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【動物園歌会ふたたび】短歌修行 いちにち一詠 #9

四十一日目


自由詠
フーコーの振り子 惑っているうちに紛れちゃうよほらいま、今だ行け うーたん

動物の説明を見ている父と動物を見ている子が並ぶ ぽめ

四十二日目



題「無花果」
秘すれば花 干し無花果と共に飲むビールがぬるい午後のまどろみ うーたん

題「風鈴」
風のない昼の神社に吊るされた風鈴の青まじまじと見る ぽめ

四十三日目



題「えて」
覚えてる?隣の庭のよく吠える大型犬がこわかったこと うーたん

題「さん」
金髪の店員さんが怒られている居酒屋で語られる愛 ぽめ

四十四日目



題「アイスコーヒー」
ブラックでアイスコーヒー頼むとき付くガムシロップのような好意 うーたん

題「団扇」
駅の絵の団扇と大恐竜展の団扇で扇がれている酢飯 ぽめ

四十五日目


題「偶」
名も知らぬ偶蹄類がパドックの隅で反芻している永遠 うーたん

題「グー」
守りたい何かが誰にでもあって手をグーにして眠る少年 ぽめ

四十六日目



題「行」
「行動しなさい自己啓発本を買いなさい」ってそれ一行で言う?本気で? うーたん

母さんは干し梅が好きだと知った家族旅行のサービスエリア ぽめ

四十七日目



題「赤」
赤べこも横に首振るはずだってイエスひとつもただじゃないって うーたん

題「ている」
人と人が上手に支え合っているゴシック体の「人」だと思う ぽめ

四十八日目


題「蛍」
かなぶんが果てて転がるのを照らす蛍光灯の消えないオフィス うーたん

題「浴衣」
さっきから浴衣の人をやたら見てだけど祭りは見つからなくて ぽめ

四十九日目



題「蝉」
過去は過去と飛び出たはずの母屋にて拾う砕けた蝉の抜け殻 うーたん

題「欠伸」
閉園を告げる音楽聞き流す大きなカバの大きなあくび ぽめ

五十日目



題「墓」
飼い殺め弔う意図も埋めた夏 おたまじゃくしの名もない墳墓 うーたん 

題「空」
病室の窓の小さな空ならば埋められそうな打ち上げ花火 ぽめ


五十日、百首で夏の「短歌稽古」は一時休止となりました。再開はまた追って。