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イズラエル・フォラウ選手が日本にやってくるという事で

イズラエル・フォラウがやってくる

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サンウルブズ×ワラターズ戦でのイズラエル・フォラウ選手
(2016.7.2秩父宮ラグビー場)

シャイニングアークスから新加入選手・スタッフの発表がありました。

名前を見ていくとグリーンロケッツ退団で気になっていたサムの名前、日本代表のムーア、チームがなくなってどうなるのか気になっていたコーラのメンバー、そしてオテレ・ブラック!

これは楽しみと見ていくと、一番下にフォラウの名前があるじゃないですか。ポジション順の記載とは言え、最後にフォラウがくるとインパクトが強すぎます。

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キヤノンブレディスローカップ2018でのイズラエル・フォラウ選手
(2018.10.27日産スタジアム)

同性愛差別発言で契約解除

イズラエル・フォラウ選手は私も好きですし、素晴らしい選手である事は世界中が見ても間違いないのですが、以前こんな事がありました。

敬虔なクリスチャンとして知られるフォラウだが、極端な宗教的見解を公に発信して大きな騒動となった。
 フォラウは4月10日、インスタグラムに「酔っぱらい、同性愛者、姦淫者、嘘つき、詐欺師、泥棒、無神論者および偶像崇拝者――君らには地獄が待っている。悔い改めよ! 神のみが救う」と投稿し、物議を醸した。過激な発信は今回が初めてではなく、昨年もインスタなどで同性愛者を中傷するような投稿をし、警告を受けて発言を控えていたのだが、再び騒動を起こすことになり、オーストラリアラグビー協会は「容認できない。重大な規定違反」とし、15日に契約解除の通告に関する会見をおこなっていた。

その後2020年にフランスのチームと1年契約をしています。

敬虔なクリスチャンであるため許せないと感じる事があるかもしれませんが、それを自分の外に言動で出してしまうというのはまた別で、詐欺師や泥棒という言葉と同性愛者をまとめて書き、地獄に落ちるという投稿をしてしまうのはやはり許されるものではありません。

フォラウが加入するシャイニングアークスの取り組み「SDGs」

シャイニングアークスは創部当初からチーム使命の一つとして様々な社会貢献活動に取り組んでまいりました。
2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標〈2030年までに達成を目指し掲げられた世界共通の17項目〉)」にラグビーチームとして初めて本格的に取り組むことを決めました。
シャイニングアークスだからこそできる活動を推進し、チームの「勝ち(Victory)」だけではなく、社会におけるスポーツ、ラグビー、そしてシャイニングアークスのさらなる「価値(Value)」の向上に取り組みます。

SDGsに取り組むシャイニングアークスが推進するのは下の画像の項目ですが

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SDGsの中には「5 ジェンダー平等を実現しよう」「16 平和と公正をすべての人に」というものもあります。自分たちが推進する項目にないからと言って、見過ごすというわけにはいかないはずです。

「ジェンダー平等」は社会的な性の区別についての話であって「LGBT」の事ではないと思われる方もいるかもしれません。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」ではターゲットの中にも「女性」という言葉が多いので、女性差別のことを行っているのかな?と思った人もいるかも知れません。

でも、世界が抱えているジェンダー課題は決して「女性」であるとか「男性」であるといった身体的な性別に関するものだけではありません。

差別に関してはSDGsの16もあるのですが、こちらもアークスの推進項目にはありませんが、部長が女性なのでジェンダーに関してはしっかりとした意識を持っているチームであるという認識です。

こんな感じでとても慕われています。

オーストラリアとの契約解除があった話は当然知っているでしょうから、アークスに入る際に今後差別的な言動があった場合について何かしらの話があったと思います。

これは同性愛差別発言というだけではありません。選手の様々な発言、特に最近はSNSへの不適切な投稿などは一気に拡散します。それはチーム全体、スポーツ全体へのイメージダウンに繋がるため、その言動についてはかなり厳しく言われていると思います。

再び差別的な事を言うとは思いませんが、入団発表で名前が出ただけでラグビー選手やファンが色めき立つほど有名な選手です。注目を浴びるのはぜひ試合での華麗なプレイのみであってほしいです。

日本ラグビーフットボール協会のLGBTに関する動き

日本ラグビー協会はLGBTへの差別や偏見をなくしていく動きをしています。

日本ラグビーフットボール協会行動指針
財団法人 日本ラグビーフットボール協会(以下、「本協会」という。)の役員、職員および選手や関係者は、本協会が掲げているビジョンのもと、社会的責任の重さを自覚し、「法令等の遵守(コンプライアンス)」と「高い倫理観に基づく行動」を基本におき、良識ある公正な行動により社会からの信頼を確保し、スポーツ振興に貢献するにあたり、行動規範をより具体的に実践するため本協会「役員・職員行動指針」「日本代表選手・スタッフ行動指針」および「選手・スタッフ行動指針」を以下に定めます。

