい内容だ。
通常なら付箋紙をつけたり、メモをしながら読み進めるところ、切迫したシミュレーション内容に、それらをせずに読み終えてしまった。
■両国の主張
最初に両国の主張を確認しておこう。
中国は、台湾は中国の一部であるとする「一つの中国」が国是となっている。
一方台湾は、日本が敗戦により台湾を放棄した時点で台湾は独立を果たしている。したがって独立宣言は不要で、対等の立場で中国との関係を構築していく。
■日本の立場
外交関係のない日本では大使館に代わる機関として「台北駐日経済文化代表処」(港区白金台)を置き、台湾の名前は冠していない。
そして、政府首脳や専門家が「台湾有事は日本の有事」と発言している。
※こうした実はかなり重要な事案をマスコミはほとんど伝えようとしない。
※だが、2022年十数名の国会議員が集まり、完全非公開で図上演習を数回行っている。日本政府の危機管理対応を目的としたもので、筆者は企画・指導役として参加している。
■シミュレーション
地政学的に与那国島は台湾から約110km、尖閣諸島も約170kmの位置にある。
中国のミサイル攻撃、強襲揚陸艦を使った上陸作戦、補給路の確保。中国は、アメリカ軍が来る前に既成事実をつくろうとする。
こうしたとき、対応スピードが極めて重要となる。
シミュレーション結果は、本書をおよみいただくべきとおもうが、一時的に日本の領土も侵攻されることになる。
■自衛隊の行動に関する懸念点
一般的に軍隊は国際法的に行動するため、「ネガティブ・リスト(やってはならない行動)」で行動規範されているのに対し、自衛隊は警察と同じ国内法的な「ポジティブ・リスト(おこなっていい行動)」で行動規範されている。このため新たな行動をとる場合、都度根拠規定を作らなければならず、柔軟性に欠ける。
集団的自衛権の行使、存立危機事態等、事態認定を切り替えて行動していく場合、対応スピードが問題となる。
■Xデー(台湾侵攻)
アメリカのペロシ議長が台湾を訪問した際、中国は激しく反発し、台湾本土を取り囲むようにミサイル発射を含む大規模演習を行った。このように何かがトリガーとなって発動してしまう可能性もある。
アメリカが予測するXデーは、習近平総書記の3期目がおわり4期目にあたる2027年としているようだ。
あと3年しかない。経済での失敗等をおおいかくすためか、権力者は「一つの中国」を実現しようとするというシナリオだ。
それを実現するため、中国軍は、強襲揚陸艦を現在の3隻から12隻に増やそうとしている。
■侵攻の方法(対応方法)
今でも行われていることであるが、親中の政党を支援(世論操作)したり、サイバー攻撃を台湾のインフラなどに仕掛けるようだ。
そしてミサイル攻撃、強襲揚陸艦で上陸し、既成事実を作ろうとする。
なので、事態を拡大させないためアメリカ等は中国本土や台湾への攻撃をせず、その間の台湾海峡を移動している軍に攻撃するという作戦になる。
■牽制
でも、侵攻作戦を実行にうつさせないことがなにより大事。実行された場合、多くの犠牲が伴うからだ。
この本は、2023年4月に発行されているが、最近、アメリカ軍の演習においてB2爆撃機から安価な誘導爆弾「クイックシンク」によって強襲揚陸艦を撃沈する演習を行った。これは中国が強襲揚陸艦をつかっての台湾上陸に牽制をかけたということになる。
さらに、ステルス性能を高めたB21もあるようだ。これも中国を大きく牽制すると思われる。
本書にかかれたシミュレーション、政府内のシミュレーションのどれが現実のものとなるのか、わからないけれど、国民がパニックになるのがまずいとか言って危機をおおいかくすのではなく、現実に向き合い、対策をたてておくことが重要とおもわれる。ひとたび侵攻がはじまった場合、日本は必ず巻き込まれる。
特に台湾から近い与那国島などの民間人の避難訓練は行われていないが、実際に起きてからでは遅い。