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BYAKUがミシュランキー(ホテル部門)一つ星を獲得

NOSIGNER代表の太刀川英輔です。

長野県塩尻市の山の中、奈良井宿にあるオーベルジュBYAKUが、7月4日に新設されたミシュランキー(ホテル部門)の一つ星に選ばれました。

BYAKUはその名前の通り、地域の百の体験を提供することを掲げる宿です。
宿だけで体験を閉じずに、地域との積極的な関わりによって豊かな体験を提供しています。

奈良井宿の人たちとともに抽出した地域の100の体験を1枚ずつカードにした「百札」

旧知の仲間たちの夢が詰まったプロジェクトで、名前やコンセプト、ブランディングを、クリエイティブディレクターとして一緒に進めてきました。運営会社の社外役員としても関わっています。

この受賞は、デザインよりも場の力が何より大きい。
それぐらい奈良井宿は、誰もが一生で一度は行ったほうがいい、日本の奇跡のような場所です。

本館「歳吉屋」外観

BYAKUは、文化財級の200年以上の酒蔵だった空き家をオーベルジュに改修した宿です。

美しい日本のイメージは、明治期くらいまでに建設された築100年以上の伝統建築に代表されます。しかし日本の古建築は、驚くべきことにこの5年間で約20%も取り壊されている。

時間はお金では買えませんし、いま日本の風景を守らなければ、二度と作ることはできません。

奈良井宿の町並み

このプロジェクトには、運命的なご縁が重なっています。
突然、仲間である鈴木賢治くんや宮地達矢くんら仲間が「未経験だけど宿を始める」と言われて山の中に呼び出され、一緒にコンセプトを考える旅からこの構想が始まりました。

本館の設計は隈研吾研究室の後輩の吉本晃一朗くんが、オーナーの竹中工務店さまの設計担当で驚きました。
吉本くんらによる設計の本館はBELCA賞など様々な賞に輝いています。
さらに、それぞれの館には佐野文彦さんや山道拓人さんら素晴らしい建築家の皆さんに関わっていただきました。

本館「歳吉屋」中庭

オープン当時、塩尻市役所には進化思考を学ぶ「進化の学校」を一緒に設立した大切な仲間である山田 崇くんが公務員として務めていました。
彼が日本一おかしな公務員として過ごした最後の1ページに、このプロジェクトをご一緒できたのも深いご縁を感じます。

コロナの逆境の中でオープンして、さらには水害も経験してどうなることかと思いましたが、泊まりに来てくれた友人の皆様、本当にありがとうございます。
引き続きご贔屓のほどよろしくお願いします。

オープンして3年が経ちますが、近隣でのクラフトトラベルを実現しようとか、食の体験ツアーを作ろうとか、地域とつながる体験を提供する会議が日々続いています。

またBYAKUでは第2、第3の出店候補となる街を探しています。
世界に伝えたい美しい景色や古い建築物を持っている街は、ぜひお声掛けください。

まだまだ宿として進化する奈良井宿のBYAKUに、ぜひ一度皆さんも泊まってみてください。

NOSIGNER & BYAKU

We were responsible for the branding of "BYAKU," an inn creating new stories out of a renovated space in Narai-juku, a historic area of cultural architecture in Nagano Prefecture.

Narai-juku is the longest surviving post town in Japan dating to the Edo period (1603-1868). We were responsible for the branding of an inn that is situated in a renovated space occupying an important cultural property dating to about 200 years ago. The character 宿 (inn) in Japanese contains the radicals 百 (100) and 人 (person), so we expanded this to the idea of having "untold hundreds" of people connecting with the region, and of having the architecture persist for "hundreds of years" to come. That commitment to the future is embedded in the name BYAKU. Moreover, out of the idea that there are hundreds of unique stories to be felt and experienced when lodging here, we imbued not only the facility with that aesthetic, but also created a set of cards that can be taken home with you as a talisman safeguarding those one hundred tales. The design of the logo, signage and other aspects of the facilities is consistent with this idea of "100 stories." It is our hope that the one hundred experiences offered by BYAKU will bring vitality to the region and create a beautiful landscape for the future.

長野・奈良井宿の200年前から続く文化財建築をリノベーションした、新たな物語を生み出す宿泊施設『BYAKU』をブランディングしました。

江戸期の宿場町が日本で最も長い距離にわたって現存する奈良井宿。そこにある約200年前の重要文化財建築をリノベーションした宿泊施設のブランディングを手がけました。「宿」という漢字に含まれる、「百」「人」という文字に着目し、地域とつながる人たちを何百(BYAKU)人にも広げ、建物を何百(BYAKU)年も残す宿のあり方を探求したいという想いを込め、この施設をBYAKUと命名しました。地域に宿る「百」の物語をコミュニケーションの軸に据え、施設内に留まらず奈良井宿で体験した百の物語をカードとして持ち帰れる「百札」を制作。ロゴやサインなど様々な施設デザインにも、徹底して「百の物語」を中心に据えて設計しています。BYAKUの提供する百の体験が地域に活気をもたらし、美しい景観が遺されていく未来を願っています。

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