その中に「私たちは、一人ひとりの人権とお互いの個性を尊重し、不当な差別・ハラスメントを排除し、それぞれの意欲・能力を最大限に発揮します。」
という文言があります。

また、日本ラグビーフットボール協会のインテグリティ推進部アンチ・ドーピング委員会の「2020安全・インテグリティ推進講習会 インテグリティへの取り組みのお願い」には

「インテグリティを追求するうえで問題となる行動」として以下の項目が掲げられています。

① ドーピング、パラ・ドーピング
② 違法薬物(大麻等違法薬物)
③ 違法賭博(違法カジノ等)
④ 反社会的勢力との関わり
⑤ ハラスメント(パワハラ、セクハラ、アルハラ、モラハラ等)
⑥ 差別(人種差別、性差別等)
⑦ 試合結果の不正操作
⑧ SNSの不用意/不適切な利用
⑨ 不適切な経理処理
⑩ 私的な利益追求 (横領等)
⑪ 交通違反
⑫ 性犯罪
⑬ その他の各種法令違反
⑭ ラグビーの価値を下げるすべての行動

また、2019年のラグビーW杯が日本で盛り上がっている中、こんな素晴らしい事が行われいました。

都内でICCのオープニング・プログラムとして「International Inclusive Brunch - VIP Launch Event in partnership with Brand South Africa」が行われ、日本ラグビーフットボール協会と国際ゲイラグビー団体「International Gay Rugby(IGR)」は、これから日本でLGBTへの差別や偏見をなくしていくための取組みを行っていくという歴史的なMOU(了解覚書)を交わしました。

日本スポーツ協会の啓発活動

日本スポーツ協会は、LGBT、SOGI等のセクシャル・マイノリティの当事者やスポーツ指導者が抱える困難さや課題の実態把握を進めるための調査研究を行うとともに、体育・スポーツにおける「多様な性のあり方」に関する啓発活動を行っています。

ホモフォビアを許さない姿勢を指導者やチームメイトが明確にすることも、当事者の参加には重要です。性別を問わず、「性的指向」を理由にスポーツの場から排除されることがないようにすべきですが、特にゲイ男性の場合は排除されがちなだけでなく、攻撃の対象になるケースもあり、よりリスクが高いとされています。したがって、当事者が安心してスポーツを行うためには、周囲がフォビアを許さない姿勢を示す必要があるといえます。

公益財団法人 日本スポーツ協会「体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン 性的指向・性自認(SOGI)に関する理解を深めるために」
21ページ 指導者やチームメイトができること①~参加しやすい環境をつくろう~

リーチマイケル選手のインタビュー

ちょうどイズラエル・フォラウ選手がオーストラリア協会の契約解除になった際、リーチマイケル選手がこのようにインタビューで答えています。

「日本語で何て言うかわからないですけど、セクシャリティに関して発言をする必要はないと。バイセクシャルでも、ゲイセクシャルでも、人に謝る必要はない。それらを『だめ』と言うのは、よくないんじゃないかと思います」

このインタビューがちょうどアークス浦安パークだったというのも何かを感じます。

ラグビー憲章では

「人種、性別、言語、宗教、政治その他の理由で国、個人、またはグループなどへのいかなる差別を阻止する」〜 ワールドラグビー 定款 第3条
「加盟協会、アソシエーション、ラグビー団体、ラグビークラブまた個人は、宗教、人種、性別、性的指向、肌の色や民族性に関わらず誰に対しても威圧的な、攻撃的、侮辱的、屈辱的、また差別的な行動を取らない」 〜ワールドラグビー 競技に関する規則 第20条

ラグビージャーナリスト・村上晃一さんが読売新聞のラグビーW杯2019のサイトで、ラグビー憲章と著書「ラグビーが教えてくれること」について話しています。

村上さんは、ラグビー憲章を知り、内容を理解し、実践できる子どもを増やせたら、「相手を尊重しない差別的な言動をなくして、だれも取り残さない社会の実現に役立てるのではないか」と思いを込めた。

まず言えるのは人種や国籍、性的指向など、どんな理由であれ差別や偏見は許されるものではないという事をラグビーに関する所から改めて書いてみました。

好きな選手だから改めて思う事

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サンウルブズ×ワラターズ戦でのイズラエル・フォラウ選手
(2019.2.23秩父宮ラグビー場)

全ての動きが華麗で力強い選手が15人制に戻って来る、しかも日本のチームに。楽しみでありながらまだ現在の彼の様子が見えないので何とも言えませんが、

違いを認め合ってひとつになるのが本物のチームであるなら、違いを認めぬ違いは、それが個性だとしても、チームにはそぐわない。さらば。楕円球の申し子よ。
藤島大『ラグビー 男たちの肖像』

楕円球の申し子は、日本の新リーグでどのようなプレイを見せてくれるのか、そして言動を含めて注目されるのは間違いありません。

どうか再び「さらば」とならないように。

女性理事の問題もあるので、日本ラグビー協会はフォラウだけでなく、いま一度差別やSDGsについて考えてみてはいかがでしょうか。

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