【怪談屋01】心霊アプリ
※音声配信など、朗読に限り使用自由です。
魂は上りて神となり、魄は下りて鬼となる。
そして、百の物語が紡がれし夜、何かが起こる。
私の体験を記したものや、知り合いになった人から聞いたこと、あるいは創作など。
心霊アプリ、というのがある。
Aさんのいとこの仲間内で、一時期「心霊アプリ」なるものが流行っていたらしい。
アプリを起動すると、レーダーのようなものが画面に映り、心霊が近くにいると赤い点となって表れるという代物だ。アプリ自体はジョークアプリなのだろう。確かに時折近くを赤い点が通るものの、いとこ自身、それを本気にはしていなかった。けれども、それと認めては詰まらないので、時折アプリを起動しては赤い点が動くのを見て、そこにいるらしき「何か」の姿を想像しては仲間内で騒いでいた。
いとこはあるとき、通っている中学の同級生と、最近首吊りがあったという近くの公園まで行って、心霊アプリで見てみよう、という話になった。
怖いもの見たさもあり、二人で出掛けることにした。
公園について、いとこはすぐに心霊アプリを起動した。
心霊アプリは、点滅する赤い点を示した。
「いるよ、いるいる」
二人は赤い点が示したあたりに向かって歩みを進めた。そして、一本の大きな木に辿り着いた。その根元には、いくつもの花束や缶ビールが供えてある。異様な光景に、冗談半分で来てしまったことを、いとこは少し後悔した。
アプリの画面を見ていた同級生が、うわ、と声をあげた。いとこが画面に眼をやると、レーダーに映る赤い点が、左右に動いていることに気付いた。
まるで、振り子が揺れるように、規則的に動いている。
それを見て、彼らは慌てて逃げ帰った。
以来、心霊アプリを使って遊ぶことはやめたという。
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